share

pocket LINE FACEBOOK hatena X

RE:Work Lab Summit2024 WEBレポート キーノート講演

働き方の変革を急ぐ企業が続々、2025年はその転機になる

「日経WOMAN」の「女性活躍度調査(2024年)」の結果を基に、女性活躍や人的資本経営のトレンドを議論した。福利厚生の観点で進められてきた女性活躍の施策は、今日、人的資本経営の視点で大きく変わっている。縦割り組織の壁を越える人事異動や能力開発なども、デジタルの力で加速している。

佐藤 珠希

日経BPライフメディアユニット長・日経xwoman/日経WOMAN発行人
佐藤 珠希

「日経WOMAN」は1988年の創刊以来、「女性活躍度調査」を実施してきた(2023年までは「企業の女性活用度調査」の名称)。22回目となる今年は、4,400社から479社の有効回答を得た。まずはその結果を基に、女性活躍のトレンドや先進的な企業の人的資本経営の取り組みなどを議論した。

佐藤 珠希

日経BPライフメディアユニット長・日経xwoman/日経WOMAN発行人
佐藤 珠希

これまでの女性活躍は、福利厚生の観点から「子育て支援」や「家事と仕事の両立」などを主要テーマとしてきた。しかし、先進企業ではその考えが大きく変化している。人手不足感が高まり、人材の争奪戦が激しくなる中で、女性の能力を発揮できないことは企業の損失だという考え方だ。「どの企業も、社員の能力を高めることに必死です」と佐藤は述べた。

今年の調査では、資生堂が総合評価で3年連続1位となった。同社の女性管理職比率は4割で、回答企業平均の13%に比べてかなり高い。テレワークの推進においても、コロナ禍前から女性への細かいケアを行っている。例えば日本マイクロソフトと提携し、女性がメイクせずにオンライン会議に出ても、メイクしているように見えるアプリを開発するなどだ。

年間総労働時間は、コロナ禍以降、増加傾向にある。2022年の調査では平均1,905時間、2023年は1,910時間、2024年は1,916時間となった。残業時間を減らすための施策としては、1位が「入退社時刻を正確に記録するシステム」。次いで「長時間労働の多い部署へのヒアリング」「残業の事前申告制度」「ノー残業デーの導入」となった。

小林 暢子

日経BP 総合研究所
チーフコンサルタント
主席研究員
小林 暢子

「働きやすさだけでなく、働きがいが重要なポイントになるでしょう」と小林は指摘する。「使えない」と言われていた社員が、違う部署へ行くと見違えるように元気になり、能力を発揮し出す例は少なくない。日本企業は縦のラインが強く、縦割り組織の弊害が起こりやすいため、組織の壁を壊すことを指標にして取り組む企業が増えている。その施策として組織をまたぐ異動や、公募制による個人の意思を尊重した人材配置が広がっている。

小林 暢子

日経BP 総合研究所
チーフコンサルタント
主席研究員
小林 暢子

佐藤は、「手挙げ制の人事異動が増えている背景には、若手人材のリテンションの問題があります」と述べた。若手人材は、成長への関心が高い。何年も同じ部署にいると成長が遅れる、やりたい仕事に手を挙げられない組織では成長が望めないと考え、転職してしまう人も多い。小林は「人事システムが進化し、兼務やギグワーク、手挙げ制度の管理などが容易になってきました。タレントマネジメントシステムを導入し、1人ひとりの成長志向やスキル開発を可視化する環境が整いつつあります」と解説した。

人的資本経営の実現には、DX(デジタルトランスフォーメーション)も欠かせない。デジタル技術を活用し、人事評価や人材活用、働きやすい環境整備などにデータを活用し、自動化・効率化していかないと、さらなる進化が難しい時代になっている。「人手不足による人材獲得競争の激化が、その原動力になるでしょう」と小林は述べた。

佐藤は「昭和の働き方は、もはや通用しない。新しい形に変えるのが今。2025年は転機になります」と述べた。小林は「今日のサミットはそれを探る1日になるでしょう」と述べ、セッションをまとめた。

住友生命保険が実現した、人とつながりウェルビーイングになれるオフィスとは?

住友生命保険は、東京本社を2023年2月に東京ミッドタウン八重洲(東京都中央区)に移転した。「つながる、ひろげる、先へいく。Challenge ∞ Change」をコンセプトに、時代の先を行くオフィスを導入している。執行役常務の香山真氏が新オフィスからインターネット中継で登場し、オフィスを歩きながら概要を紹介した。セミナー会場にいる日経BP 総合研究所の小林暢子と、新しい働き方について話し合った。

コンセプトはコミュニケーション活性化とウェルビーイング

香山氏がオフィスのカフェラウンジから中継で登場し、「お昼時なので、人がたくさんいます。ここは食堂ではなくカフェラウンジ。日中はここで仕事をしたり、会議・打合せをすることもできます」と紹介した。

カフェラウンジを見せた後、香山氏は内部階段を下りて1つ下のフロアへ移動。各フロアには内部階段を2カ所ずつ設け、エレベーターを使わずに移動できるようにしている。「運動不足を解消するだけでなく、階段で他部署の人と偶然に会って交流することを狙っています」と香山氏は述べた。

下のオフィスは、部署ごとの仕切りや壁を無くし、オープンでフラットな空間になっている。「以前のオフィスとは、レイアウトも雰囲気もかなり違います。オフィスの隅に1人用のWebブースが5台くらいあり、1on1ミーティングに使える小さな会議室もあります。このフロアは仕事をするエリアなので、飲食は禁止です」(香山氏)。その一方、飲食、雑談、ミーティングができる自由な空間として、内部階段周辺にコミュニケーションエリアを設けている。大きなテーブルやリラックスできる椅子があったり、グリーンやテントを置いたアウトドア風のエリアも紹介した。

(左)住友生命保険 執行役常務 香山 真 氏
(右)日経BP 総合研究所 チーフコンサルタント 主席研究員 小林 暢子

小林が「旧本社は金融機関っぽい固く閉鎖的な感じでしたが、同じ会社とは思えないほど変わりましたね」と話すと、香山氏が「多くの従業員の声、特にこれから長く働くであろう若手従業員の声を聞きながら課題を可視化して、新オフィスのコンセプトを導き出しました」と答えた。

以前は、部署やフロアごとに壁やキャビネットで仕切られていたり、外から見えない個室の会議室を多く設置していた。これでは、人脈もコラボレーションも増えない。

様々な人とつながることで、先進的な価値が生まれ、組織の内外へ発信できるようになる。職員が健康で生き生きと働けるオフィスというコンセプトは、「Vitalityウォーキングコース」として実現させた。社内でウォーキングができる。

業務効率の高い自由なオフィスを作っても、金融機関としてのセキュリティは重視している。セキュリティの柱は「徹底したペーパーレス化」だ。紙の多くを電子化し、機密情報が人目に触れない仕組みを実現した結果、セキュリティは以前より高まっているという。

席はすべてフリーアドレスだ。席についてノートPCを開いたとき、他者の目に自然に触れる場所に2行ほどの自己紹介を書いたネームプレートを付け、会話のきっかけを作っている。オンラインで登録しておくと、部署をまたいで勝手にメンバーがマッチングされる食事会「シャッフルランチ」や、若手社員を中心とする「テーマ別ミーティング」、家族を招いてオフィスを見学する「オープンオフィスデー」などを実施中だ。

移転後、従業員のオフィス満足度は10点満点で3ポイントほど上がり、2022年4月は49%だった出社率が、2024年4月には69%に向上した。香山氏は「興味のある方は、ぜひ見に来てください」と述べ、セッションを締めくくった。

先進事例から学ぶハイブリッドワークの実践術

ハイブリッドワークが進む昨今、シームレスなコミュニケーションを実現するにはどうすべきか。コクヨが取り組む先進事例、場所の垣根を越えて役に立つモバイルギアを通じて、日経トレンディ発行人の佐藤央明が「二刀流仕事術の極意」を解説した。

コクヨが示す次世代の働き方とは?

佐藤 央明

日経トレンディ発行人
佐藤 央明

米スタンフォード大学や香港中文大学らが発表した実証研究によれば、ハイブリッドワークは業務の生産性を保ったまま離職率を3分の2に減らせるとの結果が出た。まさに働き方の多様性を肯定したポジティブなデータといえるだろう。

一方で、ハイブリッドワークならではの悩みが発生している。佐藤は「例えばフリーアドレスなのに居場所を固定しがち、仕事の可能性を広げる偶発的な雑談の減少、出勤者とテレワーカー間の情報格差といった課題です」と指摘する。その上でコクヨの先進事例を通じて、これらの課題を解決するヒントを紹介した。

社員が働く姿をショールームとして公開する。コクヨの代名詞とも言える「ライブオフィス」は、実に1969年から始まった。コロナ禍に突入した2021年には東京の品川オフィスおよびショールームを「THE CAMPUS(ザ・キャンパス)」としてリニューアル。仕事のペースや規模に応じて最適な環境を能動的に選ぶ「ABW(Activity Based Working)」を重視し、次世代における働き方の実験場として機能している。

ABWの実現に向けて、オフィス空間には様々な工夫を凝らした。フリーアドレスの同社では個人ロッカーの廃止やオフィス内の備品管理を部署別から一本化するなどして、“居場所の固定化”を防ぐことに注力。さらに偶発的な雑談を促進するため、テント風スペースやベンチ、本社と支社間をつなぐ常時接続モニターを設置している。

最大の障壁である情報格差解消のアプローチは画期的だ。仮想オフィスサービスの「oVice(オヴィス)」でオフィス内の人の動きをリアルタイムで可視化するほか、ジェスチャー操作が可能な双方向の画面共有システム、自律的に移動するディスプレー付きAIロボットの導入により、場所が離れていてもコミュニケーションに支障が出ないようにした。

「これらの最新テクノロジーによって、コクヨはハイブリッドワークの溝を埋めることに注力しています。そして自らの体験を分析しながら改善点をアップデートし、常に新しい進化型オフィスを目指しているのです」(佐藤)

ただし、どの企業もコクヨと同様の取り組みをするのは困難だ。そこで佐藤は働き方改革のコンサルティングに強みを持つクロスリバーの調査結果を基に、ハイブリッド型会議のTipsをいくつか紹介した。

「一般的な60分会議をあえて45分に短縮することで時間通りに会議が始まる確率が高まり、資料を読み込む時間が増えて生産性が向上。また上司ではない人物がファシリテーターを務めたり、冒頭にちょっとした雑談を入れたりするだけでも効率がアップしたそうです。こうしたTipsを生かせば、少しでもコミュニケーション格差が解消できるのではないでしょうか」(佐藤)

最後は、ハイブリッドワークに役立つモバイルギアについて触れた。日経トレンディ編集部員が実際に使用して気に入った商品を選んだもので、前開きで耐衝撃性のあるリュック、充電式の小型ワイヤレスマウス、ワンタッチで消音操作ができる外付けマイクなどをピックアップ。佐藤は「ハイブリッドワークでは自宅と職場で同じ道具を使うこと、荷物を極力減らすコンパクトさが重要」と締めくくった。

share

pocket LINE FACEBOOK hatenaX

イベントレビュー2025年11月4日開催の「RE:Work Lab Summit2025」WEBレビューからヒントを探る

2024年11月14日開催の「RE:Work Lab Summit2024」WEBレビューからヒントを探る