データ分析は、いまやあらゆるビジネス領域に欠かせないものとなっている。一方、高度なスキルを備えたデータサイエンティスト人材は潤沢にいないため、データの価値を十分引き出せていない企業は多い。重要なのは、知識やテクニックをツールで補完することで、ビジネス部門が自らデータを扱えるようにすることだ。データビークルの「dataDiver」は、「市民データサイエンティスト」が活躍するために不可欠なソリューションとして注目を集めている。
データ活用で、なかなか期待する成果を得られない。あの会社は成功しているのに、なぜうちはうまくいかないのか――。そんなもどかしさを感じている企業は少なくないだろう。これについて、データビークル代表の西内 啓氏は次のように指摘する。
「他社事例を参考にしすぎると、それが足かせになる場合があります。事例は往々にして都合のいい部分が強調されているため、過大評価につながりがちなことが理由の1つ。また、事例の成果はある時点のものなので、長期的には成功といえないケースも存在しています。そして、より重要なのは前提の違い。たとえ同業でも、強み/弱みや顧客層・ビジネス構造などはそれぞれ異なるので、事例をそのままなぞっても効果は出ないのです(図1)」
成果が都合よく表現されていることがあるほか、中長期的には成功といえないケースも少なくない。さらに、そもそも自社とは異なる前提を持つ企業の取り組みだということを認識する必要がある
それでは、企業はどのようにデータと向き合えばよいのか。西内氏が提案するのが、「リサーチデザイン」のアプローチを取り入れることだ。
もともと西内氏は、東京大学大学院を修了したのち同大学をはじめ複数の組織で研究者として活動。同時に、統計家/データサイエンティストとして企業・政府機関との取り組みを行ってきたデータの専門家でもある。
「リサーチデザインは問題解決の技法・思考法で、欧米の教育・研究機関、コンサルティング会社によって数十年前から提唱されているものです。どんなデータを集め、どのように分析したら、どんな結果が得られるのかという全体設計をはじめ、体系立てた考え方のエッセンスがここに集約されています」と西内氏は説明する。
このリサーチデザインが不十分だと、データ分析が無駄になってしまうこともある。日本の大学、そしてビジネス現場では、このリサーチデザインの視点が抜けがちで、そこがデータ活用で失敗しがちな遠因にもなっているという。
他社事例を参考にする前に、リサーチデザインのアプローチに基づき、データの収集・分析・活用で「自社が何を目指すのか」を設計する。これが肝心だというわけだ。
「大学で勉強するような難しい知識をすべて習得する必要はありません。コツは『何がどうなるとうれしいのか』をまず考えるということです」と西内氏。顧客を増やしたいのか、客単価をアップしたいのか、社員の生産性を上げたいのか。分析の目的となる「うれしいこと(アウトカム)」を定める。その分析結果から得られる成果を基準に、比較的実現しやすいこと、長期的に取り組むべきことを精査して取り組み内容を決めていくことが大切だという。
例えば飲食業なら、「継続的な利益増」が最もうれしいことだが、より短期的には、そこに至るまでの「認知度」「来店回数」「売上」「粗利」の向上を図ることが先決になる。このように、自社がデータ活用で叶えたいことが見えて初めて、どんな他社事例を参考にすべきかが見えてくるというわけだ。
「その上で、実際のデータ活用ではBIツールや統計ツール、AI・機械学習技術などを適材適所で使い分けながら、効率的に効果につなげていくことが大事です」と西内氏は言う。
実際にデータ活用を進める際は、「現場→データ蓄積→分析→意思決定」のサイクルを回すことがポイントになる。
「経営層、ビジネス部門、データサイエンティストが密に連動する必要がありますが、優秀なデータサイエンティスト人材は市場でも少ないため、多くの部分をビジネス人材が担うことになるでしょう。スムーズにサイクルを回すには、統計学やデータに関する高度な知見を必要としない仕組みが不可欠です」と西内氏は話す。そこでデータビークルは、誰もがデータ活用に携われる拡張アナリティクスツールとして「dataDiver」を提供している。
データサイエンティストが持つ高度なスキルをツール化することで、誰でも簡単にデータに基づく洞察が得られるようにする。具体的には、経営課題を入力し、プルダウンメニューから「何が」「どうなると」「うれしいか」を選択。あとは実行ボタンをクリックして待つだけで、求める答えが日本語で表示される仕組みだ(図2)。
経営課題を入力するだけで、分析結果を日本語で表示してくれる。データ分析の知識・経験がないビジネス部門担当者でも扱える点が大きな特長だ
「裏で多変量解析が実行されていますが、ユーザーが意識する必要はありません。『市民データサイエンティスト』の強い味方になるノーコードツールとして、多くの企業にご利用いただいています」と西内氏は紹介する。
高度なビジュアル機能によって結果をグラフで表示したり、1クリックで予測精度を表示したりすることも可能。「この顧客層にはどのくらいのリソースをかけてアプローチすべきか」「次に起こすべきアクションは」といったことを直感的に判断できる。
「顧客の行動分析、購買履歴の分析など、それほど難しくない分析業務が現場主導で行えるようになれば、データサイエンティストはより専門性の高い業務に集中できます。結果、組織全体のデータ活用レベルを底上げできるでしょう」と西内氏は述べる。
社内のデータ活用レベルを引き上げる支援サービスとしてオンラインで実施できるDX人材育成研修プログラムも提供。専門家がいなかったり、IT関連に多くのリソースを割けない企業は、これを活用することでスムーズにデータ活用を推進できるだろう。データ活用に重要なメタスキルである「リサーチデザイン」も、ここで学ぶことが可能だ。
「dataDiverを活用し、市民データサイエンティストを1人でも増やすことが、組織・ビジネスの変革につながっていくのです」(西内氏)。データ活用で成果を上げたい企業は、一度検討してみてはどうだろうか。