株式会社
東レリサーチセンター
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東レリサーチセンター
近年のリチウムイオン電池の需要拡大を受けて、二次電池市場の急成長が目覚ましい。より高性能かつ大容量の二次電池開発のためには、精度の高い分析技術が必要となっており、そのニーズの受け皿として注目されているのが国内最大規模の総合分析会社として高度な分析技術を有する東レリサーチセンターだ。同社が持つ分析・評価技術は、その信頼性の高さで幅広い分野から高い評価を得ている。リチウムイオン電池の高性能化を進めていくなかで、同社の分析・評価技術は実に重要といえよう。今回は、同社における分析・評価技術の特長をはじめ、二次電池市場の現状や全固体電池など次世代電池の将来について、東レリサーチセンターで研究部門長を務める大塚 祐二氏に話を伺った。

会社概要
社名:株式会社 東レリサーチセンター
設立:1978年6月1日
内容:受託分析、受託調査、教育事業、
東レ株式会社の研究開発部門から1978年6月に独立して発足。東レの事業活動で蓄積された高度な分析・解析技術を社会に還元し、科学技術の進歩に貢献することを目的としている。
電気自動車(EV)用などリチウムイオン電池を軸にした二次電池の高性能化、大容量化に向けた製品開発が急ピッチで進んでいる。国内最大規模の総合分析会社として、二次電池をはじめ、あらゆる産業分野に信頼性の高い分析・評価技術を提供しているのが東レリサーチセンターである。
同社は1978年に東レ100%出資の子会社として設立され、「高度な技術で社会に貢献する」という基本理念のもと、受託分析・受託調査を通じて、顧客の新製品・新機能の創出、原因解析や課題解決を支援してきた。その事業領域は、半導体、ディスプレイ・電池、材料、環境、ライフサイエンスと幅広く、形態観察、表面分析、構造解析、材料物性、有機分析、無機分析、生化学分析など適切な手法や機器を駆使して顧客の課題を解決へと導く提案力が強みだ。
リチウムイオン電池の分析も、市場に投入された1991年以前の研究・技術開発の初期段階から取り組み、様々な分析技術を確立してきた。「40年以上に及ぶ技術や経験の蓄積を生かして、サプライチェーンの上流に当たる材料メーカーから、川中、川下に当たるセルメーカー、自動車メーカーを中心としたユーザーまで、取り扱いが難しいリチウムイオン電池の多岐にわたる分析ニーズに応えています」と東レリサーチセンター 取締役 研究部門長 大塚 祐二氏は語る。

株式会社東レリサーチセンター
取締役 研究部門長 博士(工学)
大塚 祐二 氏
EV市場では搭載機種の大型化や航続距離の延長を狙って車載用電池の大型化・高容量化が進んでおり、製造プロセスで大幅なスケールアップが図られている中で、今まで想定しなかった製品トラブルが発生する可能性がある。加えて、より高性能な二次電池の実現に向けて、全固体化など新たな材料や技術開発も急速に進んでいる。これに対応するため、東レリサーチセンターでは分析技術をさらに進化させ、的確なソリューションを提供するために、2023年4月、研究と営業の機能を一体化させた蓄電デバイス事業部を設立した。
「今まで分析技術を基軸に、お客様との対話を通して必要な分析手法を選んでいくやり方が一般的でした。ところが、顧客から“電池が使用中に膨張する原因は?” というように、構成部材が多岐にわたり多くの要因が複雑に絡み合う電池特有の難しい分析依頼もあります。そうすると、窓口担当者が内容を理解したうえで必要となる分析手法担当を横につないで解析結果を取りまとめなければならず、報告に時間がかかるようになってきました。そこで分析部門に横串を通すことで、窓口担当者が動きやすいようにして、分析にかかる時間を短縮し、二次電池全体に対応できるようにしたのです」(大塚氏)。
リチウムイオン電池の需要が広がってきたことで、大型化や安全性、低コスト化、軽量化、高寿命化など解決しなければならない新たな課題が次々と生まれている。これに対して、短期的には電解液を用いた現行のリチウムイオン電池の性能改良が進められており、それに対する新規材料の開発やそれらの特性発現のメカニズム解析に必要な分析技術の開発が求められている。
一方、中長期的な視点で見たとき、次世代電池、特に全固体電池用材料の解析のための新しい分析技術の開発も必要になっている。さらに機器分析だけでは計測が困難な現象も多く、固体/固体界面における分子レベルの反応解析から、製品内部での発熱や変形の解析などのためのシミュレーション解析の活用も求められている。
大塚氏は、この点について「蓄電デバイス事業部は短期的な課題としての現行のリチウムイオン電池の性能向上と、中長期的な課題としての全固体電池を中心とした次世代電池開発という両方の分析支援を、設立当初の予想を上回る量で受注しています。それに加えて、リチウムイオン電池を動作させながら観察する“その場解析”など、私たちでなければできない高度な解析メニューをさらに充実させて、お客様のニーズに応えていきます」と語る。高度かつ難易度の高い課題に対する同社の分析技術への期待の高さがうかがえる。
では、実際にどのような分析が行われているのか。リチウムイオン電池の代表的な分析手法が、集束イオンビーム装置(FIB)と走査型電子顕微鏡(SEM)を組み合わせた電極の三次元構造解析や、レーザーアブレーションICP質量分析法(LA-ICP-MS)を利用した部材の劣化・故障解析である。FIB-SEMによる電極の三次元構造解析は製造プロセスの最適化や性能低下のメカニズム解析に非常に有効だ。東レリサーチセンターではFIBによる加工で得た三次元観察結果を基に、SEMで画像解析と数値化を進め、定量的な解析を行っている。
またLA-ICP-MSはリチウムなどの軽元素からニッケルやコバルトなどの遷移金属を高感度に検出可能で、リチウムイオン電池構成部材の劣化や故障診断への活用を進めている。
東レリサーチセンターでは分析業務を進めるため、サーモフィッシャーサイエンティフィック(以下、サーモフィッシャー)が提供する各種分析装置を活用している。形態観察、表面分析、有機・無機分析、赤外分析などにおいて、サーモフィッシャーの装置群を組み合わせることで、材料の研究・技術開発から性能低下の原因究明まで様々な観点での分析に役立てている。東レリサーチセンターでは複数のメーカーの装置を取りそろえているが、特に特殊かつ高精度な加工を必要とするFIBのハイエンド領域に関しては、ほぼサーモフィッシャーの製品を利用するなど、その信頼は厚い。
FIBは絞ったイオンビームで材料を切ったり、削ったりして、電子顕微鏡による観察のための試料を作る。前処理にかける材料は硬いもの、軟らかいものだけでなく、濡れていたり、粘ついていたりする。そのため、試料を凍結させて加工するなど様々な条件の前処理が必要になり、通常は加工が難しい。東レリサーチセンターは様々な条件に対応する高度な前処理技術を駆使して、顧客企業の要望に応えている。
東レリサーチセンターに導入されているFIB(集束イオンビーム装置)。現在3台が運用中であり、写真左が2023年に導入された「Thermo Scientific Helios Hydra デュアルビーム」(PFIB)である(パノラマ撮影)
「例えば、削ることがほとんど不可能と思えるような細かい領域を『広大なスギ林の中の特定の一本を上から下までわずか数cmの厚みで均一に切り出す』ように、きれいに切ります。そうした難しい前処理ができるのはサーモフィッシャーの装置だけなので、お客様の要求が高度になればなるほど、サーモフィッシャーのFIBは大きな力を発揮します」(大塚氏)。
東レリサーチセンターがサーモフィッシャーの装置を最初に導入したのは1990年代末に遡る。当時は集束イオンビーム装置が提供され始めたばかりの時期で、加工状態を横から電子顕微鏡で見ることができなかった。ところがサーモフィッシャーの装置はそれが可能だったことから、東レリサーチセンターは高く評価、導入することにした。以来25年余り、何台もの装置を導入してきているが、2023年に導入したプラズマ集束イオンビーム装置「Helios Hydra デュアルビーム」(PFIB)は性能が大きく向上し、より広域で高精細なSEM観察が可能になっている。
リチウムイオン電池の材料解析は、例えるなら「熱帯雨林のような多様な環境の中で新種の植物を見つけ出す」ように“異物”や“変質”などの問題を見つけて原因を究明するという、まさに宝探しのようなものである。これまでのFIBはビームを絞っているため狭い範囲でしか見ることができなかった。今回、東レリサーチセンターが導入したPFIBは電流量の大きなイオンビームを材料に当てることができるので、従来よりも広い範囲の加工、観察が可能となった。
「(PFIB導入により)小さな試料をたくさん作製して観察するようなやり方をしなくても、広い範囲を観察して問題のある場所を発見し、必要な定量情報を得ることができるようになりました」(大塚氏)。

リチウムイオン電池の材料開発や製品改良は、世界各国で急速に進んでいる。東レリサーチセンターでは海外の分析トレンドや機器の需要動向などを見据えながら、リチウムイオン電池材料の研究・技術開発支援に有効な分析技術の開発を進めていく。しかし、解析対象は新規の材料開発から生産トラブル、性能低下の原因解析など様々。必要な分析技術も多岐にわたるため容易な作業ではない。また世界的な規制によるリサイクル義務への対応などニーズの多様化が見込まれ、高度な技術開発が求められる
そのため、東レリサーチセンターでは幅広い製品ラインアップを持ち、グローバル規模で事業を展開するサーモフィッシャーに大きな期待を寄せている。大塚氏はこの点について「当社では、引き続きリチウムイオン電池材料の研究・技術開発支援に有効な分析技術の開発を進める計画です。そのためサーモフィッシャーには、様々な製品による分析技術を強化や支援、目的に応じた特殊な装置のカスタマイズ、グローバル市場での知見の提供など、私たちが目指す分析の極限追求にご協力いただきたいと考えています」と語った。

サーモフィッシャーサイエンティフィック
ジャパングループ について
事業内容:バイオ関連機器、分析機器、計測機器、ラボ用製品、臨床診断用機器、研究・臨床検査試薬、クリニカルサプライチェーンサービス、医薬品開発・製造受託サービスなど
米国マサチューセッツ州に本社を置くサーモフィッシャーサイエンティフィック(Thermo Fisher Scientific)の日本法人グループ。医薬・バイオ、半導体、飲料・食品、素材メーカーなど広範にわたる企業、病院、検査センター、大学、研究機関など向けに、分析機器・試薬をはじめ、生命科学ソリューション、製薬サービス、臨床診断用製品やラボ用製品などを提供