
化学品と機能素材メーカーの日鉄ケミカル&マテリアルは、社内ネットワークで発生する不具合の原因を明らかにするため、リバーベッドテクノロジーのAlluvio(アルビオ)NPM(Network Performance Monitoring)ツールを活用。それまで把握できなかった原因を突き止め、的確な対策を講じられるようになった。同社がICT環境のさらなる整備に向けて検討しているのが、リモートワーク時なども含めどのような環境でも個々の端末が快適な環境で業務できる環境を構築することだ。リバーベッドテクノロジーは「ユニファイド・オブザーバビリティ」ソリューションの提供で、そうしたニーズに応えようとしている。
頻発するネットワークのトラブル その原因を解明できなかった
日鉄ケミカル&マテリアルは、鉄以外の素材事業を一元的に担う日本製鉄グループの企業である。コールケミカル、化学品、機能樹脂・基板材料、ディスプレイ材料をはじめとする多様な事業を展開する同社は、国内に30、海外に5拠点を構え、管理するクライアント端末は全体で3000台以上に及ぶ。

日鉄ケミカル&マテリアル株式会社
IT企画推進部 マネジャー
近藤 万年氏
その運用・保守にあたるIT部門が悩まされていたのが、「通信速度が遅い」「つながりにくい」などネットワークに関連する社内ユーザーからのクレームが頻繁に寄せられることだった。「報告を受ける都度トラフィックグラフを確認するのですが、ネットワークの専任担当者ではない自分たちに把握できるのはただ混雑しているといった状況だけで、何が原因なのかまでは分かりませんでした」と同社の近藤 万年氏は語る。
原因を探ろうとパケットキャプチャツールを導入してみたが、すべての端末に仕掛けるわけにはいかず、取得したログの量が膨大で解析が容易ではないこともあって究明には至らなかった。システムを構築したベンダーに何度も相談したが決定的な解決策が見当たらず、コストのかかる帯域拡張を勧められるのが常だったという。
そこで近藤氏は、NPM(Network Performance Monitoring)ツールの活用を検討。複数のベンターの提案を比較して選定したのが、リバーベッドテクノロジー(以下、リバーベッド)が推奨するソリューションだった。決め手となったのは、「問題のありそうな箇所をリアルタイムに確認できる」「蓄積された過去のデータも参照できる」「操作が容易」といった要件を満たしたことだ。
「ネットワークをモニタリングするためのプロトコルとパケットキャプチャで取得したデータを一元的に解析できるのも便利で、問題がどこで起きているのかをスピーディーに把握できそうでした。同社のツールを使うのはこれが初めてでしたが、WAN最適化ソリューションとして評価の高い『SteelHead』を提供しているベンダーという信頼感もありました」と近藤氏は振り返る。
ネットワークを常時監視して不具合の要因をタイムリーに分析
Alluvio NPMツールの活用を開始すると、すぐに多くの導入効果が実感されたと近藤氏は言う。その1例が毎日0時に帯域が飽和するほどトラフィックが増大するという、以前から発生していた不可解な事象の原因が解明されたことだ。該当時間帯の通信を分析した結果、ウイルス定義ファイルの配信サーバーが最新の定義ファイルを取得して各端末に配信していることが判明。配信先ごとに少しずつ通信をずらすことで、帯域を超えないようにすることができた(図1)。

図1 帯域を超過する通信の発生要因を解明
毎日0時に帯域を使い切る通信が発生。原因が不明だったが、Alluvio NPMツールで分析した結果、サーバー向けのウイルスソフトの定義ファイルの配信が行われていたことが判明。分割配信させることで帯域を確保できた
別のケースでは、突発的にネットワーク帯域を使い切る通信が発生したが、特定の端末とサーバー間で膨大なデータがやり取りされていることが分かった。端末利用者に連絡したところ、業務用途で大量データのダウンロードを行っていることが明らかになったので、作業を影響の少ない時間に行ってもらうことで事なきを得た。
ネットワーク帯域が突然ひっ迫する事案を解決できた例はもう1つある。その場合はWindows Updateの配信最適化機能がONになっていたことが原因だった。数年前に同じ問題を経験したときは調査を依頼したベンダーが原因にたどり着くのに約1カ月も費やしたのに対し、Alluvio NPMツールを活用した今回は、過去の経験値も役立ち自分たちの手で、わずか2日で解決したという。
「以前はトラブルが自然に解消するのを待つことが多かったのですが、今は迅速に原因を特定して直ちに必要な対策を講じることができます。結果としてユーザーからのクレームが減り、トラブルへの対応に追われる時間も大幅に短縮されました」と語る近藤氏。同氏が次のステップとして見据えるのは、リモートワークの普及などによって必要性を増しつつある、個々の端末の状態をモニタリングする体制を整備することだ。
「また、オンライン会議ツールの利用拡大に伴って通信速度が遅く感じられることがありますが、その原因がどこにあるのかを明らかにし、SaaSサービスの帯域利用の効率化を図ることも今後の重要課題だと考えています」(近藤氏)
そうした観点から興味を抱いているのが、エンドデバイスの稼働状況やパフォーマンスを可視化するソリューションだ。リバーベッドのAlluvioなら共通のコンソールで利用できるため、「導入すればネットワークからクライアント端末まで効率的に管理できるようになるはず」と近藤氏は大きな期待を寄せている。
複雑化の一途をたどるICT環境 その健全性をいかに保つべきか

リバーベッドテクノロジー株式会社
代表執行役社長
佐々木 匡氏
Alluvio NPMツールを提供したリバーベッドの佐々木 匡氏は、近藤氏も注目するICT監視ソリューションに対する企業の関心がにわかに高まりつつあると指摘する。背景にあるのは、クラウド利用の拡大や在宅勤務の定着などによるICT環境の多様化・複雑化だ。IT部門の運用管理対象が拡がる中、全体の状況をリアルタイムに把握する必要が生じているのである。
「そこで私たちは、デジタルエクスペリエンスマネジメント(エンドユーザーエクスペリエンスマネジメント、アプリケーションパフォーマンスマネジメント)、ネットワークパフォーマンスマネジメント、インフラストラクチャーモニタリングの3機能を『ユニファイド・オブザーバビリティ』というコンセプトで括り、『Alluvio by Riverbed』のブランドでリリースしています(図2)。当社はこれまでITのパフォーマンスを高めるツールに軸足を置いてきましたが、今後はこうした可視化ツールを超えたユニファイド・オブザーバビリティ(統一された可観測性)のご提供にも注力する方針です」(佐々木氏)

図2 「Alluvio by Riverbed」のポートフォリオ
ICT環境の全体を監視・管理して「ユニファイド・オブザーバビリティ」を実現することは、企業の生産性と収益を向上させ、コストとリスクを低減させる
Alluvioが提供するユニファイド・オブザーバビリティ(統一された可観測性)は、従来の監視がサイロ化されている現状に対して、DX環境下のITシステム全体を把握することが可能となる。ユニファイド・オブザーバビリティは複雑なICT環境での障害が業務遂行に及ぼす影響を最小限にとどめて生産性を維持させるとともに、ICTの運用・保守コストを低減させる。一例として、リアル店舗に代わる顧客とやり取りをするコンタクトセンターが挙げられる。多様なビジネスアプリで問い合わせてくる顧客とのコミュニケーションに何らかの障害が起きることは、商機を逃すことに直結するからだ。
もちろん、Alluvioはあらゆる業界や業態に有用で、サイバーアタックを初期段階で見つけてBCP(事業継続計画)を支える役割まで果たすという。最近は多数のベンダーがオブザーバビリティ領域のサービスを拡充させようとしているが、Alluvioには明確な優位性があるとして、佐々木氏は次のように説明する。
「多くのサービスがデータをサンプリングして分析するのに対し、Alluvioは常時モニタリングし、複数のITデバイスの関連性も踏まえた状況分析をするため、不具合が生じた際の原因究明をより確実にし、次のアクションへの気づきを提供します。また、ハードウエアのみならず、PC上で稼働する様々なアプリケーションを監視できるのも特徴です」(佐々木氏)
本格的なアフターコロナを迎えれば、企業のDXが再び大きく加速するはずだ。ビジネスプロセスがデジタル化されればされるほど、それを支えるICTの健全性、強靭性、持続性を担保することが求められる。「ユニファイド・オブザーバビリティを実現することは、とりもなおさずDXをスムーズに進めることと同義です」と、佐々木氏はICT環境の統一された可観測性を高めることの重要性を語った。
Webセミナー開催!
ハイブリッドインフラを可視化、相互関係を認識する技術とは
IT全体にわたってデータ、インサイト(気づき)、次のアクションを集約することで、ユーザーにシームレスなデジタルエクスペリエンスを提供し、全社的なパフォーマンスを高める。ユニファイド・オブザーバビリティを実現する「Alluvio by Riverbedポートフォリオ」について解説。
- 日時 :2022年7月28日(木)14:00~14:30
形式 :オンラインセミナー
受講料:無料 - 詳細・申し込みはこちら