

約1400万人が暮らす都市東京だが、実は総面積の約4割を占めるのが森林。西部の多摩地域には5万ヘクタール超の森が広がり、林業が営まれている。そんな中、日本の木材や木製品の魅力を発信するイベント「WOOD コレクション(モクコレ)2024 Plus」がリアルとオンラインで開催される。主催の東京都森林課長の鐙美知子氏に、SDGsに通じる循環型産業としての林業の可能性について聞いた。
——まず東京都の森林木材利用拡大の取り組みをお話ください。
国産木材の需要拡大は、森林資源の循環を促進し、豊かな環境の継承に寄与するものです。東京都では花粉の発生源対策の一環として、2006年頃から公費を投入し、スギをメインにした積極的な伐採が始まりました。同時に、伐採した木材の活用ということで「東京の木・多摩産材」のブランド化を進め、公共建築への利用促進やフェアを毎年開いて製品の紹介に努めてきました。地域の林業振興のための補助金の仕組みも充実させています。
——2015年から「モクコレ」、2022年からは「JAPAN ReWOOD」にも取り組まれていますね。
「JAPAN ReWOOD」は一般消費者をメインターゲットに木材利用の拡大を狙っており、「モクコレ」は、ビジネス関係者をメインターゲットにしています。どちらも循環型林業を促進するために行われているイベントで、オンラインとリアルを併用しながら商談会を開いて木材産業における課題解決の機会を創出しています。
また、モクコレは都道府県エリアごとの展示が特徴ですが、大消費地を抱える東京都が音頭を取って全国の地域材をPRすることはとても意義のあることだと考えています。
東京都
産業労働局 農林水産部 森林課長
鐙(あぶみ) 美知子 氏
——今年のイベントは「日本の木 x SDGs」を大きなテーマに掲げています。
森林や木材にはCO2を吸収し、水源を守り土壌流出を防ぐなど地球環境保全機能があります。伐採後の植林を丁寧に行えば、資源も自然に再生されるため持続可能性の高い産業です。また建築工事ではある程度の部品を工場で組み立て、それを現場ではめ込むだけなので、工事期間中のエネルギー消費量の削減にもつながります。
「植える、育てる、収穫する、使う」という資源循環サイクルがあって初めてSDGsが達成されるのですが、展示会では各サイクルで注目されている「ウッドチェンジ」「林業イノベーション」「木質バイオマス」「スマート林業」という4つのキーワードに沿って最新の事例を展示・紹介します。

——キーワードの中から二点、林業イノベーションとスマート林業とはどういうものでしょうか。
林業は実は危険と隣り合わせのビジネスで、山から材木を切り出す過程での事故が絶えません。これを未然に防ぐためには集材の機械化、特に尾根や谷が入り組んだ複雑な地形では空中にワイヤーロープを張って、伐採した木を吊るして安全に運び出す「架線集材」という方法が有効です。
しかし、架線集材には特殊な技術や高い経験値が求められます。それを効率化するため、都では簡単に架線集材ができる急傾斜地向けの集材機を導入し、安全・簡単な集材を実現しています。現場の肌感覚ではこれまでの3倍以上、作業が効率化されたと聞いています。林業イノベーションの一つの例ですね。
スマート林業の例としては、「ハーベスタ」と呼ばれる多機能な林業機械の活用が挙げられます。その機械に木材のデータを蓄積する機能を搭載し、データを事業者間で共有する実証事業を進めています。
データの共有によって、山からどんな材が切り出され流通しているか、市場ではどんな需要があるかが分かるようになり、木材ビジネスの効率化に大きく寄与するものと考えられます。
——山主が「30年育てたので、そろそろ伐るか」と経験値に基づいてやっていたのは、もう昔のイメージですね。
航空レーザー測量で森林資源の正確なデータを集めたり、伐採・造林作業では、アシストスーツの実用化が進むなど、経験と勘に頼らなくてもよく身体的負担が少ない仕事となるよう、業界全体として取り組んでいるところです。
最先端といえば、スギから抽出した物質を新素材として活用する研究があるのですが、それで作った未来の車も今回の展示の目玉の一つです。
——他にも、有識者を招いたセミナーやジビエを堪能できるフードコート、木材製品などを購入できるブースやワークショップもあるとか。盛りだくさんの内容ですね。
木材ビジネスに何らかのつながりのある人たちはもちろん、一般消費者も楽しめるイベントになると思います。ぜひとも来場されて、林業の未来を体感していただければと思います。