環境教育や探究学習に関心のある教育関係者向けワークショップ開催
1人1台端末や校内ネットワークで実践する VR映像を活用したエネルギー環境教育
日経BP 総合研究所は2024年8月23日、原子力発電環境整備機構(NUMO)の協力の下、教員を対象に、VR映像を活用したエネルギー環境教育のワークショップを開催した。GIGAスクール構想で導入が進むICT環境を生かし、360度の視点移動が可能なVR映像を学びに活用する方法を紹介した。
都内で開催されたワークショップには、環境教育や探究学習などに関心のある教員が多く集まった。ワークショップでは冒頭、日経BPの中野淳技術プロダクツユニット長補佐 がVR(仮想現実)コンテンツを教育に活用する意義や、実際の活用例などを紹介した。
「VRコンテンツを利用することで、360度の仮想空間の中で、自由に視点移動できる臨場感のある学習体験が可能になる。また、VRゴーグルがなくても、1人1台の学習用端末のWebブラウザーでVRコンテンツを利用できる」と説明した。
VRコンテンツを活用したメタバース体験で
地層処分について学ぶ
NUMO広報部 地域コミュニケーショングループの大森麗氏
NUMO広報部 地域コミュニケーショングループの大森麗氏は、NUMOが提供している授業研究支援事業について紹介した。NUMOは、高レベル放射性廃棄物の地層処分を行う実施主体で、処分地の選定や処分施設の建設から操業、閉鎖までを担当する。
原子力発電所で使い終わった燃料(使用済燃料)は約95%が再処理を行うことにより、もう一度燃料として使用することが可能だが、残る約5%はどうしても再利用できない放射能レベルの高い廃液となる。この廃液をガラス原料と高温で融かし合わせ、ステンレス製の容器(キャニスター)の中で冷やし固めたものが「ガラス固化体」(高レベル放射性廃棄物)となる。日本では法律に基づき、この高レベル放射性廃棄物を地下300m以上深い安定した岩盤に閉じ込め、人間の生活環境や地上の自然環境から隔離する「地層処分」を行う。
現在NUMOは処分地の選定を進めており、北海道の寿都町と神恵内村、佐賀県の玄海町で文献調査を実施している。地域住民の方との対話活動を行っている他、全国のできるだけ多くの地域で最終処分事業に関心を持っていただけるよう、全国的な広報活動を実施している。
最終処分事業は調査に20年程度、処分場の建設、操業、閉鎖までの期間を含めると100年以上の長期にわたるため、現役世代だけではなく次世代に至るまで、高レベル放射性廃棄物の最終処分事業の認知拡大を図ることが重要だ。NUMOでは授業研究支援の他、授業で活用できるツールの一つとして、地層処分の関連施設に関するVRコンテンツを制作している。
高レベル放射性廃棄物の地層処分の概要。YouTubeにも解説が動画掲載されている
VRコンテンツの活用で
臨場感のある体験が可能に
今回参加者が体験したのは、北海道幌延町に位置する「幌延深地層研究センター」の地下350mの研究トンネルにおいて深地層の世界を体験できるVRコンテンツだ。
幌延深地層研究センターは、地層処分に関する技術的な信頼性を確認することを目的に、実際に地下深くでの研究に取り組んでいる。VRコンテンツでは、学校の授業ではなかなか訪れることのできない地下深くの坑道に降り立って、現地の様子を見ながら、地層処分の試験研究などについて学ぶことができる。
ワークショップでは、参加した教員がVRゴーグルを装着して、映像の中にアバターとして入り込み、ガラス固化体の立体モデルをVR空間の中で持ち上げたり、地下空間での研究状況を間近に見たりするような体験をした。
大森氏は「本VRコンテンツを活用することで、地下空間に実際にいるかのような没入感や臨場感を得られ、立体モデルにアバターを介して触れることにより地層処分に対する理解促進や授業への満足度の向上につながることが期待できる」と説明した。
ワークショップでは、VR空間のオーケストラ会場で楽団が演奏するステージに上り、演奏者の真横で楽器の音色を聴く体験も行われた。ほかにも防災コンテンツの中から、水害を体験した。実際に体験するのが難しい、あるいは危険なことでもVRコンテンツであれば体験することができる。
ワークショップで講演した元大阪教育大学教授の田中龍三氏は、VRコンテンツを教育に活用する意義や、深い学びにつながる効用を解説した。
参加した教員からは、「VRは難しいイメージがあったが、初めて体験してみて、授業で取り入れると生徒も楽しく勉強できるのではないかと感じた」といった感想があった。
VRコンテンツを活用した学びの効用
元大阪教育大学教授
田中龍三 氏
大阪教育大学では、小中高の音楽教育にVRコンテンツを利用する取り組みを進めている。例えば編集されたDVD教材ではオーケストラで演奏している全パートの楽器に着目することはできないが、VRなら簡単に実現できる。子供が興味をもったり疑問に感じたりしたことを能動的に見に行けるVRコンテンツは、探究学習にも効果的だ。それぞれの教科でVRコンテンツを子供の学びに活用してほしい(談)。
NUMO が実践する教育支援の取り組み
NUMOは学校の授業で「高レベル放射性廃棄物の処分問題」を取り上げてもらえるよう、授業案の作成や教材開発などを支援しており、2023年度は21団体を支援した。また、授業で「地層処分」を取り扱うための一助として、小中学校・高等学校・大学に向けた出前授業も提供している。23年度は74回、合計2,117人を対象に対面・オンラインによる出前授業を実施した。
その他、地層処分を授業で扱うツールとして、小・中学生用の教材や教員用の解説資料などを用意している。地層処分について楽しみながら学べるボードゲーム「ジオ・サーチゲーム」やVRコンテンツ、短編のアニメ動画なども提供している。
NUMO の主な支援活動
●教育研究会への活動支援 ●出前授業の実施 ●基本教材・ボードゲーム教材の開発・活用 ●エネルギー環境教育「全国研修会」の開催 ●施設見学会の企画・実施 ●HPを通じた情報発信
今回のワークショップでは「ジオ・サーチゲーム」(上)地層処分の人工バリアの1つ“ベントナイト”を用いた実験(下)の展示、地下処分に関する教員用解説書(右)の配布などを実施した
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教育ワークショップは今年度全3回の開催を予定しています。
第2回教育ワークショップ(大阪開催)は
こちら
https://events.nikkeibp.co.jp/event/2024/numo241126/


