
DXの進展に伴い重要性が増しているデータ。生成AIの台頭もこの流れを、急速に加速しつつある。ここで重要な役割を果たすと期待されているのが、柔軟性の高いミッドレンジストレージだ。このような状況の中、デル・テクノロジーズは2024年5月に開催された「Dell Technologies World(DTW) 2024」において、「PowerStore Prime」を発表した。最新ミッドレンジストレージは、何が強化され、利用企業にどんなメリットをもたらすのか。ここでその中身について徹底解剖してみたい。

Dell PowerStore(以下、PowerStore)は、デルとEMCが合併してから初めてゼロベースで設計された、ミッドレンジのフルフラッシュ型ストレージシリーズだ。「データ中心型の設計」「インテリジェントな自動化」「適応性の高いアーキテクチャー」というコンセプトのもと、2020年5月に最初のモデルと、それらを動かすストレージOS「PowerStoreOS 1.0」を発表。その後4年を経て、“PRIME”という総合オファリングと共に今回バージョン4.0を発表した。この発表からはエンタープライズクラスのミッドレンジストレージの“本流”を確立するデル・テクノロジーズの意気込みが感じられる。
「これはデル・テクノロジーズ史上、最も速いスピードで成長を続けているストレージプラットフォームです」と語るのは、デル・テクノロジーズの森山 輝彦氏。安全かつ安定的にスケールできる製品を提供することで、「破壊的」ともいえるデータ爆発に対応してきたのだという。
デル・テクノロジーズ株式会社
SPS事業本部 システム本部 ディレクター
森山 輝彦氏
「既に数万台/5エクサバイト以上の出荷実績があり、フォーチュン500(全米上位500社)の企業のうち90%のお客様でご利用いただいております。またNPS業界別ベンチマーク調査でも、『使いやすさ』『イノベーション』『ロードマップの信頼性』で1位を獲得。年間最優秀製品賞もこれまで5回受賞しています。パートナーからの評判も良く、多くがパートナー経由での販売となっています」(森山氏)
このように市場から高く評価されているPowerStoreだが、2024年5月にはさらなる進歩を遂げることとなった。ストレージOSが大幅に拡張され、「Power StoreOS 4.0」へとメジャーバージョンアップしたからだ。
「このバージョンアップによって、PowerStoreはストレージに必要な機能をすべて網羅した製品になりました。DXへの取り組みやAI活用などに、安心してストレスなく使えるデータインフラへと進化したのです。これまでも自信を持ってPowerStoreをご提供してきましたが、これによってデル・テクノロジーズの自信はさらに強固なものになっています」と森山氏は胸を張る。
それではPowerStore 4.0は、どのような進化を遂げ、いかなる機能を網羅しているのか。以下ではその内容を見ていきたい。

まずはPowerStore 4.0の全体像を見ていこう。まず注目したいのが、パフォーマンスの強化である。ソフトウエアアルゴリズムの見直し・改善によって、IOPSを30%向上させ、レイテンシーも20%改善している。
「パフォーマンスでもう1つ重要なのが、XCOPYの高速化です」と指摘するのは、デル・テクノロジーズの水落 健一氏だ。ここでいう「XCOPY」とは、VMware ESXiにおける仮想マシンのクローン作成を、vSphereリソースで行うのではなくストレージアレイにオフロードする機能。その実行速度が約40%高速化されたという。
デル・テクノロジーズ株式会社
ストレージ・プラットフォーム・ソリューション・システム本部
スペシャリストSE
水落 健一氏
またソフトウエア処理の改善でハードウエア能力の余力が大きくなった結果、取得できるスナップショット数(3倍)や、ボリューム(2.5倍)も増大。さらに、接続可能なホスト数は2倍、VLAN数は8倍、レプリケーションボリュームも8倍に増えた。
「ソフトウエアだけでもこれだけのパフォーマンス向上を達成していますが、ハードウエアのアップグレードも組み合わせれば、さらに処理能力を高めることができます」と水落氏。これを可能にするのがPowerStore 4.0で可能になった、新たな「データインプレース ハードウェア アップグレード」だ。
「これまでのアップグレードは、第1世代モデルから第2世代モデルへとアップグレードできる、というものでした。それがPowerStore 4.0からは同一世代(第2世代)での上位モデルへとアップグレードすることも可能になりました。1つ上のモデルにアップグレードすれば、ハードウエア性能は6~7割向上し、ブロックボリューム数は6割、スナップショット数は4割増加します。もちろんこの場合でも、既存のシャーシやドライブを維持しながら、サービスを中断することなくアップグレード可能です」(水落氏)
同一世代の上位モデルへのアップグレードを選択できるようになったことによって、
ソフトウエアによるパフォーマンス向上に加え、ハードウエアによる処理能力向上も享受できる

次に注目したいのが、データ格納の効率性が向上したことだ。PowerStoreではこれまでもデータ重複排除と圧縮によって、「4:1」のデータ削減が可能だった。PowerStore 4.0ではデータ削減技術のインテリジェント性をより強化し、データ削減効果を最大20%高めている。
「新しいデータ圧縮ロジックにより多様なデータ型に適応できるようにし、かつドライブ領域の最適化を図ったことにより、全体的なデータ密度を最大28%向上させることが可能になりました。これに伴いデル・テクノロジーズでは、『5:1』のデータ削減保証をスタート。これは業界でも最高レベルの保証だといえます」(水落氏)
このような効率性向上は、同じ物理容量に対してより多くのデータを格納できることを意味する。同じ量のデータをより少ない物理容量で格納できるのであれば、論理容量あたりの消費電力も同様に削減できる。また、どの程度のデータ削減効果が得られているのかを、可視化する機能も装備。これにより、論理的なデータ量、実際に使用している物理容量、そしてデータ削減効果を、グラフによって直感的に把握することが可能だ。
意図しないデータ格納も把握できるため、ランサムウエア感染の検知に役立てることも可能だという
「この画面でデータ削減可能な容量やデータ削減不可能な容量も分かり、これにもとづく容量増強計画を行うことで、ストレージ容量が不足するリスクを回避できます。また意図しないデータ格納も把握できるため、ランサムウエア感染の検知に役立てる、といった使い方も考えられます」(水落氏)
効率的な重複排除と圧縮によって必要な物理容量が削減されれば、当然ながらコスト削減も可能になる。このようなコスト削減のニーズへの対応をさらに推し進めるため、今回は新たなハードウエアモデルの発表も行われている。それが、ストレージメディアに「QLC(Quad Level Cell)フラッシュ」を採用した「PowerStore 3200Q」だ。
1つのメモリセルに4ビット格納できるフラッシュを採用することで、従来モデルに比べて容量単価をさらに削減可能だ
これまでのPowerStoreでは、ストレージメディアとして「TLC(Triple Level Cell)」を採用してきた。これは1つのメモリセルに3ビットのデータを格納できるというもの。これに対してQLCでは、1つのメモリセルに4ビットのデータを格納することが可能になった。つまり、同じ容量のデータをより少ないメモリセルに格納することで、容量単価を削減できるわけだ。
「PowerStore 3200Qは11ドライブの最小構成でスタートでき、インテリジェントな自己構成型で5.9PBeまで拡張できます。クラスター構成にした場合には、最大23PBeまで容量を増大でき、ほかの任意のモデルと混在したクラスターやレプリケーションも構成可能です。QLCで低コスト化を実現しながらも、TLCモデルと同等のパフォーマンスと、業界屈指の柔軟性を実現しています」と水落氏は述べる。

これらに加え、レプリケーションに関する強化も行われている。まず、従来はVMwareのみのサポートだった「Metroボリューム同期」が、Microsoft WindowsとLinuxにも対応。また新たに「同期レプリケーション」も追加された。
Metroボリューム同期がMicrosoft WindowsやLinuxでも利用できるようになり、同期レプリケーションも可能になった
データ保護ポリシーは「ローカル・スナップショット」「リモートへの同期レプリケーション」「リモートへの非同期レプリケーション」「リモート・バックアップ」「クラウドへのリモート・バックアップ」の5種類から選択可能。これらのポリシーは管理画面上で、任意のボリュームまたはボリュームグループに対して設定でき、いったん作成されたポリシー設定をほかのボリューム/ボリュームグループで再利用することも可能だ。なおStorege DirectとはPowerStoreOS 3.5で追加された機能で、PowerProtect DataDomainとの連携によってバックアップやリストアを行う、というものだ。クラウドへのバックアップに加え、クラウド連携をより柔軟に実行するためのオンプレミスからクラウド間のライブマイグレーション機能もリリースされた。
「QoSポリシー」が新機能として追加されたことも見逃せない。これは、PowerStoreにアクセスするクライアントごとに、パフォーマンスや帯域幅の上限を正確に設定できるというもの。これによって、特定のクライアントが過剰なアクセスを行うことでほかのクライアントに影響を与えてしまう「ノイジーネイバー」シナリオを排除できるのだ。またパフォーマンスや帯域幅を低く抑えられたクライアントに対し、一時的に発生する突発的な利用を容認するバーストモードを設定する機能も、オプションとして用意されている。
「このほかにも、他社製品を含む任意のストレージアレイからわずか10クリックでデータを移行できる『ユニバーサル ブロック インポート』や、管理画面から生成AIへの質問を行える『Dell APEX AIOps AIアシスタント』も実装されました。このように、これまで部分的に不足していた機能をすべて実装し、できないことがなくなった上に、これまでの長所がさらに強化されているのです」(水落氏)

ここまでPowerStore 4.0の強化ポイントについて見てきたが、今回のリリースで注目すべきなのはそれだけではない。「PowerStore Prime」を構成するもう1つの要素として各種プログラムやパートナーエコシステムが発表されたことも非常に重要なポイントだ。
「PowerStore Primeとは『PowerStore 4.0を含む統合オファリング』としての総称です。PowerStoreというストレージ製品に、ビジネス上のメリットをもたらす投資保護のための各種プログラムと、パートナーと共につくり上げているエコシステムからの支援を、融合させたものです」森山氏は説明する。
製品の提供に加え、投資保護のための各種プログラムと、パートナー各社の支援も融合することで、顧客のビジネス上のメリットを最大化している
投資保護のための重要プログラムの1つが「Lifecycle Extension with ProSupport/ProSupport Plus」だ。これはエキスパートによる24時間365日体制のサポートサービス、専任のテクニカルアドバイザーによる年次コンサルティング、上位モデルや次世代アプライアンスへのアップグレードやスケールアウト、容量拡張サポートプログラム、およびデータ削減保証プログラムなどのFuture Proof プログラムで構成されている。要するにPowerStoreで構成されたデータインフラを、継続的かつシンプルにモダナイズできるプログラム、という位置付けだ。
また「Dell APEXサブスクリプション」も、ビジネス面で大きなメリットをもたらすプログラムだ。これによって利用企業は、製品を「購入」するのではなく、使った分だけ支払うことが可能になる。つまり初期投資を抑制し、コストの最適化を図れるわけだ。
またエコシステムからの支援では、パートナー各社の専門知識の活用や、カスタマイズされたシステム統合、パートナー独自のソリューションなどの利用が可能。PowerStoreは以前からパートナー経由での販売が多い製品だったが「PowerStore 4.0の登場によって、パートナーからは『もう他社製品と比べる必要はなくなった、PowerStore一択でもよいのでないか』と言われるようになりました」と森山氏は話す。
このようにPowerStoreは、テクノロジーや機能面での高い優位性があるだけではなく、ビジネス面でも数多くのメリットを持つ「死角なき」ストレージ製品になったといえるだろう。日本企業のDX推進やAI活用のデータインフラとして、これまで以上の貢献を果たすことになりそうだ。
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