
Meta社が2024年7月にリリースした「Llama 3.1」。パラメーター数が4000億を超えるこのモデルは、企業における生成AI活用のゲームチェンジャーとして、大きな注目を集めている。Llamaはオープンソースとして提供されており、商用利用も可能であるため、大規模なLLMを使ったユースケースをオンプレミスで実現できるからだ。それではそのポテンシャルを最大限に引き出すには、どのような取り組みが必要なのか。Meta社のパートナーである、デル・テクノロジーズのキーパーソンに話を聞いた。

デル・テクノロジーズ株式会社
グローバル・GenAIコンサルティングサービス
アドバイザリーコンサルタント
木田 祐介氏
様々なサービスやプロダクトが登場し、急激な進化を遂げる生成AI。最近では企業利用でのポテンシャルが高い生成AIとして、Meta Llama(以下、Llama)に注目が集まっている。
LlamaとはFacebookなどを運営するMeta社が開発し、商用利用可能な「完全オープンソース」として提供されているLLM(大規模言語モデル)。最初のバージョンは2023年2月に発表され、この段階では商用利用ができなかったが、小型かつ高性能なAIモデルとして注目されていた。
その後、2023年7月にはオープンソース化された「Llama 2」、2024年4月には、80億パラメーター数を持つ「8B」と、700億パラメーターを持つ「70B」の2モデルで、「Llama 3」が登場している。
「このように矢継ぎ早にバージョンアップされてきたLlamaですが、2024年7月にはさらに強力なモデルがリリースされました」とデル・テクノロジーズで生成AIに関するアドバイザリーコンサルタントを務める木田 祐介氏は話す。
「Llama 3がLlama 3.1へとバージョンアップされ『405B』というモデルが追加されたのです。これはLlama 3に比べて5.8倍のパラメーターサイズを持ち、Llama 3に比べて16倍の128k(12万8000トークン)という、長いコンテキストを扱うことが可能になっています。また幅広い種類のタスクにおいて、ほかのモデルと同等以上のパフォーマンスも達成しています」(木田氏)
2024年7月に登場した「Llama 3.1」はパラメーターサイズが4050億となっており、12万8000トークンのコンテキストを扱うことが可能になった
Llamaは英語を中心に学習したモデルではあるが、オープンソースかつ商用利用が可能であり、急ピッチで進化を続けていることから、これをベースに日本語に特化したLLMを構築する日本企業も数多く登場している。またこの特徴は、企業が「自社固有のユースケース」を実現する上で、大きなインパクトをもたらすと期待されている。

「ネット上の情報をベースにした一般的な回答を得るのではなく、自社固有の情報をベースにした回答を得るには、社内データでファインチューニングを行うか、RAGの実装が必要になります」と木田氏。社内データの中には社外に持ち出せない機微情報も少なくないため、業務で本格的に生成AIを活用するには、オンプレミスでの活用を視野に入れる必要があるわけだ。
その点、Llamaはモデル自体をダウンロードできるため、オンプレミスで利用できる。また以前は、オープンソースで提供されているモデルにはサイズの小さいものしかなく、実現できるユースケースも限られていたが、Llama 3.1の登場でその制約もなくなった。4050億パラメーターのモデルは非常に表現能力が高く、ベンチマークでもGPT-4oなどに比べて遜色のない結果を出しているからだ。
つまりLlama 3.1を活用すれば、これまで実現が難しかった様々なユースケースを、オンプレミスに実装できることになる。加えてPoCレベルで「試してみる」だけであれば、実装のハードルは決して高いものではないという。
「例えばRAGを使った社内チャットボットを構築する場合、社内情報をベクトル化した上で、Pythonで数十行のコードを書くだけで実現できます。Llamaやそのほかのオープンソースの技術を組み合わせることで、簡単に実装できるのです」(木田氏)
追加で記述すべきPythonコードは、わずか数10行程度で済む
既にデル・テクノロジーズ社内では800を超える生成AIのユースケースを洗い出し、実際に「Code Llama」を活用したコーディング支援や社内チャットボットなどのユースケースで生成AIの活用を始めている。しかし、PoCレベルで構築した仕組みを、実業務での利用に耐え得るレベルにまで引き上げるのは、乗り越えるべきハードルもある。
「生成AIを業務に適用するには、多岐にわたる要素を検討しなければなりません。そのためには生成AIに関する豊富な知識と経験が必要になりますが、AIエンジニアがいない企業でこれを行うのは、かなり困難な作業になるといえるでしょう」(木田氏)

AI活用に向けてこうしたハードルを取り除くため、デル・テクノロジーズでは生成AI活用に関するエンド・ツー・エンドのサービスを提供している。
「デル・テクノロジーズというとハードウエアの会社だと思われがちですが、800を超えるユースケースを通じて、生成AIに関する膨大な社内知見を持っています。その知見を基に、お客様の生成AI活用のサポートを展開しています」と話すのは、デル・テクノロジーズの池田 司氏だ。
提供しているサービス内容は、「戦略策定」から「データの準備」、「生成AIプラットフォームの構築」、「モデルの導入とテスト」、「運用と拡張」まで、実に幅広い。検討から実運用に至るまで、隙間なくすべてのフェーズをカバーしていることが分かる。
戦略策定から運用・拡張まで、エンド・ツー・エンドの支援を受けられる。
これが可能なのは、デル・テクノロジーズ自身が社内で数多くのユースケースに取り組んできた経験があるからだ
デル・テクノロジーズ株式会社
サービスビジネス営業統括本部
サービスプリセールス本部
コンサルティング アドバイザリー
ソリューション プリンシパル
池田 司氏
「ここで重要なのは、まず戦略をしっかりと策定することです。多くの企業はPoCからスタートする傾向がありますが、そのアプローチは必ずしも適切ではありません。まずはステークホルダー間での調整を行いながら、自社で優先すべきユースケースやロードマップを、戦略的に決めていくべきです。これを事前に行っておかないと、声の大きい部署のユースケースや、簡単に実現できるユースケースばかりが優先されてしまい、その後の展開に支障をきたす危険性が高くなるからです」(池田氏)

それでは具体的に、どのように戦略策定を進めていくべきなのか。池田氏は、社内で考えうるユースケースをすべて洗い出し、それらを「ビジネスバリュー」と「実現可能性」の2軸でマッピングした上で、優先順位をつけていくことが重要だという。
まず2軸でユースケースをマッピングし、優先順位をつけ、それらをクラスタリングし、データの準備状況を評価した上で、戦略とロードマップを策定する
「デル・テクノロジーズでも数多くのユースケースが立案されましたが、それらをまずこの2軸で評価・マッピングしていきました。その結果、『ビジネスバリュー』と『実現可能性』の高いものが、明確になっていったのです。ビジネスバリューの低いものは当然ながら優先順位が低く、実現可能性の低いものは成功の確率が下がるため、これも後回しすべきです。このような観点からユースケースを評価していけば、企業として実現すべきユースケースがどれなのか、誰の目から見ても明らかになり、ステークホルダー間の調整も容易になります。なお、デル・テクノロジーズではこのようなマップを自動生成するツールも用意しています」(池田氏)
次に行うべきことは、優先順位の高いユースケースを、各々の特性に着目してグルーピング(クラスタリング)していくことだ。類似性の高いユースケースが複数あれば、そのうち1つを実現できれば、ほかのユースケースの実現も容易になるからだ。これによって最小限の時間と労力で、より多くのユースケースを実装できるようになる。
「実際にデル・テクノロジーズが優先すべきユースケースも、最終的に5種類に集約されました。ここまで絞り込むことができれば、その後の取り組み方もシンプルになります」(木田氏)
ここまで行った上で、社内のデータ準備状況を評価し、生成AI戦略とロードマップを作成していく。ここでもう1つ重要なのが「第三者の目」を導入しておくことだと池田氏。直接的な利害関係のない第三者が参画することで、より客観的かつ定量的な評価が行いやすくなるからだ。
生成AI戦略をここまで明確にしておくことで、その後のフェーズを円滑に進めやすくなる

このように戦略策定を行った後も、デル・テクノロジーズは顧客ニーズに応じてそれ以降のフェーズでも伴走していくという。
「データの準備」では、生成AI向けのデータ戦略を策定するため、社内にあるデータの種類や内容、ロケーションなどを明確化し、データアクセス方法やセキュリティー、ガバナンスなどの実現方法を検討。さらに、それらのデータを活用するモデルも、この段階で選択しておくことが肝要だ。
「生成AIプラットフォームの構築」では、デル・テクノロジーズで検証済みのフルスタックソリューションを実装。これは、ハードウエア基盤からその運用管理の仕組み、AIOpsなどのプラットフォーム、生成AIフレームワーク、さらにはその上で動くユースケースまでカバーしたものだ。そして「モデルの導入とテスト」では、チューニング済みのモデルを提供するほか、オンプレミスでのRAG実装なども支援する。
これらのフェーズを円滑に進めていく上で重要なのが、「どのようなユースケースを実現していくのか」が俯瞰できる状態になっていること。つまり戦略立案をしっかり行っているからこそ、準備すべきデータや生成AI基盤の構成、使用すべきモデルも、はっきりと分かるわけだ。その結果、過不足のないロードマップを描くことができ、過剰な投資を行ってしまうことや、後でデータやリソースが足りないといった事態を回避できる。
さらに「運用・拡張フェーズ」では、AIを活用した生産性・効率性の向上も支援。AI運用をシンプルにするマネージドサービスの提供や、デル・テクノロジーズの技術者が客先に常駐する「レジデンシーサービス」も用意している。
もう1つ注目したいのが、人材育成の支援も積極的に展開している点だ。「デル・テクノロジーズはNVIDIAと共同で、生成AIに関する業界初の資格認定を行っています。そのためのスキルを得るためのトレーニングも、既に20年以上にわたって展開してきた『デル・ラーニング』の一環として提供しています」と池田氏は語る。
戦略からそれ以降のフェーズも含め、こうしたサポートを必要に応じて利用すれば、生成AI活用を実務レベルに引き上げ、そこから継続的に価値を生み出していくことも容易になるだろう。
関連記事