日経 xTECH Special

畜産や交通、
食品加工など多様な分野で
ビジネスを質的に変える
DXを支援する

現在でもIT化があまり進んでいない分野は多い。しかし、そんな分野だからこそ、DXで大きな効果を発揮できることもある。畜産DXやスマートバス停などで、こうした取り組みを支援しているのがYEデジタルである。同社はデジタルの仕組みを構築するだけでなく、その効果を高めるための継続的な支援サービスも提供。顧客のビジネスを変えるDXの伴走者として、サービスやソリューションを磨き続けている。
インタビュアー:
日経BP 総合研究所 フェロー 桔梗原 富夫

飼料タンクの残量を自動で管理
畜産業界全体を効率化する

桔梗原 様々な産業分野でDXへの関心が高まっていますが、現状をどのように見ていますか。

産業持続性
SDGs達成貢献。

地域住民
てる
企業目指します

株式会社YEデジタル 代表取締役社長 遠藤 直人氏
株式会社YEデジタル
代表取締役社長
遠藤 直人
遠藤 私たちは、従来のIT化とDXには大きな違いがあると考えています。既存業務プロセスの効率化を目指すのがIT化だとすると、デジタル活用によって製品やサービス、ビジネスモデルの変革を目指すのがDXです。例えば、コミュニケーションのデジタル化。顧客や従業員とのコミュニケーション履歴を蓄積し、それを有効活用して新たな製品・サービスを作る。あるいは、働き方を劇的に変える。DXはビジネスに質的な変化をもたらし、結果として業績を大幅に高めることもできるでしょう。

桔梗原 ただ、DXを進めるにしても、業種業態や規模の違いなどもあって状況は千差万別です。

遠藤 大きく2つのタイプに分けることができます。1つは、製造業でいえば生産管理システムを導入するなど、一定のIT化を進めてきた企業。もう1つは、これまでほとんどIT化に取り組んでいなかった企業です。両方ともデジタルを有効活用することが可能ですが、私自身は後者の企業への期待が大きい。あまりIT化を進めていなかった企業がIT化を飛び越えてDXを実現すれば、その効果は大きいのではないかと思っています。

桔梗原 変革の度合いが大きいだけに、インパクトのあるDXになりそうですね。具体的な事例はありますか。

遠藤 畜産DXについて紹介しましょう。私たちが着目したのは、屋外に設置された飼料タンクの残量です。これまで畜産農家は飼料残量の確認に苦労してきました。タンクには小さなガラス窓がついているのですが、時間が経つと汚れなどからあまりよく見えなくなります。そこで、6~8メートルあるタンク上部に梯子で昇って上から中身を確認するのですが、最近は畜産農家の高齢化が進んでおり、高所での作業は危険です。そこで、飼料販売会社の担当者がタンクに昇るケースも多いようです。こうした課題を解決するために、当社は飼料タンク残量管理システム「Milfee」を提供しています(図)。 桔梗原 畜産とデジタルというと縁遠く感じられますが、具体的にどのようなものなのでしょうか。

遠藤 主なお客様は畜産農家と飼料販売会社です。センサーと通信機を組み込んだ装置をタンクに取り付けて残量を自動的に計測し、そのデータをクラウドに集約して可視化します。電池で約4年動くので、装置を電源につなぐ必要はありません。また、強力マグネットでタンクに取り付けるので、設置工事も不要です。残量データを飼料販売会社や飼料メーカーと共有することで、販売会社は「そろそろ追加の飼料が必要」といった判断ができますし、メーカーは計画的に生産ラインを準備することもできます。Milfeeによって、飼料の生産や調達、発注管理などの業務の自動化が可能で、畜産農家だけでなく、畜産業界全体の効率化に貢献できます。

バス事業の継続性を高め、
住民の“足”を守るスマートバス停

桔梗原 そもそも畜産に注目したきっかけはあったのですか。

遠藤 農業や畜産の動向は、以前から関心を持って見てきました。特に畜産における労働環境は厳しく、若者離れや高齢化といった課題は切実です。このままでは、国内の畜産業そのものが危機的な状況に至るでしょう。このような課題に対して、デジタルでできることは大きいはずです。例えば、畜産農家から食品加工、流通、小売店舗に至るサプライチェーンを可視化すれば、様々なムダをなくすとともに、食品トレーサビリティによって消費者の安心感を高めることもできます。畜産業の環境負荷低減、サステナビリティ向上にも寄与するでしょう。そうした未来を思い描きつつ、畜産DXに取り組んでいます。

桔梗原 若い世代を中心に、地球環境や社会の持続可能性などへの意識の高い消費者が年々増えています。その意味でも、将来性のある取り組みですね。

遠藤 もう1つご紹介したいのは、交通DXの事例です。人口が減少する中、特に地方の交通事業者にとって事業の存続は大きな課題。バス事業者は定期的に運行ダイヤを変更しますが、それに伴う負荷が無視できないものでした。深夜のうちに、すべてのバス停の時刻表を張り替えなければならないのです。年2回の定期停なダイヤ改正に加え、花火大会などのイベントに合わせて毎年10回程度の時刻表張り替えが発生しています。経営や利用者の利便性向上を考えると、利用状況に合わせて柔軟に時刻表を変更したいのですが、作業負荷を考えると頻繁にはできません。そこで、バス停表示をデジタル化する「MMsmartBusStop」をリリースしました。人海戦術で行っていた深夜の時刻表張り替え作業はセンター側のPCで一瞬にして完了します。

桔梗原 地域の“足”がなくなれば、住民にとっても死活問題です。バス事業の持続性向上にも寄与するわけですね。

遠藤 社会的な意義が評価されたからでしょう、ASPIC IoT・AI・クラウドアワード2021の総務大臣賞を受賞しました。現在、採用するバス事業者も増えています。このスマートバス停には繁華街向けや郊外向けなど、いくつかのタイプがあります。カラーの大画面でより多くの情報を載せられるもの、比較的小さな電子ペーパーを用いた白黒のものなど、場所の特性などによって選択できます。電源につなぐタイプだけでなく、電源が不要で太陽光発電や電池で動くタイプもあります。

AIを活用してフードロスを削減
効率化とともに品質向上を実現

遠藤 フードロス削減というテーマにも向き合っています。AI画像判定サービス「MMEye」を紹介しましょう。食品製造業にとって品質は大きなテーマです。どちらの企業も検査工程に力を注いでいらっしゃいますが、長時間の集中が必要な目視検査は、現場の大きな負担。MMEyeは目視検査を自動化して現場の負荷を軽減するとともに、AIの分析結果を前工程にフィードバックすることで原因特定を支援し、不良の発生そのものの低減に寄与いたします。効率化はもちろん、品質向上にもつながるソリューションとして、食品メーカーなどのお客様から高く評価されています。また、近ごろでは次第に「(判定後の)除去も自動化できないか」という声を多くいただくようになりました。MMEyeを導入した工場でも、除去作業は人手で行っていたからです。

桔梗原 検査だけでなく、取り除く作業も自動化したいということですね。

遠藤 食品製造業では対象物は大小、硬軟があるので、取り除くための機構設計は非常に難しい。いわば自動化の壁です。私たちは設立以来、製造業で培ってきた制御技術を保有していますので、機構との連携も得意です。また食品生産ラインのほかの工程にもこのAI画像判定技術を活用できないか、というお声もいただくようになりました。そこで、様々な検査の検証をお客様ご自身で行いやすいよう、AI画像判定機能と撮像環境をセットにした機材パッケージをご用意しました。「MMEye Package LAB.」です。畜産DXや交通DXにもいえることですが、私たちはコスト削減や狭い範囲の業務効率化にとどまらず、産業や業態そのものの持続性を高め発展を支援したいと考えています。あるいは、働く人たちや地域の住民の役に立ちたい。そんな気持ちで、DXソリューションの開発に取り組んでいます。
株式会社YEデジタル 代表取締役社長 遠藤 直人氏
桔梗原 冒頭、DXはビジネスに質的な変化をもたらすという話がありました。質的な変化を実現するには、それなりの時間もかかると思います。より短期間で、効果的な効果を実現するためにはどのような工夫が必要でしょうか。

遠藤 「仕組みを入れて終わり」という姿勢では、DXの成果を得るのは難しいでしょう。そこで、私たちはDX効果を生み出すための伴走支援サービスとしてITカスタマサービスセンター「Smart Service AQUA」(以下、AQUA)を提供しています。最初にサービス対象として選んだのはSAPです。グローバルで展開している企業グループでは、ある国ではSAPを使いこなしているのに、別の国ではあまり使われていないといったことがよくあります。そこで、当社がアセスメントを行い、活用マニュアル作り、トレーニングなどをサポートし、さらにアフターコンサルティングを実施してユーザーのステップアップを支援する。こうしたサイクルを回すことで、導入効果を高めることができます。最近は、AQUAのエンジニアがサポートする当社ソリューションも増えつつあります。

桔梗原 サブスクリプションサービスの場合は、ユーザーに継続して利用してもらうことが重要で、顧客に対する継続的なサポートは欠かせません。自前でサポート体制を構築することが難しい事業者にとっては助かりますね。

遠藤 すべて自前で対応するという時代ではありません。こうしたサポートサービスを活用することで、エンドユーザーの安心感や満足感を高めることができます。そうしたメリットを感じるお客様は増えており、AQUAを拡張する予定です。今後も様々な形で、DXを進めようとするお客様に寄り添っていきたいと考えています。
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