建設業界のデジタルトランスフォーメーションを支援

「電子申請とBIMデータ」の活用推進に取り組む日本ERI

日本ERI株式会社 阿部氏 関戸氏 堀江氏日本ERI株式会社 阿部氏 関戸氏 堀江氏

阿部 和子

日本ERI株式会社
確認検査本部BIM審査支援室 室長

関戸 有里

日本ERI株式会社
BIM推進センターセンター長

堀江 紀子

日本ERI株式会社
住宅評価本部評価企画部 部長

提供:日本ヒューレット・パッカード合同会社

日本では、あらゆる建築物を建築する際に遵守しなければならない基準が「建築基準法」に定められている。その建築基準法にもとづき、建築確認検査を行う機関として国土交通大臣の指定を受けるのが「指定確認検査機関」だ。民間企業で初めて指定確認検査機関の指定を受けた日本ERIは、20年以上にわたり建物の安全を守る第三者機関としての使命を果たしている。

そんな日本ERIがいま力を入れて推進しているのが「建設業界のデジタルトランスフォーメーション(DX)」だ。その一環として同社は、建築確認を中心としたさまざまな申請手続きの電子化とBIM(Building Information Modeling)データの活用を積極的に進めている。具体的にどのような施策に取り組んでいるのか、日本ERIの堀江紀子氏、阿部和子氏、関戸有里氏に聞いた。
(聞き手:日経BP総合研究所 イノベーションICTラボ 所長 大和田尚孝氏)

BIMデータの活用に挑戦する日本ERI

写真:堀江 紀子 氏

堀江 紀子

日本ERI株式会社
住宅評価本部 評価企画部 部長

住宅性能評価を取りまとめる住宅評価本部において、審査・検査に関するさまざまなツールの開発、システム化、効率化などを推進する。

写真:阿部 和子氏

阿部 和子

日本ERI株式会社
確認検査本部 BIM審査支援室 室長

建築確認申請におけるBIMデータ活用の推進役。大手ゼネコンやハウスメーカーで進むBIMデータ活用に対し、第三者機関目線で監修を手がける。

写真:関戸 有里 氏

関戸 有里

日本ERI株式会社
BIM推進センター センター長

「建築確認におけるBIM活用推進協議会」の事務局を務めるほか、他の指定確認検査機関と協働し、業界標準のBIM審査モデルの構築を推進する。

大和田 ここ数年、さまざまな業界・企業がデジタルトランスフォーメーション(DX)の取り組みを進めており、建設業界も例外ではありません。そんな建設業界のDXを強力に推進する日本ERIとは、どのような会社なのでしょうか。

関戸 日本ERIはERIホールディングス傘下でグループの中核をなす指定確認検査機関です。ERIグループは当社を含む建築確認・住宅性能評価機関4社をはじめ、既存建築物調査会社、建築・土木構造物調査会社、建築関連ソフト開発会社、建築関連教育・研修会社の合計8社で構成されており、グループ全体で800名以上の一級建築士、700名以上の確認検査員といった多数の有資格者を抱える技術者集団です。

 グループ中核会社の日本ERIは、2000年に民間企業として初めて建設大臣(現・国土交通大臣)から指定確認検査機関としての指定を受けた企業であり、建築物の審査や検査を行う専門的な第三者機関として業界をリードしてきました。現在は日本全国に34拠点を構え、一般住宅から大型の高層建築物まで幅広いサービスを提供しています。

 ちなみに、社名の由来は「E:評価(Evaluation)」「R:格付(Rating)」「I:検査(Inspection)」から来ています。

大和田 日本ERIはDX推進の一環としてBIMデータの活用に取り組んでいます。まずはBIMデータを活用するに至ったきっかけや背景をお聞かせください。

関戸 私がBIMデータの活用に注目したのは2015年のことです。当時の社内では、確認申請とBIMデータ活用を結びつけるという意識はなかったものの、経営陣はすでに将来を見据えてBIMデータ活用の重要性を強く認識していました。そうした当時の経営陣の後押しを受け、BIMデータの活用方法を模索するために2016年にBIMタスクフォースを設置し、BIMデータの活用に向けた取り組みを開始しました。

阿部 建設業界では設計者を中心にBIMデータの活用が進んでいますが、確認申請にBIMデータが活用される例はほとんどなく、当社のお客さまからも確認申請にBIMデータを使いたいという要望が寄せられていました。現段階ではBIMデータのモデルやルールが各社各様という課題もありますが、BIMデータのモデルやルールを業界標準として共通化しようという動きもあります。

BIMデータ活用に向けた取り組みとは

写真:大和田 尚孝 氏

大和田 尚孝

日経BP総合研究所
イノベーションICTラボ 所長

大和田 BIMデータの活用はどのような施策から取り組みを開始し、現在までにどのような進捗がありましたか。

関戸 審査は設計者が作成した図面や書類により確認するため、当社には設計業務で使用されるBIMについての知識がありませんでした。そのため、まず、BIMとは何かを勉強するところから始めました。BIMを勉強していくなかで非常に複雑でありながら、建物のデータベースを活用することで業務の効率化につながる可能性があることがわかり、まずは設計者とBIM導入の仕組みづくりに取り組みました。さらにBIMデータが確認申請に耐え得るだけの情報を備えているか、あるいは信頼性があるかといった検討も行いました。

 一方で、広く確認審査にBIMデータを活用するにはデータの標準化を推進する必要もあります。そこで、幅広いプレイヤーが結集して業界横断的にBIMデータの活用を進めるため、2019年に一般財団法人日本建築センターと当社が事務局を務める「建築確認におけるBIM活用推進協議会」が発足しました。現在もBIMビューアプロトタイプによる検討などが行われています。

阿部 BIM審査支援室では、大手ゼネコンや大手ハウスメーカーとの間で確認審査にBIMデータを活用する取り組みを進めています。各社と相談しながら、その企業に合った申請方法を検討・策定するところから始めました。そうしたなか、ある大手ハウスメーカーから当社の全国拠点に対してBIMデータを活用した確認申請を行いたいという話があり、各支店の審査担当者を対象に研修を実施して体制を整えながら、実績とノウハウを積み上げてきました。

 その結果、BIMデータを活用した確認申請の件数は着実に増えています。また、確認審査の現場でBIMデータ活用や遠隔検査の実証実験を実施し、技術的には実現可能であることも確認しました。

大和田 BIMデータの活用はまだ道半ばだと思いますが、今後に向けてどのような施策に取り組もうとしていますか。

関戸 建築確認におけるBIM活用は、これまでの検討成果から解決すべき課題やルール化すべき内容などの方向性が見えてきています。それは、まずBIMによる審査において参照する項目や内容を明確にして条件を定義し、その内容を視認できる仕組みを構築することです。その上でBIMの特長である建築物の属性情報の活用を進めれば、さらに利便性が向上すると考えられます。このようにBIMデータの活用の幅を着実に広げていけば、いずれ近い将来、設計者はBIMデータによる自動的な法適合チェックのもとで、より正確で確実な計画を進められ、諸手続きにおける設計者への手戻りが少なくなると思われます。私たち審査者にも、BIMデータによる自動的な法適合チェック後の情報をもとに審査が進められることとなり、より確実で効率的な審査による品質の向上と同時に、審査時間の短縮などで貢献できるものと思います。これからは電子申請と合わせて、誰もが広くBIMによる利便性を感じる仕組みづくりを進め、建築業界のDXに向けた動きにつながればと思っています。

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日本ERIが推進するDXとその成果

大和田 日本ERIではBIMデータの活用にとどまらず、さまざまなDX推進の取り組みを行っています。そうしたなか、業務を電子化する数多くのツールを自社開発したとのことですが、そこに至った経緯を教えてください。

堀江 当社はDX推進の一環として、いかに紙から脱却して電子化、ペーパーレス化を図っていくかという取り組みを進めてきました。これまで当社とお客さまとは紙でのやりとりを行っていました。例えば住宅性能評価申請においては、お客さまが申請書や図面を紙書類として作成し、そこに申請者や設計者が確認の押印をしたものが届きます。これらの紙書類をもとに審査を行うわけですが、問題点があればそれを指摘して、修正してもらってから再度提出といった流れを繰り返します。こうしたアナログなやりとりは、お客さまにとっても当社にとっても負荷の高い作業でした。

 書類に押印することでその原本性を担保する必要性から、なかなか電子化やペーパーレス化が進まないのが実情でした。ところが住宅性能評価については、2018年12月に一般社団法人住宅性能評価・表示協会より、押印された書面をPDFなどの電子データに変換したものなどで受理できることと整理されたことが電子化の契機となりました。それを受け、当社も審査・検査に関するさまざまなツールを自社開発し、電子化やペーパーレス化が進みました。また建築確認においても、2021年12月に国土交通省より書類の電子化とオンライン利用率を引き上げる基本計画が発表されています。

大和田 実際に開発したツールの概要をご紹介ください。また、これらのツールを開発したことにより、どのような成果が得られましたか。

堀江 具体的には、タブレットから図面表示・検査記録を実現する「InSpeedy(インスピーディ)」、申請図面データを安心・安全に送付・受領できる「電子申請受付Webシステム」、お客さまがオンラインで検査予約できる「検査予約システム」と社員が現場検査の調整を行う「スケジューラー」、申請図面データをチェックできる審査補助ツール「Edison(エジソン)」といったツールを開発しました。

 これらのツールの利用を促進したことにより、日本ERIでは戸建住宅性能評価における電子申請化率は現時点で95%以上に達するという成果が得られています。また建築確認申請においても、ERIグループ全体の電子申請率は2021年末時点で63%に及びます。これは「2025年度末までに50%以上」という国土交通省の建築確認申請における電子化目標がすでに達成されていることを示しています。

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サステナブルな社会への貢献

大和田 近年、サステナブル(持続可能性)に対する注目が集まっています。ERIグループでは、サステナブルな社会の実現に向けてどのような取り組みを進めていますか。

堀江 2050年のカーボンニュートラルに向け、日本でも脱炭素社会の実現に向けた取り組みが加速しています。建設業界でも、住宅を除く床面積300m²以上の建物を新築・増改築する際に「建築物エネルギー消費性能」の基準に対する適合、および適合性の判定(省エネ適合性判定)を受けることが義務づけられるなど、確認審査・検査の対象範囲が拡大の一途をたどっています。さらにSDGs(持続可能な開発目標)やESG(環境・社会・ガバナンス)への関心が高まり、BELS(建築物省エネルギー性能表示制度)やZEH(ネットゼロ エネルギーハウス)の認証を取得したグリーン住宅のニーズも急増しています。

 そうしたなか、ERIグループは業界で最も多くの省エネ適合性判定などを含んだ確認審査件数に対応し、そのほか住宅の省エネ性能をわかりやすくまとめたERIオリジナルの「住まいの燃費通信簿」を発行しています。また、省エネ適合性判定の有資格者を積極的に育成するなど、さまざまな分野からサステナブルな社会への貢献を果たしています。

建設業界のDX戦略を牽引する新基幹システム基盤に「HPEプラットフォーム」を採用

 日本ERIは、電子申請関連システムの基盤として日本ヒューレット・パッカードの「HPE ProLiantサーバー」を採用している。電子申請件数の急増によってシステム能力の向上が急務だった同社では、今後のDX戦略の基盤となる新基幹システムの構築を視野に入れながら最適なサーバー製品を比較検討。24時間×365日の連続稼働に耐え得る高信頼・高可用性、サーバー運用管理を効率化できる機能を備えたHPE製品を選定した。HPEサーバーがセキュリティーや予兆検知などの面で「世界標準の安心サーバー」であり、リモートでサーバー運用管理を可能にする「HPE integrated Lights-Out 5」(iLO)が搭載されていることが導入の決め手になったという。サーバーの調達にあたっては、取引先ベンダーと日本ヒューレット・パッカードの公式オンラインストアである「HPE DirectPlus」を利用したとのこと。現在は電子申請業務を支える申請関連システムや検査予約システム、保存図書管理システムといった各種システムが運用されている。さらに今後のDX戦略を見据え、処理の単純化・平準化にも取り組んでいる。

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