オンプレミスとクラウドが融合した世界へ 注目したい4つの「新サービス」とは?

いかにマルチクラウド環境下で、オンプレミスとクラウドを双方向で連携・融合させていくか――。これは、多くの企業に共通したテーマだといえるだろう。こうした中、クラウド感覚でオンプレミスを活用できる新しいサービスが注目をされている。その代表格と言えるのが、デル・テクノロジーズが2021年5月に発表した「APEX」だ。発表されてから、まだ1年余りだが、その間にも着実に進化を続け、サービスポートフォリオも拡充されている。今回はその中から4つの新サービスを俯瞰してみたい。

マルチクラウドに向け進化を続ける
新サービスの「最前線」

デル・テクノロジーズ株式会社
DCWソリューション本部
平原 一雄氏

デル・テクノロジーズが2021年5月に発表した「APEX」。前回の記事では、その本質と戦略について紹介した。これは「バイ・ディレクショナル・グラウンド・アンド・クラウド・ストラテジー(オンプレミスとクラウドの双方向戦略)」という大きな戦略に基づくもので、その実現に向けたロードマップも長大なものとなっている。

「その実現に向けて、APEXはさらなる進化を続けています」とデル・テクノロジーズの平原 一雄氏は語る。昨年に発表された当初は、データストレージの“サービス化”が大きな話題になったが、わずか1年で既に多様なサービス群が追加されている。以下では、特に注目したい4つのサービスについて見ていきたい。

まず1つ目は「APEX Multi-Cloud Data Services(AMCDS)」。これはEquinixのデータセンター内に構成される、データストレージのマネージドサービスである。ただし、ストレージキャパシティだけではなく、主要パブリッククラウドへのアクセス回線もオールインワンで提供できる点が、大きな特徴だ。

パブリッククラウドに隣接したEquinixのデータセンターにDell EMCストレージを設置。その運用管理をデル・テクノロジーズ自身が行うことで、データストレージのマネージドサービスを実現している。ここにデータを置くことでオンプレミスとパブリッククラウドの両方から手軽にデータアクセスでき、パブリッククラウドからの「エグレスコスト」を回避することも容易になる

「ストレージが設置されているEquinixのデータセンターは、ネットワーク的に見てパブリッククラウドと隣接しており、極めて低いレイテンシでのアクセスが可能です。そのためAMCDS上のストレージを、主要パブリッククラウドのワークロードから手軽に使えるようになっています。またネットワークのコネクション部分に、デル・テクノロジーズ・キャピタルも出資するスタートアップ企業の最新テクノロジーを活用することで、お客様のオンプレミス環境のファイアウオールやルーターの設定を変えることなく、ネットワークをパブリッククラウドまで延伸して利用する、といったことも可能になっています」(平原氏)

このような特徴があるため、AMCDSにデータを集約した上で、オンプレミス環境とパブリッククラウド環境の両方から利用できる。これによって、パブリッククラウドに格納したデータをほかの場所に移す際に発生する高額な「エグレスコスト(脱出コスト)」も、回避しやすくなるという。

サービスのオーダーは、ほかのサービスと同様に「APEXコンソール」からワンストップで行うことが可能だ。「容量」「利用期間」「ストレージの種類(ブロック型/ファイル型/Amazon S3互換のオブジェクト型など)」を選択するだけで、利用開始できる。

「ストレージの種類としては、これらの基本的なものに加えて、スケールアウト可能なファイル型や、データプロテクション型を選択することも可能です。データプロテクション型はエアギャップを備えた外界から隔離された領域を設け、そこにデータを格納することで、外部からの改ざんを防止するというものです。これを選択することでサイバーリカバリーを実現しやすくなり、ランサムウエア攻撃への対処も容易になります」(平原氏)

多様な環境のデータの
一元的なバックアップも実現

2つ目は「APEX Backup Services」である。これはSaaS型のデータ保護サービスであり、ハイパースケーラー上でバックアップストレージを稼働させた上で、提供しているという。

「プラットフォームとしてハイパースケーラーを採用していることで、極めて高いスケーラビリティを実現しています。そのため急にバックアップ容量が増大した、といったケースにもオンデマンドで対応できます。またオンプレミスシステムのバックアップだけではなく、SaaSなどのパブリッククラウドからのバックアップや、テレワーク社員が利用しているエンドポイントデバイスからのバックアップ用途にも柔軟に対応可能です」(平原氏)

実際に、既にこのサービスの利用を開始している事例も、SaaSからのデータバックアップとして採用している例が多いという。その一例が、Microsoft 365のデータバックアップに採用しているケースだ。Microsoft 365ではユーザー自身がデータを削除した場合、一定期間はそのバックアップが保持されるが、その期間を超えてしまうと復元できなくなる。しかしこのような運用は、米国民事訴訟の手続きの1つである「e-Discovery」への対応では、好ましいものとはいえない。訴訟に関連する電子データやコンテンツを、すべて開示することが求められているからだ。ここにAPEX Backup Servicesを活用すれば、ユーザーが削除したデータも長期的に保護可能になる。

もちろんバックアップ対象となっているSaaSはMicrosoft 365だけではない。「Salesforceのデータ保護でもこのサービスはよく使われています。Salesforce自体にもデータ復旧の仕組みは備わっていますが、これはあくまでもSalesforce自体の不具合に備えたもの。ユーザーが削除したデータの復元には対応できません。そのため多くのお客様がCSVファイルにデータをエクスポートして保護していますが、これでは復元プロセスが複雑になります。これに対してAPEX Backup Servicesであれば、Salesforceのユーザーインタフェースからセルフサービス型で利用でき、オンデマンドでのきめ細かいバックアップとリストアが可能です」。

さらに、エンドポイントのデータバックアップに対応している点も、大きなメリットだ。「APEX Backup Servicesは、デバイスのバックアップ管理をIT管理者がリモートで行うことができ、リストアもリモートで実施できます。ユーザー自身がセルフサービス型でリストアすることも可能なので、間違えて削除してしまったファイルの復元や、PC入れ替え時のデータ再イメージも自分で操作できます」(平原氏)。

もちろんオンプレミスのデータもバックアップできるため、ハイブリッド環境のデータ保護を統合的に行う、といったことも可能だ。「例えばSQL ServerではSQL Server 2016からストレッチデータベースを実現しており、最近ではオンプレミスとMicrosoft Azureにまたがったデータベース運用を行っているケースが増えています。このような場合でもAPEX Backup Servicesであれば、すべてのデータをシームレスにバックアップ/リストアすることが可能です」。

さらなるユーザー体験の
向上に向けAPEXと既存サービスを統合

デル・テクノロジーズ株式会社
APEX プロダクト マーケティング
フィールドマーケティングコンサルタント
野﨑 絵里佳氏

3つ目のサービスとして注目したいのは、「Flex On Demand」とAPEXコンソールのインテグレーションだ。これについては同社の野﨑 絵里佳氏が次のように説明する。

「Flex On Demandは当社が以前から提供してきた『消費型ITサービスモデル』で、バッファーを含めた容量を事前に提供することで、必要に応じてオンデマンドで容量を拡張できるもの。お客様が負担するコストは事前に設置した容量分ではなく、確実に使用するとして設定した基本容量分と利用した分という従量課金になります。これが今回APEXに統合され、『APEX Flex On Demand』となりました」

事前にバッファーを含めた容量の機器を設置し、オンデマンドで拡張できるようにすることで、オンプレミスのITインフラに柔軟性と拡張性を提供する。料金体系は基本容量と追加で利用した分の柔軟な従量課金制なので、IT投資のリスクも回避しやすくなる

これを利用する企業や組織にとって、メリットは大きく3つあるという。第1は「調達の最適化が容易になること」だ。

「最近ではシステム負荷やデータ量が急増するケースが多くなっており、将来予測を立てることが難しくなっています。そのためキャパシティプランニングの負担が大きくなっており、予想よりも早くキャパシティ不足になることも珍しくありません。ITリソースが不足すれば、リソース追加のために多くの作業負担・費用が発生します。しかしAPEX Flex On Demandを利用すれば、オンデマンドでリソースを増強できるため、このような問題を回避できます」(野﨑氏)

第2のメリットは「IT投資のリスクを抑えられること」。将来のキャパシティ不足に配慮して必要以上の投資を行う必要がなくなるわけだ。また、将来的には別のプラットフォームを利用することを計画している場合もあり、その場合は必要容量が減るケースも想定される。このケースではデータ容量の減少に合わせた支払いも可能となる。このような理由からCAPEXで一括購入するのに比較して、APEX Flex On Demandの方がトータルコストを抑えられるケースも多いという。

そして第3がキャッシュフローの改善である。「ITインフラのために一括投資を行うと、キャッシュが固定化します。これに対してAPEX Flex On Demandでは、ITインフラにかけるコストが月額(基本+従量)支払いになるため、より戦略的かつ柔軟にIT予算を使えるようになります。またITインフラのテクノロジーは年々進化していますが、APEX Flex On Demandならキャッシュフローの最適化により今までより短いサイクルで新しい製品に切り替えることもできるため、このような進化にも追随しやすくなります」(野﨑氏)。

もちろんこのAPEX Flex On Demandも、APEXコンソールで管理が可能だ。請求前のプリインボイスの確認、請求額の承認や管理、テレメトリーサービスによる利用状況の確認も行える。APEXに統合されたことでこれまで以上にシンプルになり、ガバナンスを高めることも容易になったのである。

パートナーとの協業も様々な形で
積極的に推進

デル・テクノロジーズ株式会社
APEX事業推進部
ビジネス開発マネージャー
木村 紳也氏

そして最後に4つ目のサービスが「APEXパートナーシップ」における2つの取り組みだ。これに関しては、同社の木村 紳也氏が次のように説明する。

「1つは『RISE with SAP』の『PE/CDCオプション』提供において、APEXも活用されていることです。PE/CDCとは『Private Edition, Customer Data Center』の略であり、SAPプライベートクラウドに完全準拠したクラウド環境をお客様のデータセンター内に設置し、それをSAPが運用するというものです。SAPとデル・テクノロジーズは既に25年以上にわたる緊密なパートナーシップがあり、世界で1万5000人以上の共同顧客がありますが、ここにAPEXが採用されたことで、検証済みの環境の迅速な提供、柔軟性と拡張性の向上、最適化されたリソース利用とリスク最小化を実現可能にしています」

SAPプライベートクラウドに完全準拠した環境を顧客のデータセンター内に構築し、これをSAPがSLAを担保する形で運用する。ここでAPEXを活用することで、様々なメリットがもたらされているという

もう1つはIoTに特化したPTCとの取り組みだ。ここではIoTエッジとして使うITインフラにAPEXを活用。これによってエッジまでカバーしたマネージドサービスが展開できるようになっているのだという。

「これら2つは代表的な取り組みですが、ほかにも様々な形でパートナーとの協業を進めています。日本でも数多くのインテグレーター様やサービスプロバイダー様と、APEXをサービスコンポーネントとして使っていただくことで、新たな付加価値を生み出していこうというお話をさせていただいております」(木村氏)

このように発表からわずか1年に満たないにもかかわらず、APEXの世界は着実に拡大を続けている。今後もさらなる進化が期待できるといえるだろう。

関連リンク

DXを加速するDell Technologies APEX

https://www.delltechnologies.com/ja-jp/solutions/apex/index.htm

お問い合わせ

デル・テクノロジーズ株式会社

https://www.delltechnologies.com/ja-jp/forms/contact-us.htm