DXをいかに推進するか。これは多くの企業に共通したテーマだ。ただし、DXは全社的な取り組みとなるため、限られた部署やIT人財のみで推進しようとしても限界がある。「そのため、テクノロジーにあまり明るくない非IT人財に対して、どう門戸を開放していくかが成否を分けます」と指摘するのは、ServiceNow Japanの原 智宏氏だ。
それを象徴する一例がSNSだ。従来、情報を発信するには、それなりのITスキルが求められていた。しかし、現在は誰でも気軽に情報が発信できるようになった。
「非IT人財でも情報の発信者になれ、情報の提供側と受信側の垣根が取り除かれ、使いやすくなったサービスにさらに人を呼び込む好循環が生まれています。私たちはこの変化をエンパワーメントと呼んでいます。このエンパワーメントの実現には、エクスペリエンス(ユーザー体験)が不可欠です。優れたエクスペリエンスがなければ、誰もシステムやサービスを使おうとはしないからです」(原氏)
現状、企業内のシステムは、人事、経理、マーケティングといった部署単位に閉じた縦割りシステムになっている。データ格納を主眼に設計されたものを個別部署単位で導入したため、サイロ化したのが大きな要因だ。しかしユーザー視点で見れば、自分がやりたい業務を簡単に行えること、エンド・ツー・エンドのシームレス性、いつでもどこでも必要な情報・リソースを活用できるモバイル化などが重要な要件となってくる。
「つまりは人中心のシステム、使い心地のいいエクスペリエンスが約束されるシステムが必要なのです。ただし、それを一から作り直すには時間も費用も莫大になります。既存システムへの影響を最小限に抑えるため、その上位にブリッジとなる共通基盤を作ることが最大効果を生み出す現実解です」と原氏は言う。
ServiceNowではこのエクスペリエンスを実現するプラットフォームを提供。具体的には、個別システム内に閉じていたヒト・モノ・データの情報を統合的に共通基盤内に自動登録。それらをシステム横断型ワークフローから自動で呼び出すことで、企業内に存在するあらゆる業務プロセスを簡素化・標準化し、どこからでもエンド・ツー・エンドで自動実行することが可能だという。
こうした点に注目して活用する企業も多い。例えば建設機械レンタル業を営む会社では、レンタル品の注文と配送を従来の紙ベースからWebベースへ移行。その基盤にServiceNowのプラットフォームを採用し、24時間365日、PC/スマートフォン/タブレットなどからオンラインで簡単に注文できるサービスを開始した。これによって、顧客企業が借りている商品をWeb上でチェックできるようになり、既に借りている商品を重複して借りるといった無駄が排除された。加えて、過去の履歴から、どのような用途にどのような商品をレンタルすればよいか、顧客内でのノウハウの共有・蓄積が可能になった。社内の単純な業務効率化に終わらず、顧客ニーズに適したエクスペリエンスが提供されたのである。
「当社は人と人とをひも付けるエクスペリエンス指向の新しいプラットフォームを提供し、お客様のDXをサポートします」と語る原氏。イノベーションを目指す企業は、優れたエクスペリエンスの提供を念頭に置いたシステム戦略を検討すべきだといえるだろう。
イノベーションを起こすには、縦割りシステムのリソースを横串で有機的にひも付けるアプローチが必要。そのためのプラットフォームを用意することがDXには欠かせない