メタバースやデジタルツイン、仮想通貨など、デジタル技術は新しい価値を次々と生み出しながら社会を大きく変えている。「それに伴い、コンピューティング性能への要求が高まり、半導体の役割がますます重要になっています」とインテルの鈴木 国正氏は語る。
同社は、今後のデジタル基盤を支えるのは「ユビキタス・コンピューティング」「コネクティビティー」「クラウドからエッジまでつなぐインフラ」「AI」という4つの“スーパーパワーズ”だと考えている(図)。社会のあらゆる所でコンピュータが動き、それらがネットワーク経由でシームレスにつながる。データやシステムはクラウドからエッジまで統合されたインフラで管理され、AIがインテリジェントなサービスを提供する。
スーパーパワーズの価値を最大化する上では、サイバーセキュリティー強化、デジタル人材育成などの課題を解決することが不可欠だ。インテルはそのための取り組みにも注力している
インテルの成長戦略も、このスーパーパワーズを軸としている。CPUからGPU、FPGA、専用ASICsへと事業領域を拡大しながら、半導体の性能向上を追求する。そのために、工場の設備や研究開発にグローバルで大規模な投資を継続的に行ってきたという。
「スーパーパワーズの価値を最大化するには、目の前のいくつかの課題にも対処する必要があります」と鈴木氏。重要課題の1つがサイバーセキュリティーだ。
プロセッサレベルでサイバー攻撃対策を施す。例えば「Intel SGX(ソフトウェア・ガード・エクステンションズ)」は隔離された特別のメモリ領域を設定し、暗号化する機能。「Intel CET(コントロールフロー・エンフォースメント・テクノロジー)」は、プロセッサの命令を改ざんするマルウエア攻撃からPCを守る機能だ。これらは第11世代インテルコアプロセッサから提供を開始しているという。
同様に、デジタル人材の不足も重要な課題といえる。これについてインテルは、人材育成に向けた活動を展開。「Intel Education Skills for Innovation フレームワーク」は、同社が過去20年にわたり提供してきた「Intel Teach」という教師向け研修プログラムを進化させたものだ。AIやプログラミング、課題解決型教育など、小学生~高校生向けの70のカリキュラムを無償で提供している。
STEAM教育※の推進を支援する「STEAMラボ構築支援」も2021年から開始した。まずは戸田市教育委員会とパートナー企業の協力のもと、戸田東小中学校でラボを開設。活動は今後、全国へ拡大する計画だ。「政府のデジタル田園都市国家構想基本方針では、2026年度末までに230万人のデジタル人材を育成することが掲げられています。これに向けて、インテルはパートナー企業と共に貢献していきたいと思います」と鈴木氏は強調する。
デジタルの社会実装に向けた活動にも力を入れる。一例が「Intel RISE for Education」だ。自治体や地場の企業との共同プロジェクトで、地域の課題解決と活性化、および持続可能性の向上を目指す。
テクノロジーの進化を牽引すると同時に、人材育成やデジタルの社会実装もサポートする。インテルは、外部の企業・組織とのエコシステムを拡大しながら、デジタルの未来を切り開いていく。
※ Science(科学)、Technology(技術)、Engineering(工学)、Art(芸術)、Mathematics(数学)の5つの分野を横断的に学ぶ新しい教育概念