業務アプリケーションの内製に取り組む企業が増えている。ローコード・ノーコードツールを通じて開発者とユーザーの密接なコミュニケーションを取ることで、現場が求めるシステムを迅速かつ正確に実現するためである。エイチシーエル・ジャパンの提供する「HCL Volt」は、開発の容易性をはじめ、各種データソースとの柔軟な連携など、企業がシステムの内製を実践していくために欠かせない要件をトータルに満たすツールである。
DXの一環としてアプリケーション開発の内製にかじを切る企業が増えている。では、内製開発で対応すべきアプリケーションは、どの業務か。もし、その業務が市販のパッケージやSaaSなどでカバーできるのなら、それらを積極的に使うべき。内製で開発すべきは、そのような汎用的な業務ではなく、個別要件などを持つ、いわば業務の「ロングテール」領域だ。なぜなら、そうした業務こそが企業の競争力であり、差別化の源泉だからだ。それらの業務を内製開発することで、企業は強みをデジタルで変革したり、強化したりしていくことができるようになる。
「具体的には、ワークフローや業務日報、見積回答、受注、商品管理などが考えられます。内製によって、これらの業務を支えるアプリケーションを迅速に構築、改善を図っていくことが競争力強化につながるわけです」とエイチシーエル・ジャパンの臼井 修氏は強調する。
ローコード・ノーコード開発ツールは、その内製化のための欠かせないツールとなる。ただし、一口にローコード・ノーコードツールといってもいくつかの種類があり、大きく3つのタイプに分類できる。
1つ目は、画面を作成すると、その裏側でデータベースが自動生成されるタイプ。すぐにアプリケーションを作成・実行できるという特長を持つ。
2つ目は、データベースの作成とデータ定義を事前に実施するタイプ。セキュリティ設定などもデータベース側で行っておき、その上で画面やロジックを開発していくことになる。
そして3つ目が、Javaや.NETのプログラムを自動生成するタイプ。ある程度プログラミングのスキルを備えた人員が、より効率的にアプリケーションを作っていくのに用いることが多い。
「3つのタイプのうち、特にユーザー企業の内製化に最適だと考えられるのが、1つ目の画面作成によりデータベースが自動生成されるタイプです。開発者は、まずプロトタイプとなる画面を開発し、それを現場のユーザーに見せながら意見を聞き、開発を進めていく。アジャイル開発の要領で現場のニーズに応じた改善を重ねながら、アプリケーションを進化させていくことができます」と臼井氏は説明する。
HCLの提供する「HCL Volt」は、そのような用途に最適なローコード・ノーコードツールである。
HCL Voltは、(1)Webブラウザでドラッグ&ドロップするだけでアプリを作成。セキュアなデータベースを自動生成できる。(2)ワークフローの考え方が組み込まれており、ノーコードで柔軟なアプリ作成が可能。(3)社内外のデータと柔軟に連携するための豊富なプラグインを同梱している、という特長を持つ(図1)。
Webブラウザ上での直感的な開発に加え、ワークフローの実装、社内外の多様なデータソースとの連携など、企業の内製化推進に最適な開発環境を提供している
まずWebブラウザ上の直感的なドラッグ&ドロップ操作のみでアプリケーション開発可能という特長は、あらかじめ用意された各種パーツを画面上に配置していくことで、必要な画面とデータベースを備えたアプリケーションを自動生成できることを指す。
次いでワークフローの考え方が組み込まれているため、電子帳票のイメージ内にボタンや入力フィールドを設定して、必要なワークフローを実現できる。例えば、申請・承認を行うための稟議ワークフローであれば、申請の受け付け、申請依頼があったことの承認者への通知、承認あるいは否認の処理といった稟議プロセスの流れをノーコードでアプリケーションに実装できる。
「HCL Voltでは、これらフローを構成する『開始』『申請』『承認』『否認』の各プロセスを『ステージ』と呼んでいますが、どのステージにどんなボタンを配置し、どのボタンが押されたらどのステージに移動するか、誰が押せるようにするかを設定するだけで任意のワークフローを簡単に実現できます」と臼井氏は語る(図2)。
どのステージにどんなボタンを配置し、どのボタンが押されたらどのステージに移動するか、誰が押せるようにするかを設定するだけで任意のワークフローを組み込んだアプリケーションを実現できる
そして社内外の様々なデータソースと柔軟に連携を支えるのが、各種サービスと連携するための「Volt Link」と呼ばれるアダプタ群だ。例えば、社内システムであれば、JDBC経由で基幹システム側のRDBと連携したり、Excelファイルと連携して顧客情報や商品情報などのデータを取り込んだりといったことが可能。また、Amazon S3やAzure SQL、Google Cloudなどのクラウドサービスと接続するためのアダプタなども用意されており、企業がクラウド上に展開しているシステムに蓄積されたデータを、HCL Voltのアプリケーションに取り込むこともできる。さらには、SalesforceやServiceNowといったSaaS、あるいはREST APIが実装された広範なサービスとの連携を行うためのアダプタなども用意されている。
「レガシーシステムのモダナイゼーションの一環として、メインフレームに格納されているデータをREST API経由で取り出し、HCL Voltで作成したWebアプリケーションで表示するという形でご利用いただいているお客様の事例もあります。また、Excelのファイルをドラッグ&ドロップで取り込めば、シートに定義されている見出し項目に応じたフォーム画面を自動作成。データレコードの登録やメンテナンスを行うためのアプリケーションをすぐに作成することもできます」と臼井氏は付け加える。
デジタル活用はスピードが重要。また、ビジネスの変革には、現場の知識が欠かせない。こうしたことから、企業が自らシステムを開発する内製は、今後も加速するだろう。ワークフローや柔軟なデータ連携性を備え、簡単に高度なアプリケーションを開発できるHCL Voltは、そのニーズに対応する有力なツールとなるはずだ。