日経クロステック Special

通信インフラの品質を守り続けるプライド アルチザネットワークスのベンチャースピリッツ 通信インフラの品質を守り続けるプライド アルチザネットワークスのベンチャースピリッツ

日本で約3kgとカバンのようなサイズの携帯電話が登場したのは1987年。
それから35年、今や携帯電話は手のひらサイズのスマートフォンへと
進化し、誰もが使う社会インフラの1つとなっている。こうしたモバ
イル端末の爆発的な普及を陰で支え続けたのがアルチザネットワー
クスだ。通信キャリアや通信機器メーカーがサービスや製品を開
発するうえで必須となる通信計測器を日本国内で長年にわたっ
て提供し、通信インフラの迅速な開発・導入・保守・運用を
側面から支援してきた企業である。まさに「次世代通信イ
ンフラを実現するエキスパート集団」として、日本の高
い通信品質を実現してきた縁の下の力持ちと言える。

日本の通信に合わせたテスト機器を長年にわたり開発

1990年12月に産声をあげたアルチザネットワークスは、日本の通信業界と30年以上にわたり軌を一にして成長してきた。創業当時、主に海外のメーカーが供給していた専用の通信計測器は非常に高価なものだった。創業者で現会長の床次隆志氏は、汎用パソコンの拡張スロットに挿入する形状であればもっと安価に計測機能を提供できるのではないかと思いつき、そのアイディアが受け入れられるかを世に問うために会社を設立した。その後も創業時の魂を忘れることなく、常に斬新な発想で最先端技術に挑戦を続けるアルチザネットワークスは、ユニークな研究開発とタイムリーな製品・サービスの提供で顧客ニーズに応えてきた歴史を持つ企業である。

なかでも大きな転機となったのが、無線通信技術への参入だ。「創業時は無線ではなく、有線通信の計測器とテスト環境を提供していました。携帯電話の無線通信向けテスト機器開発には、通信キャリアが3Gサービスを提供開始するタイミングの約20年前に参入しました」と、同社の執行役員モバイルプロダクト事業本部本部長の永井英樹氏はその歩みを語る。

無線通信計測器の開発は、同社にとって文字通り「無謀な挑戦」だったと言う。「有線の技術とはまったくベースが異なりますから、まさにゼロからのスタートで、しかも格段に難易度が高まります。それでも敢えて、無線向けのテスト機器や環境を求める顧客からの声に応えようと、チャレンジを決めました。それから技術を習得していって、無線基地局のテスト製品を開発しました。3G、4G/LTE、そして現在は5Gに取り組んでいます」と永井氏は話す。全く新しい技術に戸惑いながら、試行錯誤を繰り返す日々が続く中、社員1人ひとりのベンチャースピリッツが無線通信計測器の開発を推し進めた。

株式会社アルチザネットワークス執行役員

モバイルプロダクト事業本部 本部長

永井 英樹

当時、無線通信をテストする機器やサービスを提供する国内企業はほとんどなく、海外企業に頼らざるを得ない状況だった。その一方、日本のユーザーが求める通信品質への要求は海外よりもはるかに高い。そのため、国内の通信事情に合わせたテスト機器やサービスが日本の通信キャリアには必要だった。高い通信品質を保つため、国内メーカーによる無線通信の計測器開発を求める声が大きくなり、有線のテスト技術で実績を積み重ねてきたアルチザネットワークスへの期待が高まっていたのは当然とも言える。

「無謬」を作る仕事の面白さと責任、6G時代へ向け体制を強化

アルチザネットワークスが提供する計測器は、規定の通信手順どおりにデータのやりとりが行われているかを高負荷な状況で検証するための「シミュレータ」と呼ばれる製品だ。ITの進化によって、常に新しい技術が新しいサービスを生み出している。そのサービスの多くは今や無線通信を介して提供されている。サービスを円滑に運用するには「より速く、より大容量に」を実現する新たな通信技術が必要となる。それが次世代通信と期待を込めて呼ばれ、新しいプロトコルが規定されていく。その世代更新のたびに必要不可欠となるのが同社の製品だ。

通信事業者はより付加価値の高い新しい通信サービスを競合他社に先駆けて提供するために、次世代の通信インフラを敷設する設備投資を繰り返している。アルチザネットワークスの通信計測器は、こうしたサービスやインフラが期待通りに動作するか、予想される最大限の負荷に耐えられるか、事前にテストするために必須となる存在だ。

通信計測器を作るというのは、ある意味、一片の誤りもない「無謬(むびゅう)」を約束するような大それた仕事なのかもしれない。「テストをクリアできなければ、基地局や通信端末などの導入を見送るケースもあります。通信インフラは、社会や暮らしを支える重要なインフラです。私たちは、その品質を守っているという誇りと自負があります」と開発統括本部第1ハードウエア開発部部長の山田充氏は熱く語る。

「通信事業は、だいたい10年に1回の周期で大きな変革を迎えます。私たちが参入した2000年前後の3Gから10年で4G/LTEへ変革しました。さらに10年たって今は5Gと通信規格が変わっています」。

株式会社アルチザネットワークス 開発統括本部

第1ハードウエア開発部 部長

山田 充

5Gはこれから本格的な普及期を迎えることになり、自動運転やメタバース、デジタルツインといった新しい技術やシステムが登場することで、モバイル通信で接続する機器が格段に増加する。「これまでは、基地局との接続はスマートフォンなどの携帯電話を想定していましたが、今後はあらゆる機器がつながることを想定してテストしていく必要があります」と山田氏は強調した。

例えば、スマートフォンと自動車では、搭載できるアンテナも大きく違い、通信性能も変わってくる。こういった新たに登場する技術やシステムに、通信テストという側面から係わることができるのが、アルチザネットワークスの仕事の面白さだ。「製品の設計から開発までを直に感じることができ、試験機メーカーとして、プラットフォームを限定せずに新しいことに挑戦し続けることができます」と永井氏は魅力を話す。

「今後はBeyond 5G・6Gと通信規格はますます進化していきます。例えば基地局は固定されていて動かさずに運用するのが現在は大前提となっていますが、Beyond 5G・6Gでは衛星波や、航空機型のHAPS(成層圏プラットフォーム)など、基地局自体が移動することも想定されます。そういった最新技術にも、これからの開発者は積極的に取り組んでいけます」と永井氏は力説する。

来る6G時代は試験方法の見直しに迫られ、ハードウエアを新規に開発する必要もある。そのため、アルチザネットワークスは6G時代の準備に向けた体制強化に着手。新たな製品開発を実現できる人材を求めている。

アルチザネットワークスの社員に求められるのは、品質へのプライドだ。そして、新しい技術にチャレンジするバイタリティも重要となる。それらは、創業時から脈々と受け継がれるベンチャースピリッツにつながっている。

最大級の端末密集を唯一シミュレートする製品で業界をリード

ここからは、読者にアルチザネットワークスという無線通信技術の会社での仕事に興味を持ってもらうために、もう少し深くその背景を語ってもらおう。現在、取り組んでいる5Gについて、「これまでとの大きな違いは、オープン化という点です。5Gは国際標準化がキーワードとなります。4G/LTEは基地局とアンテナユニットなどの機器を、すべて1つのメーカーから調達するのが当たり前でした。一方5Gはマルチベンダーが基本で、無線ユニットと基地局側とネットワーク側とがクロスベンダーでつながるようになっています。さらに基地局の仮想化といった技術も取り入れられています」と山田氏は指摘する。

1つのベンダーで統一されたシステムより、様々なベンダーを組み合わせたシステムの方が、テストのための環境がより複雑になることは容易に想像がつく。事実、5Gの時代を迎えたことで、テスト環境を構築することはさらに高いハードルになっている。

5Gでマルチベンダーが当たり前になるにつれ、キャリアの基地局で使っている通信機器やアンテナでは海外のベンダーが開発した製品のシェアが増えている。そのため、ライバルである海外の通信テスト機器メーカーが参入しやすい状況だが、日本は1つの基地局において求められる同時接続可能端末数は世界でも最大級。より多くの端末をシミュレートして、基地局を評価することが必要になる。唯一そのようなテスト環境を提供できたのが、アルチザネットワークスの製品とサービスであり、それが同社の大きな強みだ。

負荷試験装置「DuoSIM-5G」 負荷試験装置「DuoSIM-5G」

現在、5G基地局に負荷をかけるストレステストを提供している負荷試験装置「DuoSIM-5G」は、妥協を許さない高スペックを徹底的に追及した製品で、通信キャリアやベンダーから高い信頼を得ている。

海外とローカル5Gで新たな市場にチャレンジ

5Gのマルチベンダー化は、アルチザネットワークスにとってチャンスでもある。海外のベンダーにも対応することで、アルチザネットワークスのテスト機器やシステムの有用性を海外のキャリアへアピールできるからだ。

しかし、日本と海外では通信品質への考え方に大きな違いがある。「海外キャリアなどの要望にも応えつつ、使いやすさや機能の向上といった点を競争力として、海外事業本部を中心に海外展開も積極的に進めていきたい」と永井氏は今後の展望を示す。

5Gでは技術的なハードルが上がる一方だが、しかし、その市場展望は明るい。「例えば工場や大学キャンパスといった特定のエリアだけで専用の5G通信を使えるようにするローカル5Gですね。既に大手自動車メーカーなどから受注をいただいています。ローカル5Gを導入する企業は、通信キャリアのように通信技術について高い知見やスキルがあるわけでは必ずしもありません。そのギャップを埋めるために、私たちの知識と技術が大きく役立つと考えています」と永井氏は自信を覗かせる。

進化を止めないアルチザネットワークスは、5Gに対応した基地局などの機器のテストを行う拠点として、岩手県滝沢市に滝沢テレコムテストセンター(T3C)を竣工。2030 年に向けて、さらに高度化が進むローカル5Gなどの「5G evolution」および「6G」に対応した機器についての相互接続試験の提供も予定している。

岩手県滝沢市に滝沢テレコムテストセンター(T3C) 滝沢テレコムテストセンター(T3C)

一時的につながらないだけでニュースとなることがあるように、日本のモバイル通信品質は海外と比較して数段高いレベルにある。この高品質を維持する一助となっているのが、アルチザネットワークスが提供してきた通信テスト機器やサービスであることは疑いようがない。さらにBeyond 5G・6Gと、今後も世界トップクラスの通信品質を日本が維持するためにも、アルチザネットワークスとその社員の取り組みがいっそう注目を集めるだろう。

株式会社アルチザネットワークス

東京都立川市曙町2丁目36番2号ファーレ立川センタースクエア

Tel.042-529-3494