今後のDXのカギとなるエッジコンピューティング データの“地産地消”を実現する仕組みとは

現在は「VUCA」の時代といわれる。さらに近年は、新型コロナウイルスの影響により、企業の置かれる環境は目まぐるしく変化し、先を見通すことはさらに難しくなった。このような状況のもと、多くの企業が取り組んでいるのがデータの利活用だ。
既に各業界のリーダー企業は「データファースト」戦略へ移行しており、DXの潮流は、加速度的に増えるデータをどう企業価値に変えるかがメインテーマになりつつある。そこで本稿では、データ活用に向けた支援を行う先駆者にインタビュー。今後不可欠となるデータ中心のIT戦略やデータ基盤のあるべき姿について考えてみたい。

CASE 02
ネットワンシステムズ株式会社

今後のDXのカギとなる
エッジコンピューティング
データの“地産地消”を実現する仕組みとは

ビジネスの現場で発生する膨大なデータをAIなどで処理し、その結果をビジネスにフィードバックすることで最大限に活用していく。この成功のカギになるのが、現場(エッジ)でのデータ処理である。現場で生まれたデータを現場で速やかに処理することで、より多様な活用が可能になると期待されているのだ。その実現に向けてどのような仕組みが必要となるのか。独立系インテグレーターとして国内最大級のネットワンシステムズとデル・テクノロジーズのキーパーソンに話を聞いた。

データは、今、どこで
生成されているのか?

――多くの企業が、その規模に関係なく既にAIの導入を進めていると聞きます。そういった企業が特に気にしている点は何でしょうか。

デル・テクノロジーズ 小幡 2016年から2025年にかけてデータが爆発的に増大し、2025年には現在の10倍ものデータ量になるといわれています。そのため、データ活用という点では、「こうした膨大なデータをすべてデータセンターやクラウドに上げて処理できるのか」という“データの適切な配置”が重要になります。

これまではクラウドファーストの潮流の中、データ処理の多くがクラウドへとシフトしてきました。膨大なデータがクラウド上に保管され、そこで処理されています。しかしこれから発生するデータの8割は現場で生成されることになります。膨大なデータを通信回線経由でクラウドに上げて処理し、その結果を現場にフィードバックする仕組みでは、通信回線にも膨大な負荷がかかってしまいます。また長距離をまたいだ処理ではレイテンシ(遅延)が発生し、現場での迅速な対応も難しくなっているのです。

――エッジで発生したデータの処理は、ある程度エッジで行う必要があるということでしょうか。

ネットワンシステムズ株式会社
ビジネス開発本部
プロダクトマネジメント部 第2チーム
前山 直樹氏

ネットワンシステムズ 前山 その通りです。例えば店舗の物理セキュリティーで使われる監視カメラや映像による工場での品質管理やモニタリングなどを考えてみてください。カメラからは大量の映像データが発生していますが、これらのデータをすべてクラウドに持っていくことは、現実的ではありません。最近ではネットワークが5Gになったとはいえ、高精細な映像データをそのまま流してしまえば、帯域はひっ迫してしまうでしょう。だからといって、カメラ映像を人が見てチェックし続けるのはコストがかかります。そのため現場でAIを動かして、問題を自動検知したいというニーズが高くなっているのです。

――大容量データをクラウドに持ち込むのも、コストがかかりますね。

ネットワンシステムズ株式会社
ビジネス開発本部
応用技術部
クラウドインフラチーム
篠﨑 智昭氏

ネットワンシステムズ 篠﨑 主要なクラウドサービスでは、データの出し入れに料金が設定されていますからね。エッジで生成したデータをAIで処理し、その中から長期保存すべきものだけを選んでクラウドでアーカイブしていく方が、コスト面でも有利です。

しかしエッジコンピューティングの実現に向けては課題もあります。現場で膨大なデータを処理しようとしても、これまでのストレージ製品では容量の制約があり、ほとんどの場合、1~2日程度の映像データしか保存できません。またAIで処理するにはデータアクセスのパフォーマンスも求められますが、これも十分だとはいえません。パフォーマンスが十分でなければ、AIが映像データを取り込む際に待ち時間が発生し、リアルタイムでの処理が難しくなります。AIで監視カメラのデータをエッジで処理していても、問題が検知されるまでに30分かかるようでは意味がありません。

――今後、6G、7Gとネットワークが進化しても、その問題は残るのでしょうか。

ネットワンシステムズ 篠﨑 残ると思います。ネットワークの帯域が拡大したとしても、距離によって発生するレイテンシは、物理的にゼロにすることはできません。そのため、現場で迅速に活用したいデータは現場で蓄積・処理し、アーカイブや再学習用のデータは後でクラウド側に保存する、という使い分けが一般的になっていくはずです。

自社で検証した上で
最新テクノロジーを顧客に提案

――このようなエッジでのデータ処理に対応するため、ネットワンシステムズではどのような取り組みを行っていますか。

ネットワンシステムズ 前山 最新テクノロジーを搭載し、容量面でも性能面でも従来製品を超えるストレージ製品を追求しています。当社はマルチベンダーのソリューションを提供する国内最大級のSIerであり、常に最新テクノロジーを取り入れ、それをお客様の問題解決に役立てることが、一番必要な事と考えています。もちろん、単に最新製品を取り扱い、お客様に提案・導入するだけでは十分ではありません。お客様が安心して導入し、導入後もトラブルが発生しないように配慮しなければなりません。

ネットワンシステムズ 篠﨑 そのために実践しているのが「netone on netone」という取り組みです。これは、最新テクノロジーを自社の業務改革や働き方改革で活用し、全業務をシステムと一体化する形に改革した上で、その過程の成功・失敗の経験をお客様にご紹介する、というものです。私達自身がテクノロジー活用のショーケースになることで、お客様はその効果や実現までのプロセスを、具体的な形で見ることができます。その結果、お客様のシステム検討や導入の時間を、大幅に短縮することが可能になります。

これに加えてもう1つ注目していただきたいのが「Validated Design」というアプローチです。これはお客様に導入する前に、あらかじめシステム構成を検証し、稼働担保を技術的に確認するというものです。これもお客様が安心して導入する上で、重要な役割を果たしています。

――きちんと検証した上でお客様に提案するわけですね。

ネットワンシステムズ 篠﨑 そのための環境も整備しています。当社には「テクニカルセンター」があり、そこで国内最大級の検証環境を用意しています。敷地面積は約2100平米、約300本ものラックが設置され、約9000もの機器が稼働しているのです。ここでお客様の環境を再現し、導入前評価を行うことが可能です。このような事前検証環境のことを、当社では「Lab as a Service(LaaS)」と呼んでいます。またLaaSによるお客様専用の検証エリアだけではなく、お客様個別の検証ルームも常設しています。ここでお客様の環境や目的に特化したPoC(実証実験)も行えるようになっています。

――それだけ大きな環境があれば、多くのケースを想定した検証が可能ですね。

ネットワンシステムズ 篠﨑 お客様ごとの事前検証だけではなく、当社内での最新製品の検証もここで行っています。新しい製品が登場した際には、まずその機能や性能をチェックした上で、お客様に提案可能な「商品化」を行っているのです。この検証を行うことで、お客様は安心して最新製品を導入でき、導入後も問題なく運用を続けられます。ソフトウエアやファームウエアがバージョンアップされた際にも、同様の検証を行っています。

エッジ処理に貢献する製品として
PowerStoreを実機検証

――その一環として、デル・テクノロジーズの「Dell PowerStore」(以下、PowerStore)の検証も行われたと伺っています。その理由について教えてください。

ネットワンシステムズ株式会社
ビジネス開発本部
応用技術部 クラウドインフラチーム
川和 耀太氏

ネットワンシステムズ 川和 PowerStoreの3000Tと3000Xという2つのモデルで、IOPS(入出力性能)検証を行いました。その最大の理由は、極めて高い処理性能とスケールアウトによる大容量を実現しており、エッジ側でのデータ保存・活用に大きな貢献を果たす製品だと評価したからです。お客様がこれから直面するエッジ処理の課題解決にも、間違いなく役立つはずです。それならばいち早く検証を行い、お客様に提案できる状況にすべきだと判断しました。

――具体的な検証内容について教えてください。

ネットワンシステムズ 川和 まずDell PowerStore 3000Tは、データ入出力の負荷を生成するサーバー環境をDell PowerEdge Rシリーズで構築し、これとPowerStoreを接続してIOPSを測定しました。測定結果は入出力されるデータブロックのサイズなどで変化していますが、最大10万IOPSの性能を発揮することが分かりました。一般的なHDDのIOPSは100程度なので、1000本分に匹敵する性能が出ていることが分かります(図1)。

最大10万IOPSを叩き出すなど、極めて高いパフォーマンスであることが分かる

ネットワンシステムズ 川和 一方、Dell PowerStore 3000Xは、内部にVMwareのハイパーバイザーであるESXiが実装されており、ストレージ内部で仮想マシンを動かせます。そこで3000XのIOPS検証ではサーバーを別途用意せずに、ストレージ内部でデータ入出力の負荷を発生させる仮想マシンを動かして計測を行っています。その結果、3000Tに比べると若干IOPSが低下していますが、それでも最大8万IOPSを発揮することが分かりました。この数値の変化は、仮想環境のレイヤが追加されていることを考えれば、想定の範囲内だといえるでしょう(図2)。

3000Tと比較すると、ストレージ内部の仮想環境でサーバーを動かしている点が大きく異なっている。IOPSは最大8万と3000Tに比べて若干低いが、それでも十分な性能値だといえる

――これらの結果を、どのように評価していますか。

ネットワンシステムズ 川和 エッジで使うには十分なパフォーマンスだと思います。実は実機での検証を行う前に、デル・テクノロジーズが提供している「PowerSizer」というツールで机上での検証も行っているのですが、その数値とも大きな差異は生じませんでした。もちろん検証条件によって、実機検証の方が若干大きい数値が出たり、その逆もあったりしたのですが、PowerSizerによる事前シミュレーションも十分に信頼がおけるということが分かりました。

カメラ数千台を
接続可能な極めて高い処理性能を発揮

――エッジで十分に活用できるストレージだということですが、具体的なユースケースとしてはどのような物が考えられますか。

ネットワンシステムズ 川和 工場でのIoTや、医療分野での活用などが挙げられますが、先程申し上げた監視カメラなどでの活用は特に有効だと考えています。ストレージ内で仮想マシンを動かせるDell PowerStore 3000Xは、同じ筐体内でAIを動かすといったことも可能になるので、スペースの限られる現場でも活用しやすいはずです。そのため今回は、先程のIOPS検証に加えて、カメラ映像保存の検証も実施しています。

具体的には検証環境にカメラを1台設置し、ラックの様子を録画。その映像データを、Dell PowerStore 3000Xの仮想マシン上で稼働するカメラ管理ツールを介して、PowerStore上に保存しています。ここで、データ容量の増加状況と、IOPSを計測しています(図3)。

まずデータ容量の増加ですが、まず76GBからスタートし、1日あたり約20GBずつ増えていることが分かります。最初の76GBというのは、カメラ管理ツールを動かす仮想マシンなどの容量であり、その後に増えているのがカメラ映像のデータ容量です。今回使用したDell PowerStore 3000Xは26.9TBの容量があるため、16台のカメラを同時に接続したと仮定しても、68日分の映像を保持できることになります(図4)。

1日あたり約20GB容量が増加しており、今回使用したモデルでは1000日分以上のデータを保持できる。またIOPSは10程度なので、PowerStoreの性能であれば数千台規模のカメラに対応可能だ

また容量の増え方を細かく見ていくと、最初は22~23GBの増大になっているのに対し、その後徐々に追加容量が減り、5日目には19GBになっています。これはPowerStoreが装備している重複排除機能の影響だと考えられます。そのためより長期で運用すれば、容量増加のカーブは緩やかになっていくと推測できます。

次にIOPSですが、一部のピークを除けば10 IOPS以内に収まっています。先程のIOPS検証ではDell PowerStore 3000Xの最大性能が8万IOPSだったので、数千台規模のカメラ接続にも耐えられることになります。

※ 全体容量の8割まで利用する仮定で計算している

自社のVDI環境でも
PowerStoreを採用

――先程「netone on netone」の話がありましたが、PowerStoreはネットワンシステムズの社内でも活用されているのですか。

デル・テクノロジーズ株式会社
インフラストラクチャ・ソリューションズ事業統括
パートナー営業本部 セールスエンジニア
小幡 健一氏

ネットワンシステムズ 前山 もちろんです。当社にはDX推進部という社内IT部門がありますが、ここがVDI環境のストレージとしてPowerStoreを採用しています。以前はXtremIOを使っていたのですが、そのサポートが終了になるということで、次に採用するストレージ製品を複数ベンダーから選定していたのですが、最終的にPowerStoreを採用することになりました。

――なぜPowerStoreを採用したのでしょうか。

ネットワンシステムズ 前山 まず他社製品に比べて、パフォーマンスが極めて高いことです。XtremIOもオールフラッシュなので高いパフォーマンスを発揮し、当社のVDI環境もレイテンシがほとんど発生せず、快適な利用環境を実現していました。PowerStoreはその後継ストレージとして、社内で評価し採用に至りました。またスケールアウトによって容量を拡大しやすいことや、重複排除機能の効果が大きいことも、評価ポイントとなったようです。これらに加えて、少ないラック数で実装できること、消費電力が抑えられていること、セキュリティー面で大きな進化を遂げていることも、PowerStoreの大きな特徴になっています。

特にセキュリティーに関しては、NISTフレームワークに則った「セキュリティ・バイ・デザイン」の考え方にもとづいて設計されており、不適切なネットワークに接続できないようなポートデザイン、ファイルロック機能、サプライチェーンを配慮した物理的セキュリティーなどが装備され、ランサムウエア対策も強化されています。実際のところ内部にいる技術者にとっては、ストレージ製品から記録メディアを抜き出すことは、決して難しいことではありません。しかしPowerStoreは、抜き出した記録メディアをほかのマシンに持ち込んでも、読み出すことが不可能です。そのため物理的に情報を盗み出すことすらできないのです。

――ほかのシステムでPowerStoreを採用する計画はありますか。

ネットワンシステムズ 前山 仮想基盤の更改が予定されているのですが、そこで使うことが検討されています。将来的にはVDIに加え、仮想基盤での経験もお客様に提供していきたいと考えています。

今回のテーマはストレージ製品ですが、デル・テクノロジーズにはPowerEdgeなどのサーバー製品や、ネットワーク製品など、幅広い製品があります。当社はマルチベンダーのSIerではありますが、デル・テクノロジーズの存在は極めて大きいといえます。また製品ポートフォリオが広いだけではなく、保守や運用をオフローディングできるなど、サポートもしっかりしています。今回の検証でも、デル・テクノロジーズの製品担当者と直接やり取りし、様々な技術支援を受けることができました。

データドリブンであることを求められるこれからの世界で、PowerStoreをはじめとするデル・テクノロジーズの各種製品は、重要な役割を果たすことになると考えています。これからも密接に連携しながら、最新テクノロジーを活用した検証済みのソリューションを、お客様にご提案していきたいと考えています。

デル・テクノロジーズ 小幡 当社としても、ネットワンシステムズさんのように、お客様のペインポイントを知っていて、なおかつ技術力もあるSIerさんと一緒に様々な製品を検証し、ブラッシュアップした上で、お客様にデリバリーしていきたい。そうした活動を通して、市場の拡大や企業・組織に貢献したいと考えています。

お問い合わせ

デル・テクノロジーズ株式会社

https://www.delltechnologies.com/ja-jp/contactus.htm