日本初開催のフォーミュラEでも注目 - 自動車業界が挑む電動化とリサイクル対応を素材の技術革新で支援

フォーミュラEで高効率な素材開発を実践

ダウは、包装やインフラ、コンシューマーなど、幅広い応用分野に向けて樹脂素材など多種多様な技術を提供する総合化学メーカーである。その内、自動車用素材は同社の売上高の約1割を占めており、「MobilityScience™」と呼ぶチームで、内装から外装、パワートレインまで、車両を構成する多様な部材に向けた素材を開発・提供している。そこで現在、同社が特に注力しているのが、電動化や循環型社会への適応を加速し、効果を高めるための素材技術の革新である。

たとえ電動化と循環型社会への適応に必要な技術であっても、自動車の性能や品質、安全性を損なうものであっては導入できない。課題解決と価値創出を両立させる技術を迅速に開発し実車導入するためには、「OEMと部品のサプライヤー、そして私たち素材メーカーのコラボレーションによる、自動車のライフサイクルを通じたサステナビリティの実現。リサイクル性に重視した部品設計およびバリューチェーンを越えたコラボレーションが必須であると同時に、これを支えるアジャイルな技術開発が欠かせません。ダウは、新たな性能要件や、世界各国政府によりますます厳格化する環境関連規制、そして人々からの期待に応えるために不可欠な新素材イノベーションの開発において、自動車業界を積極的に支援しています」とペンライス氏は強調する(図1)。

図1
図1
ライフサイクルを通じたサステナビリティを実現する素材を提案
信頼性、性能、快適性、安全性を実現しながら、できる限り省資源で材料を生産。自動車業界と協力し、使用時、耐久性および役目を終えたあとのリサイクル性をも考慮した設計を行う。

例えば、EV用バッテリーの構成部材に向けた素材には、エネルギー効率や安全性、信頼性を最大化する新機能や、高性能で高品質な新素材が必要だ。そして、熱マネジメントやパワートレインの効率化、耐久性やアセンブリの改善など、新素材の潜在能力を引き出す部品や完成車の開発を同時並行的に進める必要がある。

また、循環型社会に適応するためには、これまでの生産・消費形態に最適化してきた設計・生産技術を刷新する必要がある。自動車には多様な樹脂が使われている。ユースケースと要求特性に応じて最適化したリサイクル技術を、いかに適切かつ迅速に開発できるかが重要だ。

ダウは、次世代EVに投入する新技術のテストベッドとして、要求性能のハードルが特に高く、継続的な技術の改善が求められるモータースポーツの舞台に挑んでいる(図2)。フォーミュラEのマシンには、最先端の電動化技術やリサイクル技術が投入される。EV自体が進化途上であることから、新技術投入による性能改善の余地は大きい。新素材を含めた新技術をここで積極投入し、迅速な検証・改善を進める高効率な技術開発で、文字通り日進月歩の改善作業を行っている。

図2
図2
チーム公式マテリアルサイエンスパートナーとしてジャガーTCSレーシングを支援
市販するEVへの導入に先駆けて、電動化やリサイクルに向けた新技術をフォーミュラEの場に積極導入。そこでの過酷な利用条件と厳しい要求に応える素材開発を通じて、より高性能で信頼性、安全性の高い技術へとブラッシュアップしている。

従来、素材開発には数年、ともすれば10年単位の期間を要し、アジャイルな技術開発など思いもよらないことだった。「最新のデータ解析技術やデータサイエンスの活用による効果的で効率的な開発、ロボティクスの積極活用による実験の無人化と24時間操業化、ハイスループットの実験・検査装置の導入活用による実験時間の短縮などが、スピーディーな素材開発を可能にしました。こうした体制の下に生まれ、フォーミュラEの場で磨いた技術は、将来市販するEVにも投入していく予定です」とペンライス氏は言う。

革新を後押しする新技術を包括供給

全世界の部品サプライヤーやOEMに向けて、ダウは接着剤やシーラント、フォーム、エラストマー、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂、フルイドなど多岐にわたる自動車用素材を提供している。利用シーンや要求仕様に応じて、課題解決や価値創造に必要な複数素材を組み合わせて特性を擦り合わせ、包括的に供給できる点が強みであり、電動化や循環型社会への適応という、素材レベルからの作り込みが求められる時代に向けた車両開発で効果を発揮するだろう。

さらに同社は、世界中の各市場の要求に合った素材を開発し、安定供給する能力を持つグローバル企業である。世界の4大陸にまたがる10カ国に合計12カ所のイノベーションセンターを置き、自動車業界における素材レベルからの技術革新を支援している。また、日本を含む31カ国に98の製造拠点を保有しており、世界中のいかなる地域に向けても、同等品質、同等特性の製品を、世界各地の拠点から提供できる。

「有力な自動車メーカーが多く存在し市場も巨大な日本をはじめとするアジア太平洋地域は、戦略的重要性の高い地域です。この地域のお客様を徹底的にサポートできる体制を整え、自動車業界でのイノベーションを後押ししていきます」とペンライス氏は語る。

自動車業界は、電動化やリサイクルの実践と次世代車の価値向上、および未来の社会を担う自動車をより多く、より広く、より早く普及させる挑戦をしている。ダウが提供する素材レベルからのアジャイルな開発体制とグローバルな供給体制は、その挑戦を後押しし、支援する必要不可欠な力となることだろう。