激しい変化に対応して競争力強化へ DX推進に欠かせない6つのポイント

生成AIをはじめとするテクノロジーの急速な進化により、ビジネス環境が大きく変化する今、企業や組織にとってデジタルトランスフォーメーション(DX)はますます欠かせないものになっている。一方、DX に取り組むものの、想定通りに推進できない企業も少なくない。DX に焦点を当てた「日本全国 6都市 JAPAN DX Conference」の中でも、各都市で行われた独立行政法人情報処理推進機構(IPA)の講演に注目し、様々な側面からDX 推進のヒントを探る。

予測困難な時代のソフトウェア開発 カギは「作るから使う」と「環境への対応」

「変化の激しい時代に、いかにソフトウェアをDX(デジタル変革)へ活用していくかが大切です」。こう語るのは、IPAデジタル基盤センターの渋谷健介氏である。予測困難な時代だからこそ素早い対応が求められ、その中核になるのがソフトウェアの活用というわけだ。

「ビジネスや日常生活のあらゆる場面でソフトウェアを活用しています。ビジネスではMicrosoft Officeをはじめとした多くの製品が使われていますし、日常生活でもスマートフォンに様々なソフトウェアをダウンロードして利用しています。行政でも、マイナンバーなどを活用したデジタル化を支えているのはソフトウェアです。現代はソフトウェアが競争力の源泉であり、価値を生み出す時代なのです」(渋谷氏)。DX推進の指針としてビジョンや戦略、組織人材などと並んでITの活用があり、そのなかでも重要なのがソフトウェアである、と説明する。

渋谷健介氏

独立行政法人情報処理推進機構

デジタル基盤センター

デジタルエンジニアリング部

ソフトウェアエンジニアリンググループリーダー

渋谷健介

協調領域と競争領域でソフトウェアを使い分け

渋谷氏は、協調領域と競争領域を識別することがIT活用のポイントと語る。「自社の競争力との関係が薄い守りの協調領域と、ビジネスの強みになる攻めの競争領域とのメリハリをしっかり付けることが大切です。協調領域では『作るから使う』へのシフトが、競争領域では『スモールスタート』『データドリブン』がキーワードになります」(渋谷氏)

協調領域のキーワードである「作るから使う」について、渋谷氏は脱自前主義を説く。業務プロセスの標準化を進めつつ標準パッケージやオープンソースソフトウェア(OSS)を活用することで、投資を抑制しながら人材や予算を競争領域に投入できるようになるからだ。一方の競争領域では「データを基に予測し、仮説を立てて、スモールスタートでクイックに仮説を検証することが大事です。企業の開発プロセスとして、アジャイルで小さく回していき、既にあるものを活用するわけです。ただし、競争や差異化にかかわる部分では、積極的に作り込んでいくことも求められます」と言う。

こうしたIT活用の手法が求められるのは、変化が激しい時代に対応する必要があるからである。「システムやサービスは作って終わりではなく、環境に合わせてどんどん変わっていかないといけません。ビジネス環境の移り変わりとともに部品を組み替えていったり、アップデートしたりできるソフトウェア開発の体制が不可欠です」(渋谷氏)

ノンカスタマイズとOSS活用を

 「作るから使う」へのシフトについて、渋谷氏はこう語る。「パッケージソフトなどを、カスタマイズせずにそのまま利用する価値を考えるべきです。カスタマイズすると、その部分はサポートが受けられず自社でメンテナンスをする必要が出てきますし、バージョンアップにも対応できなくなるリスクがあります。カスタマイズがなければ、最新バージョンを常に使えて、グローバルな業務プロセスに合わせて業務をシンプルにすることもできます」。カスタマイズが本当に競争力の源泉となっているのか、過剰品質で足を引っ張っていないかを考える必要がある、と指摘する。

素早い対応を実現するための俊敏性を高めるポイント

素早い対応を実現するための俊敏性を高めるポイント

もう1つのソフトウェア活用の例として、渋谷氏はOSSを紹介する。「OSSとは、ソースコードを公開していて無償で使えるソフトのことです。求める機能のソフトがOSSで提供されていれば、効率的にコストを削減できます」

コストだけでなく、世界中で使われて利用実績を積み重ねているOSSなら、動作や品質が安定していることが期待できるのもメリットである。さらに、AIなど最新技術を実装したOSSを利用することで新たな価値創出につなげたり、ベンダーロックインを回避したりすることもできる。ただし、必ずしも万能ではなく「OSSはコンプライアンスリスクや不十分なサポートなどリスクもあるため、注意して活用してほしい」と、渋谷氏は注意を促す。

IPAでは、こうしたメリットや注意点などを周知して、OSSを活用する企業や団体をサポートするWebページ(注釈1)を公開している。「OSSに関する情報を発信しているので、『IPA OSS』で検索して活用してください」(渋谷氏)

最後に渋谷氏は「『作るから使う』へのシフトと、環境の変化に合わせて適応していくことを押さえながら、デジタル技術をうまく活用して、ビジネスの俊敏性を高めてもらいたい」とメッセージを届け、講演を締めくくった。