経営者・リーダーのためのデータ活用実践フォーラム ~ データドリブン経営への変革を目指して~ Review経営者・リーダーのためのデータ活用実践フォーラム ~ データドリブン経営への変革を目指して~ Review

デジタル時代のビジネスでは、「データ」が物を言う。多種多様なデータをいかに速く、深く利活用できるかが、データドリブン経営推進のカギを握るといえるだろう。ここで注目すべきは、経営者の意思決定や戦略方針策定に生かすといった活用法に加え、より小さな単位の改善に生かす動きも加速している点である。全体最適から個別最適へ――。まさにデータは、ビジネス全体にとって欠かせないものとなっている。このような潮流を踏まえ、日経クロステックが開催したのが本フォーラムだ。オンラインで開催された当日の模様を紹介する。

基調講演:アットホームラボ AI×ビッグデータで不動産の魅力を引き出す アットホームが推進する「不動産DX」とは特別講演:三井不動産 急成長中の法人向けシェアオフィス事業を支える データドリブンマーケティングとはDenodo Technologies 社内に散在するデータを仮想統合し データドリブン経営を成功に導くCloudera 第4の経営資源である「データ」を解放せよ データ駆動型イノベーションの方法論Dataiku “失敗しない”AIプロジェクトの進め方 自社に適したユースケース選定のコツは?Confluent Japan 価値創出に不可欠な「Data in Motion」活用 新時代のデータインフラのあるべき姿とはSCSK/インフォマティカ・ジャパン インテリジェントなデータカタログで ビジネス価値を最大限高める環境構築を

基調講演:アットホームラボ AI×ビッグデータで不動産の魅力を引き出す アットホームが推進する「不動産DX」とは

膨大なデータを不動産の魅力向上に生かす

アットホームラボ株式会社 執行役員 アドバンストテクノロジー部 部長 大武 義隆氏
アットホームラボ株式会社
執行役員
アドバンストテクノロジー部
部長
大武 義隆

現在の不動産業界は、不動産会社-消費者間の情報格差や慢性的な人手不足、IT化の立ち遅れなど、様々な課題に直面している。アットホームのグループ会社でデータ分析を手掛けるアットホームラボでは、AI×ビッグデータの活用によって、これら諸課題の解決を目指す取り組みを展開中だ。

「アットホームでは、物件情報や画像情報、アクセス情報、不動産会社情報など、不動産にかかわる大量のデータを保有しています。これらの分析・活用を通して、不動産会社の業務効率化や消費者の安心な住まい探しに貢献していくことが当社のミッションです」とアットホームラボの大武 義隆氏は説明する。

その具体的な取り組みとしては、まず「不適切画像チェック」が挙げられる。「不動産情報サイト アットホーム」には物件外観や周辺施設の画像が掲載されているが、そこに人の顔や自動車のナンバーなどが映り込んでしまうとトラブルの原因になりかねない。とはいえ、1カ月あたり1000万件以上にも上るデータをすべてチェックするのは至難の業だ。

そこで同社では、不動産会社が物件登録サイトにアップした画像をAIで自動的に解析する仕組みを構築。「もし、AIが人の顔などを検出した場合には、NG判定を行って自動的にモザイク加工を施します。また、AIだけで判別が困難な場合は、NG候補と判定して人によるチェックに回します」と大武氏は話す。

この結果、従来の1/4の人員で高精度な全件チェックを行うことが可能になり、プライバシーにかかわるトラブルなどを防止できるようになった。ちなみに、モザイク加工の件数は月間18万件にも達するという。「これを人手で処理すると約6000時間かかりますので、相当な業務負荷軽減にもつながっています」と大武氏は胸を張る。

課題が自然と集まりスピーディーに実行できる組織作りを

続いて2点目は「不適切コメントチェック」である。前述の不動産情報サイト アットホームには、不動産会社が物件をアピールするためのフリーコメント欄が設けられている。ここに不適切な単語が使われていないかチェックするのがこの取り組みの目的だ。

「従来のチェックシステムでは、コメント登録時にルールベースでのエラー制御を行っていました。しかしこの方法では、キーワードに引っかからないよう表現を変えるとすり抜けられてしまう。一方、AIを用いたとしても、すべての判定を任せるにはまだ精度面で不十分です。そこで、AIにNG候補を抽出させることで、運用の効率化・省力化を目指しました」と大武氏は話す。ここでは、月間約130万件のコメントの中から、NG候補を約5万件にまで絞り込むことに成功。その結果、人の目による全件チェックが実現できた。

同社では、このほかにも様々な取り組みを行っているが、大武氏はその経験を踏まえて「間違いを許容できること」がAI活用のポイントと説く。「AIは万能ではないので、漏れも誤判定もあります。しかしその特性さえ理解すれば、業務に有効に活用できます。当社では『AIと人とのハイブリッド運用』が重要と考えています」(大武氏)。

加えて、もう1つ大事なのが組織体制だ。同社はアットホームのデータ分析部門を母体として設立されたが、社内の一部門として活動していた時代は「他部署からなかなか相談が来ない」「承認フローが多く実行まで時間がかかる」などの課題を抱えていた。「しかし別会社となったことで、社内の各部門ともビジネスの関係になり、相談や提案が行いやすくなりました。また、所帯が小さくなったことで、分析・研究に専念できる環境が整い、様々なテーマに、よりスピーディーに取り組めるようになりました」と大武氏は振り返る。

このように、課題が自然と集まりスピード感を持って実行できる組織を創り上げることが、DX推進を成功に導くポイントといえるだろう。

特別講演:三井不動産 急成長中の法人向けシェアオフィス事業を支える データドリブンマーケティングとは

全国約140拠点、契約企業750社を超す事業に

三井不動産株式会社 ビルディング本部ワークスタイル推進部 主事 髙木 諒平氏
三井不動産株式会社
ビルディング本部ワークスタイル推進部
主事
髙木 諒平

テクノロジーを活用して不動産業そのものをイノベーションする――。三井不動産は長期経営方針「VISION 2025」に基づく新たな経営戦略の一貫として、法人向けシェアオフィス「ワークスタイリング」の展開に取り組んでいる。2017年4月に始まったワークスタイリングは、従量課金制で使えるオフィス施設を全国約140カ所に開設。契約企業750社、会員数20万人を超える事業に成長した。

「アフターコロナでも従業員全員がオフィスに出社する働き方に戻ることはないと考えています。オフィスと在宅、サテライトオフィスのベストミックスで、ワークライフバランスや生産性の向上を図る時代になっていくでしょう」と三井不動産の髙木 諒平氏は説明する。

急速な成長を遂げた同事業の推進力となったのが、データドリブンマーケティングだ。

「具体的には、データを活用し、『意思決定のスピード・質の向上』と『マーケティングの質の向上』という2つの観点から施策を展開しました」と三井不動産の矢倉 和雄氏は語る。

まず「意思決定のスピード・質の向上」では、データ活用基盤を構築・運用に着手した。ワークスタイリングの施設では、利用者がWebから個室や会議室を予約し、入退館時にQRコードを提示する。以前はそうしたデータをExcelで集計しており、分析にも多くの時間を要していた。データ活用基盤を導入したことでデータの収集が劇的に改善し、多様な観点から分析と深掘りが迅速に行えるようになった。

「従来は1週間分のデータの収集・加工・分析に1日ほどを要していましたが、約10分に短縮しました。仮説検証を何度も繰り返し行えるようになった上、分析ダッシュボードによってスキルを問わず誰でも簡単に分析できるようになり、お客様ニーズをいち早く察知したタイムリーな意思決定に貢献しています」と矢倉氏は言う。

その代表的な成果の1つが、2020年12月から始めた個室特化型サテライトオフィス「ワークスタイリングSOLO」である。

「コロナ禍の影響で、1人用個室の利用時間が1年前の300%に増えました。データ活用基盤の運用によって、この変化をいち早く捉え、会員様の居住エリアを中心に有効な出店地域を絞り込み、早期に新業態を立ち上げる判断ができたのです」と髙木氏は振り返る。

会員、企業向けの 2方向のマーケティングを展開

三井不動産株式会社 DX本部DX二部 技術主事 矢倉 和雄氏
三井不動産株式会社
DX本部DX二部 技術主事
矢倉 和雄

次に、「マーケティングの質の向上」では、BtoBtoE(会員向け)とBtoB(会員企業向け)の施策を充実。施設を継続利用してもらう取り組みにつなげている。

ワークスタイリングでは会員一人ひとりが、いつ・どこで・どのように利用したかのデータを蓄積している。そこで各人の行動エリアや働き方に合った提案を自動的に行うマーケティングオートメーションの仕組みを構築。普段使う施設の近隣エリアの施設、新しい設備を紹介し、会員一人ひとりによりよい働き方を提案している。

BtoBの施策では、契約企業の総務担当者の「自社従業員の働き方を深く知り、改善していきたい」といったニーズに応えた取り組みを強化。「施設の利用状況のデータを基に、従業員の方々の働き方に関するレポートを作成し、担当者の方と話し合いながら関係の強化に役立てています」と髙木氏は述べた。

データ/AIの活用を目的ではなく、経営戦略を実現する手段として実践する三井不動産。今後も働く人々のニーズをいち早くくみ取り、意思決定の仕組みを発展・進化させていく考えだ。働き方と働く場所を選ぶ新たな時代をつくる挑戦が続いていく。

Denodo Technologies 社内に散在するデータを仮想統合し データドリブン経営を成功に導くCloudera 第4の経営資源である「データ」を解放せよ データ駆動型イノベーションの方法論Dataiku “失敗しない”AIプロジェクトの進め方 自社に適したユースケース選定のコツは?Confluent Japan 価値創出に不可欠な「Data in Motion」活用 新時代のデータインフラのあるべき姿とはSCSK/インフォマティカ・ジャパン インテリジェントなデータカタログで ビジネス価値を最大限高める環境構築を