――生成AIのビジネス活用が進む中で、改めてデータに注目が集まっています。
ムーニーデータ管理への関心とともに、その課題に対する意識も高まっています。2024年7月、レノボはIDCに委託し「Smarter Data Management Playbook 2024」というレポートをまとめてもらいました。副題は「AIイノベーションのバックボーン構築」です。アジア太平洋地域(AP)における550人のCIO並びにIT・ビジネス部門の意思決定者への調査(日本はうち100人)を基に、データやAIなどに関するインサイトを導きました。CIO視点での重要なインサイトが4点あります。
第1に、「データの保護」。30%がデータセキュリティをデータ管理の最優先課題と捉えています。AIが大量のデータを処理し保存する時代、データのプライバシー保護とセキュリティは極めて重要です。
第2に、「データの形式的誤謬(データの「井戸」の汚染)に注意」。AIが間違ったデータを学習すれば、間違ったアウトプットが返ってきます。データ品質をいかに維持・向上させるかは切実な課題です。
第3に、「急がば回れ」。AI活用に急ぎ過ぎは禁物です。まず、目的を明確化した上で、目的に対してAIをどのように使うかを検討すべきです。準備段階または初期段階では、AIのポリシーやルールの策定も求められます。
第4に、「インフラ戦略にデータを役立てる」。これまでデータはストレージやデータベースの陰に隠れた存在でしたが、今や前面に出てくる時代です。ワークロードよりも、データをどのように扱いたいかによって、インフラのアーキテクチャや技術が決定されるのです。
――APの他の国と比較した場合、日本はどのような傾向が見られますか。
ムーニーデータ管理における優先順位について、AP全体では1位が「データセキュリティ」、2位が「AIプロジェクト用のデータの準備」、3位は「データアーキテクチャ」でした。
日本では1位が「データの価値の明確化(Articulating the Value of Data)」です。データの価値が傷つくような事態を防ぐとともに、データの価値を明らかにする。そこには、データおよびAIの活用に伴う投資について、費用対効果を知りたいとの要求が含まれます。端的にいえば、「AIを使ってどれだけ稼げるのか」ということです。続いて、2位は「データ管理とガバナンス」、3位は「データセキュリティ」でした。
――AI活用を進める上で、企業はデータ管理においてどのような課題を抱えているのでしょうか。
ムーニーデータを使いこなすためのITインフラ整備は重要な課題です。特に、複数のサイロに分散するデータの統合は容易ではありません。IDCは、組織サイロを横断する4層構造のインテリジェンスアーキテクチャを提唱しており、私たちはこの考え方を支持しています(図1参照)。
図1
企業はデータレイヤー全体で統一された戦略、アーキテクチャ、管理機能がない複数のデータサイロに悩まされている。IDCが提唱するのは下から「データプレーン」「データ制御プレーン」「データ分析プレーン」「意思決定プレーン」の4層のインテリジェンスアーキテクチャ。
以前は、データ活用というとデータベースやデータウエアハウスを使うことだと思われていました。しかし今では、データのアーキテクチャに関する考え方が大きく変化しています。データベースなどの最下層(データプレーン)の上に、プロセッシングやオーケストレーションなどの第2層(データ制御プレーン)があり、アナリティクスなどの第3層(データ分析プレーン)、意思決定をサポートする第4層(意思決定プレーン)があります。こうしたインテリジェンスアーキテクチャによって、統合的なデータ戦略と生成AI活用が可能になります。
特定のITベンダーに「4層をまとめて構築してくれ」と依頼する企業もあるかもしれませんが、おそらく非効率です。企業のデータ環境や使い方に応じて、いかに4層のアーキテクチャを実現するかが問われています。その際、クラウドは重要な構成要素の1つです。
――AI活用の基盤をクラウドに置くか、オンプレミスで整備するかは重要な論点です。
ムーニーIDCの調査では、日本企業に特徴的な傾向が見られました。AI活用の環境を聞いたところ、APではパブリッククラウドのみが26%、オンプレミスのみが28%、ハイブリッドクラウドは45%でした。日本では同じ順に47%、24%、29%です(図2参照)。何らかの形でオンプレミスを利用している企業はAPで74%、日本では53%です。日本企業がAIを活用する際、オンプレミスを用いる割合は比較的小さく、パブリッククラウドの利用が圧倒的に多いことが分かります。
図2
日本企業ではAIの活用において、パブリッククラウドの利用が圧倒的に多い。
――非常に興味深いですね。2022年11月にChatGPTが公開されてから、日本企業の多くが生成AI活用に取り組んでいます。まずは、パブリッククラウドでAzure OpenAIやGeminiなどを使うところから始めようということかもしれません。今回の調査対象はAPですが、米国企業の状況はどうでしょうか。
ムーニー米国企業の多くもパブリッククラウドを利用していますが、比率としては日本ほど多くないというのが私の印象です。
――日本企業の多くがテキストの翻訳や要約といった比較的シンプルなところから、生成AIの活用をスタートさせました。いわば生成AIに慣れる段階ですが、先進企業の間では本格的な活用が始まりつつあります。自社データを生成AIに学習させる必要もあるので、今後はオンプレミスでの利用がさらに広がると思います。
ムーニー同感です。
――ビジネスにおける生成AIの役割が大きくなる中で、レノボはどのようなソリューションを提示していますか。
ムーニーまず、最近発表された、生成AIに最適化されたソリューションを紹介しましょう。NVIDIA NIM推論マイクロサービス、生成AIの開発と展開のためのNVIDIA AI Enterpriseソフトウェアプラットフォーム、そして検索拡張生成(RAG)をサポートするNetApp AIPodソリューションですが、その中心構成要素となるのがLenovo ThinkSystem SR675 V3サーバー1です。
SR675 V3はAMD EPYC™プロセッサーを搭載した、GPUリッチなプラットフォームです。NVIDIA認定OVXアーキテクチャとして、NVIDIA L40S GPU登載、NVIDIA Spectrum-Xネットワーキング対応で、NetApp C800高パフォーマンスストレージとともに、AI導入を効率化するシームレスで検証済みのインフラソリューションを構成します。ユーザーは、プライベートな独自データをAIに対して活用することが可能となります。
あらゆる性能要件に拡張可能で、サステナブルなサーバー
Lenovo ThinkSystem SR675 V3 GPUラック・サーバーは、アクセラレーター機能を活用するワークロードの増加に応えます。小売、製造、金融サービス、エネルギー、医療などの業界用に最適化されたパフォーマンスを提供し、機械学習や深層学習を用いて、イノベーションを推進するための優れた知見を抽出します。
パフォーマンス、セキュリティ、電力効率向上を実現するAMD EPYC™プロセッサーを搭載したSR675 V3は、単一ノードのエンタープライズ展開から世界最大のスーパーコンピューターまで、あらゆる性能要件に合わせて拡張できます。
また、レノボは「AIサービス・センター・オブ・エクセレンス(CoE)」として、AIに関するアドバイザリーおよびプロフェッショナルサービスを強化しています。顧客が必要な機器やシステムをそろえる前に、レノボの専門家との対話を通じて、AI導入の目的や期待値、費用対効果などを明確化していただき、あらたにAIロードマップを構築します。こうしたプロセスを踏むことで、成功率を高めることができるのです。さらに市場投入期間を短縮するために、NVIDIAベースのフルスタック・ソリューションを使用する「AIファストスタート」も提供します。私たちは単にモノを販売するだけでなく、顧客が自信を持ってAI活用の道を前進できるような環境づくりを支援したいと考えています。
――それぞれが有用な取り組みだと思います。特に、レノボとしての強み、差別化要素としてはどのようなものがありますか。
ムーニー先に紹介したソリューションに加えて、いくつかの強みがあります。まず、「レノボAIイノベーターズ・プログラム」です。AIの本格的なビジネス活用に向けて、課題を感じている企業は少なくありません。50社を超えるレノボAIイノベーター・パートナーから提供される165種類以上のソリューションは、小売、ホスピタリティ、製造、ヘルスケア、金融、スマートシティなど、様々な業界において、AIによって強化された成果を提供します。
レノボのNeptune液体冷却技術2も、ユニークな強みの1つです。ここでいう液体は実際には40度を超える温水であり、空冷ファンによる電力消費を最小限に抑える一方で、液体冷却のための電力で相殺されるといったことはありません。液体冷却の技術では十年以上の蓄積があるのですが、AIやハイパフォーマンスコンピューティングの拡大に伴い、その重要性はますます高まっています。
――AIを中心にお話を伺いましたが、日本ではランサムウェアの被害が注目を集めており、改めてデータセキュリティ対策の見直しを検討する企業もあります。セキュリティについて、レノボの考え方を伺います。
ムーニーストレージを含め、様々な機器にセキュリティ機能をビルトインするというのが基本的な考え方です。例えば、異物を検知して排除するといった機能ですが、その際にはソフトウェアの役割が大きい。そこで、Veeamなどのセキュリティ専門企業とのコラボレーションを重視しています。例えば、Veeamはバックアップなどデータ保護ソリューションで定評があります。特にランサムウェアへの対策として、データバックアップと復元の重要性は高まっています。レノボが日本のお客様として事例をご紹介している株式会社サンポール様3や株式会社島根銀行様4でも、その重要性が説明されています。
――最後に、AI活用を進めたいと考えているビジネスリーダーに向けてメッセージをお願いします。
ムーニー第1に、自社のAI戦略やポリシーを明確にすることです。AI技術や法規制などの環境変化は激しいので、戦略やポリシーを策定している企業も、その適否を改めて検討する必要があるかもしれません。第2に、AI活用に際しては、ITインフラなどの変化は最小限にして試してみることをお勧めします。最初から大きなインフラ変更にチャレンジするのはリスクが大きい。これと関係しますが、第3に、ステップ・バイ・ステップで慎重に進みましょう。先ほど当社のアドバイザリーサービスに言及しましたが、レノボはそうした取り組みに伴走しつつ支援したいと考えています。