移転に先立つ2024年2月には、2021年11月に策定した「第2次地域情報化推進計画」の改定に合わせて生成AIの活用を明記。急激に進化し普及し始めた生成AIの活用にかじを切った。酒井氏はその意気込みを、「AIのファーストペンギン(AIトップランナー)になる」と語っている。
活用に向けて様々な研修やワークショップを実施し、区長自ら「生成AIアイデアソン」に参加した。「職員にトップ自らが取り組む姿勢を見せたいと思い参加しました。実際に参加してみて、生成AIが、事実とは異なる情報を利用して回答を生成する「ハルシネーション」などの課題はありつつも、大まかな方向性は間違いなく生成AIの活用に進むこと、そして活用することで仕事の仕方が大きく変わると実感しました」(酒井氏)。
研修やワークショップと並行して2024年1月には「中野区生成AI活用ガイドライン」を作成。職員が安心して利用できる環境を整えていった。
生成AIに関するアイデアソンは、管理職向け、一般職向けにそれぞれ実施。そこで分かったことは、管理職と一般職では利用方法が異なるということである。管理職は長文の報告書などのサマリー作成、そして自身のアイデアへの壁打ちに魅力を感じ、一般職は情報収集からサマリー作成まで一気にでき、文書の様々な角度からの下書き作成に魅力を感じるのだ。酒井氏は、「我々は自分で書類を作成することはあまりありませんが、日々長文の書類が大量に届き目を通して内容を把握する必要があります。生成AIを活用することで、文書を読み込む業務が効率化できると感じました」と語る。
2024年1月に実施した生成AIアイデアソンの様子(酒井氏も参加)
2024年4月からは商用データが保護されたセキュアな環境で、職員全員がMicrosoft Edgeで利用できる生成AI「Microsoft Copilot」を活用できる環境を整備。まずは触ってみることで、どう活用できるかを探っている。6月からはDXリーダーなど意欲的な100人程度の職員を対象に、Microsoft 365の各アプリケーションで利用できるCopilot for Microsoft 365を活用した効果検証を実施する。
現時点で酒井氏が活用方法として考えているのは、前述の書類のサマリー作成に加え、会合に参加するたびに用意しなければならない挨拶文の下書きなどだ。一般職員の使い方としては、定型ながら専門知識が必要で作成に手間がかかる仕様書などを作成する際の下書きや、Excelにおける関数の提案、PowerPointに挿入したいイメージ図の作成、Teamsを活用した会議における議事録の自動生成などを想定している。「将来的には、議会答弁書の下書きに活用したいと考えています。現在議会答弁書の作成のために長時間の調整会議を行っており、非常に業務負荷が大きい。また、答弁書の作成を補佐するため、多くの一般職員が残業で対応しており、これを効率化したい」(酒井氏)。
費用対効果としては、約2000人の全職員が1日5分間効率化できればCopilot for Microsoft 365の利用コストを回収できる。効果的に利用することができれば、それ以上の効果が出ると見込んでいる。
中野区は以前から業務の改善運動「OneUp↑チャレンジ」を行っており、毎年各職場での取り組みの発表会を実施している。「その1分野として生成AIを含めたDX部門賞を設けたい」と酒井氏は構想を語る。
まずは職員の働き方改革のための活用に取り組んでいくが、それがある程度の成果を生めば、区民サービスにも活用したい考えだ。まだアイデア段階ではあるが、例えば窓口で区民から困りごとの相談などを受けた場合、その人にマッチしたサービスを1つの窓口で紹介できれば、区民にとっても大幅な時間の節約につながる。
中野区は生成AIにいち早く取り組むことで得られる成果を、全国の自治体で共有したいと考えている。「生成AIには行政ならではの活用方法があるはずだと考えている。自治体間で共通する業務について、そのナレッジを共有できれば、自治体全体で相乗効果を生み出すことができる。生成AIに取り組む自治体は増えてきているので、共に歩みを進め、自治体の行政サービス全体を高めていきたい」(酒井氏)。
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