商品売上の8割を占める
自動販売機の市場が年々減少
「ダイドーブレンド」を展開するダイドードリンコをはじめ、様々な事業会社を有するダイドーグループ。中でも中核事業である飲料事業のビジネスモデルはほかの飲料メーカーと比べてユニークだ。自動販売機による売上が、長年にわたり全体の8割以上を占めている。
「自販機と店頭販売の比率は2:8ぐらいが業界平均だと思います。一方、当社は事業開始当初から自販機にこだわり、8割という比率を戦略的に維持してきました。自販機は、自社の裁量で設置場所を検討したり、商品陳列を変えたりすることが可能です。そのため当社は『自販機は店舗である』という考え方のもと、ビジネスを展開しているのです」とダイドーグループホールディングスの髙松 富也氏は語る。

ダイドーグループホールディングス株式会社
代表取締役社長
髙松 富也氏
だが、コンビニの台頭などを背景に、自販機の主要設置場所である町の個人商店は減り続けている。国内の自販機総数も減少傾向にあり、そのことは当然、同グループにも大きなビジネスインパクトをもたらしていた。
「状況はゆっくり進んでいるものなので、社内にはまだそれほど危機感がありませんでした。私は、それこそが危険な状態だと感じ、何か手を打たなければと考えていました」と髙松氏は明かす。
チャレンジの重要性を説くとともに
組織改革も進める Cloud
そこで髙松氏は、2014年の社長就任以来、グループの事業を未来につなげる活動として社員の意識改革に取り組んでいる。具体的には、かねて掲げてきた「人と、社会と、共に喜び、共に栄える」という企業理念に、新たに「チャレンジ」の文言を追加。また、自らグループ企業の本社、支店などに赴き、現場社員と膝を突き合わせて対話することで、挑戦することの大切さを伝え続けている。いわばトップダウンとボトムアップの両方で、組織内のチャレンジングスピリット醸成に努めているわけだ。
DX人材の育成、各種施策の実行によって変革を推進するための新たな組織体制も整備した。2022年1月には持株会社のダイドーグループホールディングスに「ビジネスイノベーショングループ」を設置。システムグループと連携して、全社のDXをけん引していく体制とした。
「DX施策の立案・実践を担う『DXエバンジェリスト』を複数名、ビジネスサイドから選出しています」と髙松氏は続ける。このDXエバンジェリストが中心となって、各現場部門のオペレーションの改善や効率化、新規ビジネスプロジェクトの立ち上げなどを推進・マネジメントする。同時に、現場側には「DX推進担当」を育成し、部署ごとの課題解決やデジタル活用の浸透を加速していくという(図1)。
図1 ダイドーグループのDX推進体制

DX施策立案・マネジメントの主体となるDXエバンジェリストが、現場業務のノウハウを有するDX推進担当と連携しながら取り組みを進める。一連の取り組みを、ビジネスイノベーショングループやITパートナーが後方支援する
2024年7月現在、DXエバンジェリストは28名、DX推進担当者は10名が配備されている。まずはグループのコア事業である飲料事業で業務改革を推進し、そこで一定の成果を上げた上で、経験・ノウハウを全社へ横展開していく狙いだ。
多彩なアプリを簡単に開発できる
kintoneを採用
もちろん、DX推進に向けてはデジタル技術を活用することが欠かせない。組織内で生まれた新たなビジネスアイデアや、業務効率化に向けた取り組みを加速するツールとして同社が採用したのが、サイボウズの業務アプリ構築クラウドサービス「kintone」である。
「そもそものきっかけは、長く利用してきたワークフローシステムが刷新の時期を迎えたことでした。ワークフローの仕組み以外のことにも使えるツールがよいと考え、多彩な業務アプリ開発機能を備えたkintoneを採用することにしました」とビジネスイノベーショングループの竹重 美咲氏は話す。

ダイドーグループホールディングス株式会社
経営戦略部
ビジネスイノベーショングループ
シニアマネージャー
竹重 美咲氏
このkintoneが、DXエバンジェリストを中心としたDX推進にも大いに役立っている。前述の通り、もともと同社のDXエバンジェリストはビジネスサイドから選出された人材であり、高度なIT知識やプログラム開発スキルは有していない。一方、kintoneがあれば、思いついたアイデアや業務効率化のための仕組みを、ノーコードで“とりあえずつくってみる”ことが可能になる。
「また、kintoneが手元にあることで、見つけた課題を『デジタルを使って解決できないか』と考える力が養われたようにも思います。DXに不可欠な、デジタル起点の発想力の土台になっています」と髙松氏は言う。
2時間かかっていた見積書作成作業が
わずか「5分」に
kintone導入から約1年、既に多くのアプリの開発が進んでいる。「現在開発中のものを合わせて、約390のアプリが社内で稼働しています」とビジネスイノベーショングループの堀井 昇平氏は語る。新たなワークフローの仕組みを筆頭に、人事・総務領域の申請・承認プロセスを支援するアプリなど、現場の業務効率化を図るアプリが多くを占めているという。

ダイドーグループホールディングス株式会社
経営戦略部
ビジネスイノベーショングループ
マネージャー
堀井 昇平氏
一例が見積書作成アプリだ。ダイドードリンコで海外事業を担当するセクションの担当者は、これまで国・地域ごとに異なる通貨や商品名などを手作業でExcelに入力して見積書を作成してきた。この煩雑な作業を自動化するものだ。
「見積書作成に必要な情報を抽出し、フォームの所定の位置に入力した上で、言語やフォーマットを必要な形に変換し出力するという一連の作業を大幅に効率化できています。以前は2時間ほどかかっていた見積書作成作業を5分で終えられるようになりました」(堀井氏)。生まれた時間を、戦略立案などの業務に充てられるようになっている。
もう1つが、消費者からの商品に関する問い合わせ情報や指摘内容を社員間で共有する「ご指摘品管理アプリ」である。商品に対する問い合わせや指摘があった際は、いかに迅速に対応するかが企業イメージを左右する要因になる。従来はExcelをベースにメール・電話で関係者が情報を共有し、対応していたが、どうしても情報共有の抜け・漏れや対応の遅れが起こりがちだったという。
「そこで、お問い合わせ内容や調査に必要な関連資料などをkintone上のデータベースで一元管理し、関係者が随時参照できるようにしました。同時に、対応の進捗ややり取りもアプリ上に集約し、いつでも状況を追えるようにしています」と堀井氏。このアプリによって、対応完了までの時間を従来の半分程度に短縮できているという。
「紹介したアプリは、いずれもシステム開発経験ゼロのDXエバンジェリストが簡単なハンズオン研修を受けたのち自ら開発したものです。この研修はサイボウズの支援の下、ビジネスイノベーショングループが実施しました。アプリの開発にかかった期間も3カ月程度で、非常にスピーディーに課題解決につなぐことができました」と竹重氏は述べる(図2)。
図2 「ご指摘品管理アプリ」のイメージ

いずれも、特別なITスキルを持たないDXのエバンジェリストがノーコード・ローコードツールのメリットを生かして開発した
このようなkintoneの活用も1つの起爆剤となって、ダイドーグループにおけるDXは順調に進捗している。「DXを進める上で大切なのは、あくまでも業務現場が主体的に取り組みを実践することです。その意味でも、今後は現場のDX推進担当をどんどん増やしていく予定です」と髙松氏。この「現場主体のDX」に向けて、高度なIT知識がなくてもアプリ開発に携われるkintoneが強力な武器になることは間違いないだろう。ダイドーグループの取り組みに引き続き注目だ。


