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ニッポンイノベーション ~10年後の産業を考える、ものづくり未来会議~ 福岡 9/12木

効率化と新たな事業創造のためにテクノロジーの積極活用を

人手不足、国内市場縮小、収益減少、ESG対応など、国内製造業を取り巻く様々な課題を解決するためのヒントを探るリアルイベント、「ニッポンイノベーション ~10年後の産業を考える、ものづくり未来会議~ 福岡」(主催:日経ものづくり、協賛:キャディ)が2024年9月12日に開催された。テクノロジーを積極活用して業務効率化や事業創造に取り組めば、ニッポンのものづくりの競争力は必ず甦る――。その活力をもらえる講演内容の一部を紹介する。

大阪、東京に続き、福岡で開催された今回のイベント。九州をはじめ、各地から参加した受講者でほぼ満席となった会場には、「自社が抱える課題をテクノロジーで解決したい」という強い期待を持った製造業関係者たちが集い、外の暑さに負けないほどの熱気に包まれていた。

1970年代からデジタル化を推進クルマづくり以外の領域にも拡大

1人目のスピーカーとして登壇したのは、マツダ 常務執行役員兼CIO(最高情報責任者)の木谷昭博氏。

木谷 昭博氏

マツダ
常務執行役員兼CIO(最高情報責任者)

木谷 昭博

「マツダの考える次世代のものづくりデジタル革新」と題し、開発・製造現場を中心とするデジタル化の歴史と、直近のDXの取り組みについて紹介した。

マツダがデジタル化に取り組んできた歴史は長く、今から半世紀以上も前の1972年に、3D CAD/CAMの研究をスタートさせている。「1982年ごろには、3D CAD/CAMを使って部品等の3次元設計を行うようになり、その設計データを使って金型を自動切削する技術の研究も始めました」(木谷氏)とのことから、かなり時代を先取りしていたことが分かる。

その流れを受けて、1996年には社長直轄の「マツダデジタルイノベーション(MDI)」プロジェクトがスタート。設計・製造にフル3Dのデジタルデータを活用することで、新モデルの開発から発売までの期間を10年で50%短縮するなど、圧倒的な効率化を実現した。

木谷氏は、「効率化にとどまらず、衝突シミュレーションの繰り返しによってクルマの安全性能を高めるなど、商品競争力を上げることにもデジタルを活用してきました」と明かす。

MDIプロジェクトは2007年に一旦終了するが、2016年に再スタート。クルマづくり以外の領域でも、デジタルの活用による価値創造に取り組んでいる。具体的には、SDV(機能や性能をソフトウェアで定義し、アップデートする自動車)のための大型ソフトウェア開発基盤の整備、グローバルなサプライチェーンやバリューチェーンにおけるデータ連携・活用基盤の整備、AI活用、ローコード開発ツールを利用した生産現場の自動化の推進などだ。

木谷氏は、「AI活用やローコード開発を促すため、デジタル人財の育成にも力を入れています。これからもデジタルとデータの力を存分に生かしながら、マツダの価値を高めていきたい」と語った。

データはただ貯めるだけでなく活用してこそ価値が生まれる

製造業向けにデジタルソリューションを提供するテクノロジー企業の立場から、ものづくり変革のヒントを提示したのはキャディ 共同創業者/最高技術責任者 CTOの小橋昭文氏である。

小橋 昭文氏

キャディ
共同創業者/最高技術責任者 CTO

小橋 昭文

「テクノロジーで切り拓く 製造業の課題と未来」と題する講演の冒頭で、小橋氏はまず、日本と他の主要国の製造業の現状を比較。「過去20年間で、中国の製造業のGDPは約8倍、米国やドイツも約1.5倍から2倍近く成長しているのに、日本の製造業のGDPだけは6%も縮小しています。中国でも人口減少が始まっていることを考えると、少子高齢化や生産年齢人口の減少は言い訳にできません。日本の製造業が成長力を取り戻すため、一人当たり付加価値をいかに上げるかが問われています」と問題提起した。

打開策として小橋氏が提言したのが、多くの日本の製造業が数十年にわたって蓄積した知見やノウハウの“資産化”だ。「一般に革新とは、過去に培ってきたものを打ち壊すディスラプション(破壊)だと捉えられがちですが、日本の製造業の場合、むしろ過去の積み重ねを活かす資産化の方が進めやすく、価値も生みやすいのです」と小橋氏は提言した。

具体的には、設計であれば、過去の類似図面を再活用する。品質不良対応では、過去の類似事例を参考するといったように、社内に蓄積された資産を活用すれば、同じことを何度も繰り返すことなく、スピードと品質を高めることができる。

このような知見の“資産化”のためにキャディが提供しているのが、製造業AIデータプラットフォーム「CADDi Drawer」だ。「ものづくりに関する文書や図面、写真などのあらゆるデータを構造化し、検索性を高めることによって、蓄積されたままのデータが、いつでもすぐに使える“資産”に変えられるソリューションです」と小橋氏は説明する。

小橋氏は、「データは、ただ貯めるだけでなく、活用してこそ価値を生み出すもの。ぜひそのための仕組みを採り入れていただきたい」と呼び掛けた。

売上高の50%以上が新商品自ら市場を創出する

イベントの最後に登壇したのは、アイリスオーヤマ会長の大山健太郎氏である。

大山 健太郎氏

アイリスオーヤマ
会長

大山 健太郎

「いかなる時代環境でも利益を出す仕組み」と題し、同社が時代の変化に対応しながら、どうやって60年間成長し続けることができたのかについて語った。

大山氏は、父の死に伴い、19歳でプラスチック加工メーカー(後のアイリスオーヤマ)を承継。一時はプラスチック製の水産・農業関連資材で国内トップシェアを握ったが、第1次オイルショックで商品が供給過剰となり、倒産寸前まで追い込まれた。

「プロダクトアウトのものづくりでは時代の変化に対応できないことを肌身で実感しました。その経験から、変化に翻弄されないためには、ユーザーインの発想で事業に臨むべきだという考えに至ったのです」と大山氏は明かした。

ユーザーインとは、まだ掘り起こされていない潜在需要を顕在化すること。すなわち「市場の創造」である。

CO2削減の動きに対応して、いち早くLED照明事業を立ち上げ、東日本大震災で苦しんでいる地元・宮城県のため、まったくノウハウのなかったコメの販売を始めて成功させたことなどが具体例だ。

「アイリスオーヤマでは、売上高に占める新商品の比率を5割以上とすることをKPIに設定しています。どんなに新しい商品を出しても、半年後にはコピー商品が出るもの。そこで戦い続けるのではなく、新しい生活者ニーズを次々と発見して、市場創造していくのが私たちのアプローチです」と大山氏は説明した。

アイリスオーヤマでは、地政学リスクなどを考慮して、2020年ごろから生産拠点の国内回帰も推進しているという。

日本のものづくりは、依然大きなポテンシャルを秘めている。そんな各登壇者たちのメッセージに勇気付けられ、ヒントに富むイベントであった。