SCSK ProActive事業本部 ビジネスストラテジー部長 五月女 雅一氏
DXとはデジタル技術を活用して業務フローを改善したり、企業風土を変革したりするための取り組みで、データドリブン経営はその実現に不可欠な要素と言える。社内の複数部署に散在するデータを1カ所に集め、可視化した分析結果を判断材料として活用すれば、企業は客観的な事実に基づくスピーディーな意思決定が可能になる。
だが、「多くの企業はまだ過去のデータを参照する程度の活用にとどまっており、データの価値をより高めるには利用規模をスケールアップする必要があります」とSCSKの五月女氏は見ている。
データ活用度を高めてデータドリブン経営を有効に展開するには、データを収集、保存、分析するためのITシステム基盤を構築する必要がある。とはいえ、システム基盤の構築には多額の投資が必要になる。「期待通りの成果を出すには、3つのポイントを押さえることが重要です」と五月女氏は強調する。
バックオフィス部門はシステムに業務を合わせる
五月女氏が語った1つ目のポイントは、社内部門を環境変化の影響を受けやすい領域と受けにくい領域に切り分けて、それぞれに適したシステムを導入することである。
環境変化を受けにくい部門としては、経理、人事、総務、生産管理などのバックオフィス系の部門が該当する。「これらの部門は同一の業界であれば似た業務フローになるケースが多く、それぞれの業界に共通する標準機能を備えたシステムに業務を合わせるのが得策です」(五月女氏)
一方、環境変化の影響を受けやすいのは、営業や販売、製造現場といったフロントオフィス系の部門である。これらの部門では、自社の状況にマッチする複数のシステムを組み合わせたり、ノーコードやローコードの開発環境を併用したりして、柔軟に変更できるシステムを構築すべきである。五月女氏は「業務に変更が生じた際にも、柔軟かつスピーディーに対応できれば、データドリブン経営の継続性を高められるでしょう」と語る。
| 環境変化の影響 | 受けにくい |
受けやすい |
|---|---|---|
| 領域 | バックオフィス系 (会計、生産管理など) |
フロントオフィス系 (製造現場、販売など) |
| システムに 求められること |
業界固有・共通の標準準拠 | 柔軟性(組み替え、作り直しが容易)、先進性(新技術を活用) |
| システム導入の方法 | ERPで、業務をシステムに合わせて整理する …作らない領域 |
ノーコード・ローコード開発で、 動的かつ柔軟に開発 …作る領域 |
システムの基盤作りをする1つ目のポイント
オープンなデータ連携で価値を最大化
2つ目のポイントは、社内で整備したデータを、社内外を問わず、様々なほかのデータと連携させること。データを広く組み合わせて分析することで、多様な示唆を得られるからだ。そのためには、クラウド環境にデータベースやアプリケーションを配置した、柔軟性のあるデータ基盤を構築すべきだと指摘する。「多様なデータやシステムとやり取りすることで、あらゆるソースのデータを掛け合わせた価値創造を加速できます」(五月女氏)
3つ目のポイントは、社員教育を通じた人材価値の向上である。優れたデータ分析が可能なシステムを構築しても、それを効果的に活用できる人材がいなければ、システムの価値は半減する。今後は、AIが分析結果に基づいた予測まで支援してくれる可能性は高い。それでも最終的な意思決定を行うのは人間である。このため「データやAIの活用を含めて、人材価値の向上は避けて通れません」と五月女氏は指摘する。
クラウドERPとアプリ開発ツールの活用を推進
データドリブン経営を成功に導くこれら3つのポイントに合致するDXソリューションを提供しているのがSCSKだ。まず、環境変化の影響を受けにくいバックオフィス部門に向けたソリューションが、業種や業務ごとに最適化したテンプレート(ひな形システム)を用意したERP(基幹業務システム)である。商社・流通業界をはじめとした全業界に対応可能な「ProActive C4」、製造業界向けの「atWill」、建設業界向けの「PImacs」などを提供済みで、特に「ProActive」は6,600社が既に導入している。今後も特化する業種を順次拡大していく予定である。
環境変化の影響を受けやすいフロントオフィス部門向けには、ノーコード・ローコードの開発環境として、米グーグルが2018年から提供しているオープンソースのフレームワーク(アプリケーション開発ツール)「Flutter」を活用したソリューションを提供している。システムに機能の追加が必要な場合は、Flutterを使うことでユーザー自身が直感的な操作で開発を進められる。WindowsやiOSも含むマルチプラットフォームの端末に対応するシステム開発が可能で、グーグルが提供する音声入力や位置情報サービス、生成AIなどの先端技術を容易に取り込める。
社内外のデータとの連携に対応するソリューションとしては、アステリア社製のデータ連携ツール「Asteria Warp」を提供している。このツールは、多様な業務のテンプレートを備え、ノーコードでデータ連携システムを短期開発できる点が特徴で、17年連続で国内シェアが1位、1万社以上が導入済みである。
SCSKが提供するソリューション
BIツールでリアルタイムにデータを可視化
SCSKはこれらのDXソリューションの利便性をさらに高めるために、データを可視化するダッシュボードソリューションなどのBI(ビジネスインテリジェンス)ツールも提供している。例えば、前述のクラウドERP「ProActive C4」に蓄積した管理会計データ(売上、利益など)を分析ツール「Amazon QuickSight」と連携させ、画面操作に即座に追従して可視化(グラフ化)できる。さらにSCSKは、「ProActive C4」の導入のほか、バックオフィス業務の運用を代行するアウトソーシングサービスも提供している。
加えて、SCSKでは企業の業務効率化や生産性向上を目的として、自社専用環境に生成AI「SCSK-GAI」を導入したり、生成AIを活用した各種製品・サービスでのイノベーション推進のための施策を積極的に実施したりと、先進技術の活用に向けた活動にも意欲的であり、今後の製品やサービスの動向が期待される。
これらのソリューションの提供だけでなく「あらゆる課題をITで解決してきたノウハウを基に、お客様の要望に対してワンストップで支援します」と五月女氏は語る。データドリブン経営の実現へ、SCSKは強力なパートナーになってくれるだろう。