AIプロジェクト/PoC実施後の実装は通常の倍以上

最前線の企業が語る

導入と活用のリアル

世界的に急速に拡大している生成AIの利用。しかし、日本国内では、その活用がまだ他国ほど進んでいない。AI技術の進化に伴い、生成AIがビジネスの現場でどのように役立ち、いかに業務の効率化や新たな価値創造に貢献するのか。AI技術の先進企業である株式会社ACES代表の田村 浩一郎氏と、デル・テクノロジーズ株式会社の生成AIコンサルタント山下 智彦氏が、生成AIの現状とその可能性について語り合った。

アルゴリズムを用いて事業を開発するACES

山下 ACES社の概要、そしてAI事業についてお聞かせください。

株式会社ACES
代表取締役/CEO
田村 浩一郎氏東京大学松尾研究室発のベンチャー。松尾研究室は、生成AIの基礎研究から社会への応用や実装に注力する研究室として知られる。田村氏は、創業後も研究室に在籍し、一昨年、博士課程を修了するまで経営と研究の両立を続けていた

田村 当社は、創薬や自動運転といった先端分野に特化するのではなく、日常業務に役立つAIに注力しています。サービスは大きくDX支援とプロダクト開発に分かれ、企業のDX推進で得た知見を自社プロダクトに反映し、業界の多様なニーズにお応えしています。

株式会社ACES
代表取締役/CEO
田村 浩一郎氏東京大学松尾研究室発のベンチャー。松尾研究室は、生成AIの基礎研究から社会への応用や実装に注力する研究室として知られる。田村氏は、創業後も研究室に在籍し、一昨年、博士課程を修了するまで経営と研究の両立を続けていた

例えば、損害保険会社の新規事業チームと協力し、中古車オークション事業の立ち上げに伴走しました。ベテランの査定士が確認していた車両の状態や損傷箇所の査定をAIで効率化し、移動せずに最適な価格を提示できるという仕組みです。

以前に比べて高収益と移動コストの削減、価格精度の向上を実現しており、このAIオークション事業は市場で成功を収めております。

AIプロジェクトのPoC実施後の実装率は87%

ACESのサービスの提供先は、保険、金融、小売、スポーツ、そして中央官公庁など、業界をまたいで幅広い。この多彩な活動によって、ACESは、多くの成果を上げてきた。たとえば、一般的なDXプロジェクトでは、PoC(概念実証 / Proof of Concept)で終了するケースが多く、実装段階に進むのはわずか43%に対し、同社が手がけるプロジェクトでは、87%が実装段階に到達している。

ACESが掲げるコンセプト「エキスパートAI」がもたらす競争力

山下 社名のACES(エーシーズ)は、「エースの集まりだがエリートではない」という意味だと伺いました。

田村 営業でもエンジニアでも、自分が何のエースなのかをはっきりさせようと話しています。お互いの専門性・強みを尊重して、それぞれがプライドを持とうと。そして互いにプロフェッショナルとしての成果を求めていこうということですね。

山下 さきほどの例、ベテラン査定士の技術をAIで効率化したケースにも通じますね。

田村 我々の主力事業は、人とAIが協働する次世代のビジネスプロセスの構築です。特に、AI開発において重視しているのが「エキスパートAI」という概念です。私はよく、ChatGPTを「優秀な新卒」と表現しています。学業に秀でた彼らに議事録を任せ、柔軟な発想を期待して壁打ち相手にすることがありますが、このような役割をChatGPTに期待する場面も多い。しかし、優秀な新卒社員が企業の競争優位性をつくるわけではなく、本当に付加価値の高い業務は、むしろベテランが担っていると考えています。ACESは、ベテラン、つまりエキスパートこそが競争力を生む源泉であると捉え、「エキスパートAI」の開発に注力しています。

優秀な新卒(生成AI)と、エキスパートAIの違い

生成AIの業務活用は「AIが業務に介入できるように」すること

山下 社内ではどのように生成AIを活用されていますか。

田村 ビジネスプロセスに関するすべてのドキュメントは、AIでも読めるように落とし込んでいます。

例えば、当社の開発チームは、AIモジュールやデータ基盤を活用して、近未来に向けた汎用的なAIソフトウェアを開発しています。その後、プロダクト事業やサービス事業を通じ、セミオーダーやSaaSとして提供するのですが、このプロセスは、Mermaid(マーメイド)記法で表現されています。テキストベースの内容が図として表示されるので、人間にもAIにも分かりやすくなっています。

開発プロセスを可視化したイメージ図(サンプル)。AIも人間も両方が理解しやすいMermaid(マーメイド)記法を用いて、ビジネスプロセスに関するドキュメントを整理

田村 プロセス設計や重要な意思決定は人間が担当し、コーディングの多くはAIの支援を受けて進めています。結果として、初期設計からテスト、修正まで、人間とAIが協力して作業を行うことで、開発の生産性は大幅に向上しています。

山下 さすがに想像以上にハイレベルですね。

田村 ここまでやるのか、というほど徹底しています。

生成AIの活用は、同社のマーケティングやセールスチームにおいても重要な役割を果たす。とくに営業は、「社内でもACES meetを活用する」と、田村氏が続ける。

田村 当社のプロダクト「ACES Meet」は、商談内容の文字起こしから、要約・解析が可能なサービスです。商談結果を分析し、成功要因と失敗要因を体系的に理解するのに役立つのですが、特に失注分析に重点を置き、なぜ失敗したのかを深く掘り下げることができます。同時に、過去の成功事例を集約し、再現性のある勝ちパターンを見つけ、次のプロジェクトに活かすことも可能です。

田村 ビジネスプロセスは、仕事、タスクの連なりであり、インプットとアウトプットを繋げていくことです。我々ホワイトカラーの業務は、何か物を動かすわけでも作るわけでもなく、情報を生み出すことだと思っています。

ChatGPTの個人的な活用法は、「巨人の肩に乗る」こと

山下 個人としては、どのように活用されていますか。

田村 私の大事な仕事の一つとして「育つ言葉をつくること」があります。企業理念もスーッと頭に入る言葉に置き換え、社員が自分の言葉で話せるようになるまで磨きます。個人では色々な場面で生成AIを活用していますが、この言葉を磨く過程でも、生成AIを積極的に活用しています。

「巨人の肩に乗る」という考えのもと、ゼロから発明するのではなく、人類が積み重ねてきた叡智を土台にすることを大切にしています。そこで、まず生成AIを通じて、人間が蓄積してきた知見や専門知識を引き出します。その基盤の上に、私たちならではの独自の視点を重ね、言葉を磨き上げます。

具体的には、社内文書や戦略立案時に使用する重要な言葉についても、ChatGPTと約50回の対話を重ねながら、最適な表現を決めています。

※ 「巨人の肩に乗る」または「巨人の肩に立つ」は、過去の研究や知識を基盤に新たな価値を生み出すというアカデミアの考え方。先人たちの成果があるからこそ、より深い理解や発展が可能になるとされている。

デル・テクノロジーズは、生成AIの業務活用を包括的に支援

ACESのように、生成AIを先進的に使いこなす企業がある一方、何から手を付けていいかわからないという企業も少なくない。「巨人の肩に乗る」という意味では、多くの企業のインフラを支えるデル・テクノロジーズと、同社における生成AIへの取り組みへと話題が進んだ。

田村 デル・テクノロジーズは、AIや生成AIについてどのような事業を展開されていますか?

デル・テクノロジーズ株式会社
サービスビジネス営業統括本部
サービスプリセールス本部
コンサルティング アドバイザリー
ソリューション プリンシパル
山下 智彦氏大学卒業後、信託銀行に勤務。2018年にニューヨーク駐在中、米銀が金融トレーダーをデータサイエンティストに置き換える様子を目の当たりにし、AIやデータサイエンスのコンサルタントに転向。現在に至るまで、その分野のエキスパートとして活躍している。

山下 デル・テクノロジーズというと、サーバーやストレージ、PCを販売する会社を思い浮かべるかもしれません。もちろん、製品に付随するサービスも提供していますが、ハードウェアとは独立した、中立的なコンサルティングサービスも展開しています。

デル・テクノロジーズ株式会社
サービスビジネス営業統括本部
サービスプリセールス本部
コンサルティング アドバイザリー
ソリューション プリンシパル
山下 智彦氏大学卒業後、信託銀行に勤務。2018年にニューヨーク駐在中、米銀が金融トレーダーをデータサイエンティストに置き換える様子を目の当たりにし、AIやデータサイエンスのコンサルタントに転向。現在に至るまで、その分野のエキスパートとして活躍している。

私が所属するプリセールス部隊は、AI・生成AI、データ利活用、マルチクラウド、モダンワークフォース、レジリエンシー&セキュリティの5つの領域をカバーしています。その中で、お客様から寄せられるAIや生成AIに関する課題解決を包括的に支援するのが私の役割です。

デル・テクノロジーズの強みは、AIや生成AIの課題解決を、戦略の確立、データの準備、プラットフォームの導入、モデルの評価と改善、運用&スケールの5つのステップをEnd to Endで提供できる点にあります。

AIおよび生成AIの業務活用支援や関連する課題解決について、End to Endでサービスを提供するコンサルティングファームは少なくない。しかし、現実的には、実務に裏打ちされた知見と経験がものをいう。生成AIのプラットフォーム提供からモデルの展開、運用、スケールに至るまで、包括的なサポートが重要だからだ。さらに、デル・テクノロジーズはGPUaaS(GPU-as-a-Service)の基盤構築をサポートしており、生成AIを使ったサービスの普及をインフラ面で支えることができる。

山下氏は、「AIを実際に活用するには、外に出せないデータに対応する基盤技術が必要になる。AIを活用する基盤構築を、マルチクラウドでオンプレとクラウドを適切に使い分けながら、実装までサポートできること。ここが私たちの強み」と語る。加えて、デル・テクノロジーズの強みは、グローバル企業という点でも発揮される。「生成AIの活用方法をグローバルで共有していて、その中から、日本のお客様に最適な活用方法をご紹介している」と山下氏は続けた。

責任あるAIの活用をデル・テクノロジーズは支援している

生成AIを活用したビジネス拡大や生産性向上は、多くの企業にとって重要なテーマだ。しかし、実装にあたっては、コンプライアンスやセキュリティに配慮した「責任あるAI」の視点が欠かせない。

田村 セキュリティの論点は、AIに特有のことではありません。システムやデータ運用におけるセキュリティの重要性と同様です。同時に、AIがアクセスできる情報や、AIに誰がアクセスできるかといった、アクセシビリティも重要です。セキュリティを強化すればアクセスが制限され、逆にアクセスを容易にするとセキュリティリスクが増します。

山下 生成AIの進化のスピードをふまえれば、気にしすぎると競争に負けてしまいます。デル・テクノロジーズは、セキュリティに配慮したインフラの実装実績に加え、世界各国の規制に対応した責任あるAIに関する豊富な知見を持っています。これにより、AIおよび生成AIの活用においても、バランスの取れた攻守両面のサービス提供が可能です。

生成AIによる業務効率化のために

生成AIの活用が、有用であることは間違いない。まずは ChatGPTやCopilotなどの生成AIを日常に取り入れ、気軽に使ってみることが第一歩となる。一方で「使ってみよう」と促す段階は、まだテクノロジーや使い勝手に改善の余地があることを示しており、利用者に不安要素が残っている証拠でもある。これらの課題が解決されれば、さらに多くの人々が生成AIを安心して活用できるようになるだろう。

この課題を克服するため、AIを業務に組み込み活用しているACESや、インフラからサービス提供まで、生成AI基盤に強みを持つデル・テクノロジーズに相談してみてはどうだろうか。

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