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次世代自動車向けセーフティーセンサー 4D イメージングレーダーを選ぶべき理由とは

ADAS(先進運転システム)や自動運転システムの進化とともに、センサー技術に求められる要求水準は高まり、開発における課題は増え続けている。イスラエルに拠点を置くVayyar Imaging(バヤー・イメージング)は、そうした従来型レーダーの課題に応える次世代型ソリューションとして、4Dイメージングレーダーを提供する。同社の自動車セクターをけん引するIan Podkamien氏に詳しく聞いた。
Ian Podkamien
Vayyar Imaging
VP and Head of Automotive

 近年、自動車向けセンサーの技術開発が急速に進んでいるが、完全自律運転車の実現には、まだ一つひとつ克服していかなければならない多くの課題がある。新しいインキャビンセンサー技術やADAS 技術の開発を重ねることで、真の自動運転車の実現に一歩ずつ近づくこととなるだろう。

 自動運転車への需要は高まる一方で、収益性の確保も求められる。高度なテクノロジーを取り入れながらコストを抑えるのは容易ではない。必要なテクノロジーを開発するための研究開発費だけでも、年間10億ドル近くかかるというデータもある。

 「世界の自動車業界では、厳しい競争が繰り広げられています。主要な自動車メーカーは商品の差別化を図り、機能の自動化や燃費性能で競い合っていますが、おそらく今後の主戦場となるのは安全性能です。自動車の安全性に関する法規制は多く、その内容も年々厳しくなっています」とPodkamien氏は語る。

法令遵守がすべてに優先する

 安全性能に対するニーズは各国で高まっている。国土交通省は、2020年9月1日以降の新型車には全座席にシートベルトリマインダー(SBR)の装着を義務化した。また、ユーロ圏およびASEANでは、2023年より高温の車内に幼児が置き去りにされる事故を防ぐ幼児置き去り検知(CPD)センサーが、新車評価プログラム(NCAP)での評価対象となった。

 加えて欧米圏の NCAP では、各種の自動緊急ブレーキ(AEB)機能が評価対象となっている。これには、前進時および後退時の自動ブレーキに加えて、側方から接近する車両の回避、交通弱者(VRU)の回避、交差点での対向車両との衝突回避を目的とした自動ブレーキが含まれる。さらに2023 年以降、前方衝突警報システム、自動操舵回避システム、レーンチェンジアシスト、アラウンドビューモニターも必須の安全装備に加えられる。自動車メーカー各社には、このような法規制の激しい変化に合わせた素早い対応が求められる。

センサーテクノロジーの比較

 「今後の開発計画を練る自動車メーカーが頭を悩ませているのは、自動車向けセンサーテクノロジーにおける本質的な限界です。特に安全性の要件を達成する上では顕著です。市場には様々なセンサーテクノロジーを搭載した製品がありますが、そのほとんどに何らかの欠点があります」(Podkamien氏)

 例えば、カメラや LiDARは、物体を検知して距離を測定できる効果的な技術だ。一般的には衝突防止を目的に使用され、高解像度の画像を取得し、複数の対象物を追跡できる。しかし光学的な手段を利用しているため、他の物体の背後にあるものを検知できない。天候や照度の状況が悪いと適切に機能しなくなる場合があるため、レンズに汚れや泥が付着すれば性能が大幅に低下する恐れもある。さらにプライバシー侵害の問題や、コスト面の観点からも、新たなテクノロジーに駆逐される可能性がある。

 他方、超音波センサーは安価だが、先進テクノロジーではないため、イメージングや対象物追跡に対応しない限定的なソリューションだ。一方で、2D レーダーは対象物の存在を検知してその方向、距離、速度を測定でき、しかもプライバシーの問題も回避できるソリューションとして、信頼性と拡張性に優れている。しかし、ごく少数の送信アンテナと受信アンテナで構成されることから、ビームの範囲が限定される。そのため、カバー範囲が狭く解像度も劣り、鮮明な画像を得ることができない。2D レーダーは角度分解能が低いため、ほとんどの場合、1 軸方向のみを注視することになり、複数の対象物が近接していると判別が困難になる。

 「安全基準が高度化し、業界全体でイノベーションを推進することが求められる中で、汎用性、信頼性、拡張性に優れたテクノロジーの必要性が増しています。 自動車業界が実現を目指しているのは、多くの機能を少数のセンサーに盛り込む多機能センサー技術ですが、カメラ、LiDAR、超音波センサー、2D レーダーには本質的な限界があり、ほとんどの場合 1 個のセンサーで 1 つの機能しか実現できません」とPodkamien氏は話す。

すべての問題を解決:4D イメージングレーダーのメリット

 そこでVayyar Imagingが提案するのが、4D イメージングレーダーだ。車両の走行中にコンピューターが人命に関わる判断を下すため必要な情報を取得でき、なおかつ直接的・間接的コストを大幅に削減できる、次世代型のレーダーテクノロジーである。

 「4D イメージングレーダーは従来型のレーダーソリューションと異なり、多入力・多出力(MIMO)アンテナアレイを利用して、周辺環境を高い解像度でマッピングできます。3D イメージング技術にドップラー解析を組み合わせることで、広視野角のポイントクラウドイメージングに速度という新たな次元を加えました。4D イメージングレーダーは、これまでに説明した各種センサーのすべての長所を備えながら、すべての短所を解消したテクノロジーです」(Podkamien氏)

 Podkamien氏は、4D イメージングレーダーのポイントとして以下の3点をあげる。

1.解像度:大型の MIMOアンテナアレイによって、静止または移動中の複数の対象物を同時に高い精度で検知し、追跡できる。車内センサーとして使用すると、乗員を検知して子供か大人かを判別し、その体勢と位置を検知して、バイタルサインを監視できる。

2.コストパフォーマンス:Vayyar Imagingのオンチップ 4D イメージングレーダーの価格は 2D レーダーとほぼ同じだが、データの解像度、精度の高さ、優れた機能性など、はるかに高い価値を備えている。理想的な価格性能比に加えて、実用的な拡張性、全体的な開発コストの削減、関連リスクの低減、市場投入までの時間短縮を実現する。

3.信頼性とプライバシー:光学系を持たないため、照度条件や気象条件の影響を受けることがない。4D イメージングレーダーは、車内の陰になった場所にいる乗員も高い信頼性で監視できる。ADAS や車両周辺の安全確保の用途では、夜間でも過酷な道路条件下でも、安定したパフォーマンスを発揮。さらに 4D イメージングレーダーは、自動車業界で重大な懸念になりつつあるプライバシーの問題が伴わない。

 「これら4D イメージングレーダーの特長を一言で表せば、『欠点がない』ということになります。イメージングレーダーの市場は年平均で20%近く成長しておりし、2027 年までに 212 億ドル規模に達すると見込まれています。4D イメージングレーダーは自動車向けセーフティーセンサーに最も適したテクノロジーとして、従来型レーダーのシェアを奪いつつあります」(Podkamien氏)

 Vayyar Imagingの複数の機能を搭載した統合型のソリューションは、自動車業界における安全性の主な課題の多くを解決する。短距離レーダー(SRR)から長距離レーダー(LRR)まで 1 個のチップで対応できる 4D イメージングレーダーは、車内と車外の両方のセンシングに対応し、CPD、拡張 SBR、自律運転車、ADAS など、幅広い用途に活用できる。

 最後にPodkamien氏は「世界の自動車メーカーにとって、インキャビンセンシングでも ADAS 用途でも比類のない機能性を発揮する 4D イメージングレーダーは、未来を切り開く理想のソリューションとなります」と語った。

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