人工知能サミット 2021 〜AI活用は総論から各論へ、業種別に活用の勘所を探る〜 Review

金融機関をデータドリブン組織に変革 キーエンスの高収益を支えるデータ活用術

データ分析から得られた結果を、いかに成果の見込める具体策につなげていくか。これは多くの企業にとって共通した課題だといえるだろう。そうした中、企業のデータ分析支援において存在感を高めているのがキーエンスである。データの積極的な活用で高収益な企業体質をつくり上げてきたキーエンスでは、その独自のノウハウをソリューションとして提供している。同社の講演では金融機関を中心としたその実例が紹介された。

キーエンス流データ活用術のノウハウを提供

キーエンス データアナリティクス事業グループ 鈴木 辰弥氏
キーエンス
データアナリティクス事業グループ
鈴木 辰弥

1974年の設立以来、FA用センサーをはじめとする高付加価値商品を通じて、主に製造業の現場の生産性・品質向上に貢献してきたキーエンス。25万社以上の顧客を持ち、過去25年間、平均10%を超える成長を遂げ、50%を超える営業利益率を誇っている。その成長を支えているのがデータ活用にほかならない。その経験を基にビジネスユーザーがプログラムなしでデータからビジネス課題の因果を発見し、施策を見つけられるよう「KI」というソフトを自社開発し、科学的な経営に役立てきた。現在、KIはデータ活用ノウハウとともに金融機関をはじめ数百社の企業に提供している。

提供形態にも大きな特徴がある。単にツールとして提供するではなく、データを基に組織の生産性を高めるプログラムという形で提供しているのだ。具体的には、データ分析のソフトウエア「KI」と、キーエンスの担当データサイエンティストによるデータ活用の支援「カスタマーサクセス」の2つを掛け合わせて、データドリブンな組織の実現に向け、伴走支援している。

既に、みずほ銀行、中京銀行、京都中央信用金庫、沖縄県労働金庫をはじめとした銀行・信用金庫、SMBC日興証券、野村証券など証券会社、エムエスティー保険などの保険会社など、数十社以上の幅広い金融機関の企業を支援しているという。

有効な打ち手を発見するデータ分析ソフト

まず「KI」は、キーエンスのデータ活用のノウハウを凝縮したパッケージ化したソフトウエアだ。「このツールの利用に特別な専門知識は不要です。データから有用な知見を自動的に探し出すとともに、人間では思いつかないような分析の切り口(仮説)を網羅的に生成します」と鈴木氏は述べる。

ソフトウエアとしてのKIには大きく3つの特徴がある。1つ目は、データ分析の切り口を自動生成できること。KIはSFAやCRMなど金融機関内に蓄積されている多様な形式のデータを内部で統合する。その膨大なデータに対して機械学習を行うことで、膨大なパターンの特徴量を抽出し、課題解決の切り口を無数につくり出せるという。

2つ目は、効果の大きい順に優先度を付けた切り口を提示すること。生成された切り口は、統計的な観点から効果が順位付けされる。また、特定のテーマに沿って顧客をセグメントしたり、分析結果を施策につながりやすい形で表示したりすることも可能だ。

そして3つ目は、施策の改善効果を事前にシミュレーションできること。つまり、施策を実行する前にどの程度改善するのか、見込みを立てられるわけだ。単に効果があるかないかだけでなく、効果の大きさを事前に数値で把握できるので、どの打ち手を打つと効率がよいか、何にどの程度の予算をかければよいかを、誰でも合理的に判断可能となる。

これらの特徴を生かし、KIは様々な用途で活用されている。例えば投資信託や各種ローンなど個人向け金融商品を提案すべき顧客の分析もその1つだ。「お客様の入出金や過去の取引データ、属性データなどから各金融商品に対するニーズが高まるタイミングを分析し、優先度リストを生成することによって確度を高めていきます」と鈴木氏は語る。

また、業務改善に関する領域では、顧客の融資ニーズの変化、あるいは格付けの悪化といった予兆を財務データや口座の入出金の流れ、企業の属性のデータから読み取ることが可能だという。加えて渉外活動の履歴を分析することで、どの顧客にどれぐらいのリソースを割くべきかといった、営業プロセス最適化のためにもKIが活用されている。

さらに経営合理化の領域では、店舗の統廃合やATMの撤収にもKIが活用された例がある。「過去のATMの稼動状況から今後収益が伸びそうなATM、低下しそうなATMを切り分け、どれを撤収すべきかの判断をKIが支援しました」と鈴木氏は語る。

そのほか支店ごとの業績分析や計数作成の効率化・自動化、入社確率の高い学生に対するリクルーティング活動や入社後の適正分析といった戦略的な人事などにもKIは活用されており、優れた効果を発揮した事例は枚挙にいとまがない。

図1 データ分析ソフトウエア「KI」の概要

図1 データ分析ソフトウエア「KI」の概要

KIはデータを入れて、解決したいビジネス課題を選ぶだけで、有効な打ち手を見つけ出してくれるデータ分析ソフトウエアだ。優良顧客の特徴分析や優先すべき営業ターゲットの抽出など活用シーンは多岐にわたる

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経験豊富なデータサイエンティストが伴走

もう一方の「カスタマーサクセス」は、KIによるデータ活用を支援するプログラムだ。「各金融機関が既に保有しているデータの活用、今後に向けたデータ蓄積・活用の方針策定、さらには分析結果の活用から現場への定着化まで、一連の取り組みをトータルに支援させていただいています。その実現に向けて、金融業界の業務を熟知したデータサイエンティストを集めてサポートチームを編成しています。お客様がデータドリブンな組織を実現するまで伴走することが、このプログラムのミッションです」と鈴木氏は訴求する。

カスタマーサクセスでは、大まかには「導入前準備」「診断」「分析・実践」「振返り」というステップで進めていくが、分析を実践する前段階として、「KIスタータープログラム」を提供。キーエンス独自のノウハウを学べるeラーニングによる「データ分析育成支援」などを提供している。

このプログラムによって、まずユーザー側の基礎的スキルの底上げを図ったのち、続くデータ確認会を通じて「どういった課題に対してどのデータを適用できるか」といったデータ分析の基本方針を、キーエンスのデータサイエンティストとディスカッションしながら定めていくわけだ。

「このスタータープログラムを起点に課題の診断と解決策の立案、データ分析の実践、振返り支援とステップを進めていくとともに、データ分析の組織への定着化による効果をコミットしていくことが、カスタマーサクセスの最大の特徴です」と鈴木氏は語る。

こうした現場への浸透や効果の検証といった運用に特化したノウハウは、自らも事業会社としてデータ活用を推進し高収益を上げてきたキーエンスならではの強みといえるだろう。「当社でも本社部門と現場が緊密なコミュニケーションを取りながら、データドリブンで営業活動を動かしていくための取り組みを長年にわたって重ね、多くの失敗も経験しながらノウハウを身に付けてきました。だからこそデータ分析の結果がなかなか策につながっていかない金融機関の課題解決に寄与できていると自負しています」と鈴木氏は語る。

同社のソリューションを利用することで成果を上げた企業は数多い。京都中央信用金庫は、その一例だ。同社では、キーエンスのKIを導入。投資信託の購入や個人ローンを利用する可能性が高い顧客層は低い層と比べて契約率が約3倍になることを解明。この分析結果に基づいて優先度を付けた顧客に集中的にアプローチする施策を展開することで大きな成果を上げている。

今後もキーエンスでは、独自のノウハウを生かしたデータ分析やデータ人材育成をトータルにサポートし、企業がデータを成長につなげるためのアプローチとして提示していく考えだ。

図2 「カスタマーサクセス」の実行ステップ

図2 「カスタマーサクセス」の実行ステップ

金融業界の業務を熟知したデータサイエンティストの専任チームを編成。金融機関が既に保有しているデータの活用、今後に向けたデータ蓄積・活用の方針策定、データ分析の現場への定着化を通じて、データ活用人材の育成を一貫して支援する

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株式会社キーエンス データアナリティクス事業グループ
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