SoC(System-on-a-Chip)の世界的サプライヤーであるソシオネクスト(Socionext Inc.)は、事業を支えるERPシステムのインフラを刷新した。物理サーバー中心のインフラを脱却し、仮想環境ベースのプライベートクラウドを実現する大規模プロジェクトである。これにより、インフラの信頼・安定性が向上し、煩雑だった運用管理も大幅に効率化された。従来環境での運用に比べ、TCOは20%削減でき、パフォーマンスも40%向上したという。機器納入からわずか半年足らずでシステム稼働を実現した本プロジェクトの成功ポイントはどこにあったのか。プロジェクトの中心メンバーに話を聞いた。

豊富な実績と先端技術で
「差別化」に貢献するSoC提供

ITおよびデジタル技術の進展により、コンピュータや通信ネットワーク機器、各種組込みシステムの高機能・多機能化が進んでいる。それとともに、これらの“頭脳”ともいえる「SoC(System-on-a-Chip)」のニーズが高まっている。SoCとは、1個のチップ上にプロセッサコアのほか、多様な応用機能を搭載して1つのシステムとして機能する大規模集積回路(LSI)のことだ。

株式会社ソシオネクスト
IT統括部 企画部 部長
小林 拓也氏

その設計・開発および販売を事業とするグローバル企業がソシオネクストだ。国内には新横浜本社のほか、京都、高蔵寺(愛知県)、溝の口(川崎市)、仙台に支社を構え、海外にはアメリカ、ヨーロッパ、アジアに設計・販売の拠点を展開。売り上げの約6割が海外を占める、日本を代表するグローバルSoCサプライヤーである。

同社のビジネスの中心は、革新的な製品やサービスの開発を目指す企業の「SoC部門」として、顧客が自社の差別化の実現に必要となる独自SoCを開発・提供することだ。同社の強みは大きく2つある。1つは「System to SoC」だ。LSI搭載装置のシステム設計フェーズから課題抽出・解決まで行い、最適なSoCアーキテクチャを開発・提案する。もう1つが「トータルソリューション」である。こちらは、低消費電力、高速・高性能化、短いターンアラウンドタイムで高集積化を実現する設計力と、差異化を実現するためのIP、また製造委託先との密接な連携による品質管理から安定供給までをカバーする。

「これまで培ってきた先端テクノロジー、システム/ソリューションの豊富な設計・構築実績を生かし、お客様の製品価値を高める提案型SoC製品とサービスを提供しています。『世界のお客様に信頼されるSoC部門』として、長期視点による経営を実践しているのも当社の特長です」とソシオネクストの小林 拓也氏は述べる。

ERPインフラのエンド・ツー・エンドで
サポートパフォーマンスが低下し運用工数も増大

こうした事業成長に伴って課題も顕在化していた。事業を下支えするERPシステムがそれだ。ERPシステムは「Oracle E-Business Suite」(以下、Oracle EBS)をベースに、2017年1月に構築したもの。機能面で大きな不満はなかったものの、事業が成長するに伴いデータ量が増大し、データベースのディスクI/O処理のパフォーマンス低下が顕在化していたという。「トランザクションが集中する月末や月初は、処理が遅延することがありました」と石河 淳氏は振り返る。

株式会社ITマネジメントパートナーズ
ソシオネクスト事業部
インフラサービス部 第二IT課 課長
石河 淳氏

運用管理にも問題を抱えていた。インフラ基盤は物理サーバーで構成していたため、周辺システムのサーバーも含めると、その台数は約50台にのぼる。「IT人材が限られる中、サーバーの管理や保守に多くの人手と時間を取られ、その工数も増大していました」とITマネジメントパートナーズの石河氏は述べる。同社はソシオネクストのIT環境の構築・運用をサポートする企業だ。

災害や大規模障害に備えるBCP対策にも懸念があった。データセンターは東日本をメインサイト、西日本をバックアップサイトとする2拠点体制で運用していたが、遠隔バックアップのデータを即座にリストアできる仕組みにはなっていなかったという。このままでは有事の際には事業継続が困難になってしまうリスクもある。「ERPシステムは会計、生産、販売、物流といった幅広い業務を支える中核システムです。ビジネスを止めない、お客様からの高い信頼と可用性の確保が急務の課題だったのです」と小林氏は語る。

製品ポートフォリオと
信頼・安定性、使いやすさを評価

課題解決に向け、ソシオネクストが目指したのは、仮想化技術の活用によるプライベートクラウドの実現だ。「サーバーを仮想化すれば、物理サーバー台数が削減され、運用を効率化できます。必要に応じて、仮想サーバーの追加やリソースの増強も柔軟に行えます」と石河氏は話す。ERPや周辺システムのデータを統合するデータレイクを構築し、データドリブン経営の実現を目指していたことも理由の1つだ。

システム構築のパートナーには、ITソリューションプロバイダーのコスモを選定した。ITインフラの設計・構築・導入・運用保守までカバーする技術サービスを提供し、なおかつ25年以上に渡り半導体設計インフラの構築・導入を数多く手掛け、仮想化技術のOracle Linux KVMを含めた知見やノウハウが豊富であることを評価したという。

そのコスモからERPインフラ候補の1つとして提案されたのが、デル・テクノロジーズ製品である。「当社の求める要件を満たし、コストパフォーマンスにも優れている。別の業務でデル・テクノロジーズ製品は導入済みで、製品の信頼・安定性の高さは実感していました。ストレージの管理画面などもGUIで分かりやすく、使いやすい」と石河氏は評価する。

インフラの選定にあたっては、複数ベンダーの製品を比較した。「デル・テクノロジーズはこちらの要求を汲み取って、最適なインフラとその構成を提案してくれました。定例の打ち合わせも他社の倍以上の頻度で行うなど、その熱意も決め手になりました」と石河氏は続ける。

東西データセンターで
可用性を確保しBCP対策を強化

インフラ刷新プロジェクトはコスモのサポートのもとスタートし、機器納入は2021年4月から始まった。

サーバーインフラにはインテル® Xeon® スケーラブル・プロセッサーを搭載した「PowerEdge」を採用。ストレージはすべてオールフラッシュ製品で構成した。ストレージのディスク接続はFC(ファイバーチャネル)で行う形だ。順次移行を行い、プロジェクトは2021年9月にカットオーバーした。

刷新したインフラは技術系、Oracle EBS系による二重化構成になっている。データセンターは東日本サイトを本番環境、西日本サイトを検証環境とする東西2拠点体制で運用する。サーバー台数は東西サイトの物理/仮想を含めて計313台ある。新たに構築したプライベートクラウドの全体構成環境は図の通りである。

東日本のサイトに本番環境を構築。同様の構成インフラを西日本サイトにも構築し、本番環境のデータをレプリケーションする。西日本サイトは通常は開発・検証環境として利用するが、災害・障害発生時は本番環境を立ち上げ、事業を継続する

検証段階では西日本サイトへの切り替えと、検証系Oracle EBSの立ち上げに成功し、本番環境と同等の性能を確認した。「有事の際にも即座に事業を復旧・継続できる。BCP対策が大幅に強化されました」(石河氏)。

製品の信頼性・安定性の高さも実感している。稼働開始後、サーバー、ストレージともに重大な故障は一切発生していないという。プロジェクトは機器納入から、本番稼働までわずか6カ月足らず。デル・テクノロジーズ製品についてのノウハウも豊富なコスモの支援もあり、ソシオネクストでは、システムを止めずに段階的にスムーズな移行を実現した。「この規模のインフラリプレースをこれだけの短期間で実現できたことに、当社だけでなく他社のIT担当者も驚いています。コスモとデル・テクノロジーズの機敏な対応とサポートには大変感謝しています」と小林氏は述べる。

TCOを20%削減しつつ、
パフォーマンスは40%向上

インフラの刷新により、大きな課題だった運用管理も効率化できた。仮想環境にしたことで、約50台あった物理サーバーを18台に削減できたからだ。使用ラック数も10ラックから4ラックに集約された。

監視ツールを活用することで、サーバーの統合管理も可能になった。「以前はサーバー単位でアラートを監視・分析しなければならなかったが、今は管理画面上ですべてのサーバーの状態を一元的に把握し、アラートにも迅速に対応できます」(石河氏)。AIを活用したクラウドベースの監視システム「CloudIQ」により、ストレージも統合管理できる。

しかも、デル・テクノロジーズのサーバーやストレージは、OSやファームウェアのバージョンアップをリモートで、かつ無償で行える。「遠隔の西日本サイトのインフラを、現地に行かずに管理・保守できるメリットは大きい。他社では有償となるファームウェアのバージョンアップにも無償で対応してくれるのも良い」と石河氏は評価する。

GUIベースのツールを活用することで、半日かかっていたディスク作成も30分で済むようになった。検証機の作成も以前は4日程度かかっていたが、今は仮想マシンのクローニング機能を活用しオールフラッシュにしたこともあり、2日で作成できるという。

ストレージの重複排除機能により、ディスクの利用効率も大幅に向上した。クローニングで本番機のデータを4台の検証機に複製しても、重複排除によってディスク使用量はほとんど変わらないという。「容量設計はデル・テクノロジーズに依頼し、30テラバイトで構築しました。将来を見据えた最適な容量設計と重複排除機能により、余裕を持ってディスクを効率的に使えます」と石河氏は話す。

こうした運用の効率化により、従来環境での運用に比べ、TCOは20%削減でき、その一方でパフォーマンスは40%向上した。サーバーの処理能力やディスク性能が向上したためだ。「負荷の大きい夜間ジョブや経理トランザクションの処理時間は最大40%程度短縮されました」と石河氏は語る。

今後はERPデータはもちろん、それ以外の社内システムのデータを含めて統合管理し、その利活用による需要予測やリスク予測、経営の意思決定支援などビジネスのデジタル化にもチャレンジしていく。

ソシオネクストは今回構築したプライベートクラウドを軸に、ERPの価値を最大限に引き出し、サプライチェーン全体の効率化・高度化を進めることで、さらなる成長を目指す構えだ。

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