関連するすべての情報をデジタル化し企業の経営やビジネスに生かすデータ駆動型経営に、あらゆる企業が取り組んでいる。データの重要性はますます高まり、データサイエンティストに代表されるデータ活用人材がいかに活躍できるかが、企業の未来を左右する時代となった。日経クロステックでは、データ活用人材を継続的に育成し、最前線で活躍できる組織体制やシステム基盤を整えるソリューションを紹介するセミナーを開催した。

AIは「作る力」より「活用する力」

AI(人工知能)が当たり前の日常になったときに活躍できる人材の提供を目指し、武蔵野大学はデータサイエンスやAIの基礎科目を全学必修とするとともに、2021年度から「AI副専攻」コースを開講している。今後、あらゆる仕事でAI人材が必要になるという予測から、既存学部での専門知識と併せて学ぶことのできる副専攻の形をとった。

プログラミングによってAIシステムを「作る」力よりも、利用者視点からAIを「使いこなす」力の修得を重視する。文系学生も多く学ぶ。基調講演に登壇した同大学の林 浩一氏は、「修了すれば入社1年後の社員と同等の即戦力」と自信をのぞかせた。全18科目のいずれも実習中心で、プロが業務で使うツールを自分のパソコンで扱い、実際のビジネス現場から提供されたデータを分析。評価は主にプロジェクト発表を基に行う。2023年度には1期生72人が修了した。就職先では、AI活用ビジネスの企画提案や、既存業務のAI活用による変革などでの活躍が期待されている。

林 浩一 氏

武蔵野大学 教授

スマートインテリジェンスセンター(MUSIC) センター長

林 浩一

データ運用を事業部門に移行するメリット

「先行するデータドリブンの企業では、データ分析の運用主権をIT部門から事業部門に移す変化が起こりつつある」――。特別講演に登壇したD.Forceの川上 明久氏は、データの民主化が進展した企業では、現場力の強い事業部門のほうが現実的な目標を設定できるため、データの利用・運用を彼らに委ねるべきと力説した。

背景には、エンジニアでなくても容易に利用できるデータ分析用のSaaS(Software as a Service)などの進歩がある。ただし、もちろん技術力も重要であり、IT部門は事業部門のサポート・統制役に回って伴走する。こうしてデータ基盤の投資効率向上を図ってデータの民主化を進める一方、人への投資の必要性も強調する。「SaaSの導入でIT部門の業務負担が軽減されれば、新たなリスキリングやエンジニア不足にも対応できるはず」と、川上氏は体制改革のメリットを語った。

川上 明久一 氏

株式会社D.Force

代表取締役社長

川上 明久

密な連携体制によるデータ活用で事業利益を拡大

「グループ事業会社と密な協業体制をつくることで、データ活用を事業の利益拡大につなげました」――。役割分担が進んだ大組織で結果を出す好例として、吉村 武氏は自身が経験したバンダイナムコグループにおけるデータマネジメント組織のあり方を示した。

吉村氏が所属するデータ戦略部がマネジメント組織として間に入る形で、ガバナンス組織がまとめた経営ビジョンやセキュリティ水準を明確に伝え、グループ事業会社が迷わずデータを活用できる環境を整備。事業会社ごとにデータ利活用チームを設けて協業し、密に支援して成果につなげた。

吉村氏は協業体制を構築する上で、ボトムアップの重要性も強調した。そのコツとして「データに強い人と取り組むことが重要。ただ、データに強い人がいない場合でも“数字”を見ながら業務している人は必ずいるので、そういう人を中心にデータ活用をしていくことが大事」とした。成功事例の横展開により成果を加速していると話し、聴講者にエールを送った。

吉村 武 氏

株式会社バンダイナムコネクサス

データ戦略部 データストラテジーオフィス

データインフラストラテジーセクション セクション長

吉村 武