急速に進むエッジコンピューティング 活用に向けた6つのハードルと対応策とは

年々拡大しているエッジコンピューティングの市場。今後もこの成長は継続し、世界の市場規模は2030年に328億ドルを超えると予測されている。すべてをクラウドに集約せず、エッジ側でデータ処理を行うようにすれば、データトラフィックの最適化が図れるため、低遅延やコストの削減も期待できる。しかしその実現にはハードルがあることも事実だ。ここではエッジコンピューティングの現状と近未来の予測、展開に伴うハードルなどを俯瞰した上で、そのメリットを享受するためのアプローチについて考えてみたい。

エッジコンピューティングを後押しする
4つの背景とは

デル・テクノロジーズ株式会社
SE統括本部 テレコムSE部
プリセールスソリューションアーキテクト
望月 亮氏

現在は多くのワークロードがクラウド上で生まれているが、その大半はエッジコンピューティング(以下、エッジ)に移ると予測されている。なぜ、エッジへのシフトが急速に進むと見込まれているのか。それには大きく分けて4つの背景がある。

第1は「IoT(モノのインターネット)の利用増加」だ。既に製造業を中心に、工場などの現場から各種センサーによってデータを収集・活用する動きが進んでいるが、今後はより幅広い業種へと拡大していくだろう。

第2は「低遅延処理や自動意思決定ソリューションへの需要増」だ。エッジで収集したデータを現場で迅速に生かしていくには、毎回クラウドまでデータを上げて処理するのでは、間に合わなくなるケースが増えてくる。

第3は「データの激増」だ。各種センサーを介して、現場で生まれる膨大なデータをクラウドに上げるのは、通信コストや負荷などの観点で問題がある。

そして第4が、膨大なデータの処理によって「クラウドインフラの負荷が増大すること」だ。クラウドの負荷が増大すれば、それに伴ってコストも増大する。

「エッジコンピューティングによって、データ処理を行うサーバーを“端末の近くに分散配置”することで、これらの問題を解決できます」と説明するのは、デル・テクノロジーズの望月 亮氏だ。特に遅延に関しては、クラウドで処理する場合には毎回数百ミリ秒の往復遅延が発生するのに対し、エッジコンピューティングであれば数ミリ秒のスケールに収めることが可能になるという。

「これだけの低遅延が可能になれば、様々なビジネスシーンでの利用が期待できます。現在でも既に、e-スポーツや自動運転などで低遅延が求められていますが、今後は建機の遠隔操作や遠隔手術、スマートシティなどでも低遅延が重要な課題になっていくと考えられます」

それではエッジで生成されるデータ量はどの程度になる見込みなのか。ある調査によれば、2025年には410億台以上のIoTデバイスから、全データの86%が生成されるという。そしてこれに先立つ2023年には、大企業の70%がエッジで様々なレベルのデータ分析モデルやAIモデルを稼働させるという予測もある。

「このようなエッジ活用の形態は『Edge & Analytics』と呼ばれています。データ処理はコアクラウド(企業が保有するデータセンター)からエッジへと分散され、その割合がどんどん大きくなっていくわけです」(望月氏)

エッジコンピューティングの
展開を阻む6つのハードルとは

その一方で、エッジコンピューティングを展開していく上で、ハードルとなる課題も存在する。その上位6位は以下のものだと望月氏は説明する。

・セキュリティ・プライバシーなど規制への対応
・新しいソリューションに対する専門知識の欠如
・複数ロケーションに点在するIT管理の困難さ
・生成される大量データの管理と整理の困難さ
・アプリケーション選定・展開の困難さ
・過酷な環境下でのサービス展開

「こうしたハードルを乗り越えていくには、エッジを含むマルチクラウド環境を一元的に管理し、またデータの所在を意識せずに分析・活用が可能なプラットフォームが必要です。デル・テクノロジーズは既に数年前から、その実現に向けた取り組みを進めてきました。このプラットフォームにAPEXを組み合わせることで、近い将来にはサービス型で迅速に、エッジコンピューティングの展開が可能になると考えています」

その全体像を表したのが図1だ。

そのベース部分にAPEXを適用することで、エッジコンピューティング展開がサービス型で利用可能になる

データ処理の多くがエッジ側に移るといっても、すべてがエッジ化されるわけではない。企業システムはこれまで通り、エッジ+オンプレミス+パブリッククラウドで構成され、これらが連携する形で処理が行われることになる。このうち、エッジからオンプレミス、そしてパブリッククラウドの一部にAPEXを適用することで、企業は4つのメリットを享受できるようになる。

1つ目は「ハードウエアの導入コストをCAPEX(投資)ではなくOPEX(費用)として処理できるため、ハードウエア導入のハードルが低くなること」。もちろん、ハードウエアの調達にかけていた労力も不要になり、必要な分を必要な時に迅速に調達できる。そのため迅速に導入判断を下すことが可能になり、新しいことへの取り組みも早期に着手できるようになるだろう。

2つ目は「俊敏なプロジェクト進行が可能になること」。APEXはビジネスや業務のニーズに応じてキャパシティや処理性能を迅速に増強でき、そのコストも費用として処理できる。そのため実証実験から本番運用への移行も、スムーズに行える。

3つ目は「多拠点に展開された環境を、遠隔地からフルマネージドで運用できること」だ。ハードウエアの基本的な運用はデル・テクノロジーズに任せることができ、環境全体の可視化や管理は単一のAPEXコンソールで行える。

そして4つ目が「エッジからコアクラウドまで、一貫性のある運用管理を実現できること」である。「現状は、APEXと組み合わせたエッジ・データ・プラットフォームはまだ完成していません。しかし参考になる先行的な取り組みは既に存在します。それがAtos社とデル・テクノロジーズのパートナーシップで提供している『Outcome-as-a-Service Solution』です」(望月氏)。

先行する取り組みが示す
APEXが拓く未来

Atos社とは、1997年に設立されたフランスのデジタルサービス会社。全世界で11万人以上の従業員が活動し、110億ユーロ(約1兆5000億円)を売り上げるグローバル企業だ。同社がデル・テクノロジーズと提供しているOutcome-as-a-Service Solutionとは、データ収集、機械学習、エンジニアリング、サポートをトータルに提供するというもの。クラウド環境にホストされたマネージドサービスに加え、デル・テクノロジーズのエッジサーバーも組み合わせたシステム構成となっており、これら全体をOPEXモデルで利用できる仕組みだ。

「この新たなソリューションを支えるため、デル・テクノロジーズは『Dell Streaming Data Platform』を提供し、これによってサービス型の展開を支援しています」と望月氏は語る。

このプラットフォームは、エッジ環境で生成されるデータの収集、蓄積およびエッジでのリアルタイムデータ分析を支援するとともに、エッジで継続的に生成されるデータをコアDCやパブリッククラウドで活用できるようにするためのデータモビリティの簡素化を提供するもの。これによりエッジ/現場での迅速な判断と、コアDC/クラウドでの長期傾向モデルの分析、エンド・ツー・エンドでのデータマネジメントを支援する。

利用領域としては、製造業、エネルギー産業、ヘルスケア、交通、エンターテインメントなどを想定しており、例えば、製造業における予防保守に適用した場合、大きく3つのメリットが享受できるという(図2)。

まず1つ目が「メンテナンス時間の短縮」だ。AIや機械学習による分析をエッジ環境で実行し、その結果をその場で活用することで、問題特定までの時間を大幅に削減できる。

次に2つ目が「サイロ化によるテクノロジーの複雑さの解消」だ。クラウド環境からフルマネージドサービスとして、エッジのハードウエア/ソフトウエアをカバーできるからだ。また自動設定・自動実行も可能なため、ユーザー企業側での管理が不要になり、ビジネスに集中できるというメリットもある。

そして最後に3つ目が「導入の際のハードルが低いこと」である。OPEXモデルで導入できるため、初期投資の大きさや減価償却の煩雑さに悩まされることがない。

実際にAPEXがエッジに展開されるのはこれからとなるが、その実現に向けた取り組みは既に始まっている。またインフラだけではなく、その上のレイヤーも取り込んだ環境整備も視野に入っているという。さらに、業界特化型エッジのサービス化、エッジマネージドサービスの拡充やマーケットプレイス化、データ分析ソリューションとの連携なども検討されている。

このような環境が整備されれば、冒頭で述べたエッジコンピューティングの6つの課題の多くを解決できる。これにより、エッジから生成されるデータの活用が加速され、より大きな価値を生み出すことも更に容易になっていくはずだ。

関連リンク

DXを加速するDell APEX

https://www.delltechnologies.com/ja-jp/solutions/apex/index.htm

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