すべての人がデータを扱える世界を目指して ツールにとどまらないデータ活用の“環境づくり”

データ分析基盤「Dr.Sum」やBIダッシュボード「MotionBoard」を製品の核に据え事業を展開するウイングアーク1stが、「データ分析・利活用支援ソフト/サービス」部門で3連覇を達成した。全評価項目で平均値を上回る強さの源泉は、あらゆるビジネス領域でのデータ利活用を推進する“環境づくり”にある。この1年でさらに拡大したユーザーコミュニティ「nest」も、その強さを支えている。
データ人材に限らない すべての人が使えるツール
ウイングアーク1st株式会社
執行役員
Data Empowerment事業部長
大澤 重雄氏
「お客様の率直な声を反映する『顧客満足度調査』は最も重要視している指標の1つです。今回の結果について、ユーザー様はもちろんパートナー様、そして社内のメンバーに感謝したいと思います」。同社の大澤重雄氏は受賞の喜びをこう語った。
データ活用サービスを提供する同社の主力製品は、企業に散在する大量データを統合・高速集計する「Dr.Sum」とデータを集約・可視化する「MotionBoard」である。いずれも、「すべての人がより身近にデータを活用できる環境を実現する」という事業パーパスに基づき、現場にデータ利活用文化を根付かせ、全社間でデータを共通言語のように使えるようにするため、誰もが容易に扱える「ユーザーフレンドリー」(大澤氏)なツールである。
同社は2024年3月に、Dr.Sumの最新バージョンとして生成AIを活用した「Dr.Sum Copilot」のテクニカルプレビュー版をリリース。データベース言語の知見がなくても、自然言語からSQLを生成できるのが特徴だ。例えば、テーブル結合後に新たな列を加えたい場合、自然言語をテキスト入力するだけでSQLが生成される。データを扱うハードルが大幅に下がり、「より身近にデータを活用できる」環境を実現できる。
誰もが使いやすいという製品の特徴は、コストパフォーマンスの高さにおいても評価された。今回の顧客満足度調査で、同社は「コスト」面で平均値より5点以上高い数値をマーク。大澤氏は「単に価格が高いか安いかではない」とし、「特定の人に限らず多くの方が現場業務の中で弊社ツールを活用し、成果を上げたことから『高いコストパフォーマンスを発揮している』と評価いただいたと認識しています」と話した。
充実したサポート体制も、データ活用を推進する環境づくりに寄与している。AIチャットボットのほか、Web会議ツールを用いた対面サポートも提供。ユーザーからの信頼獲得につなげている。
アナログを否定しないデジタル化が 高い顧客満足度のカギ
大澤氏はデジタルツールを提供する立場として、アナログ業務から脱却することの難しさに言及した。例えばそれまでExcelで管理・運用していた業務を本格的にデジタル化する過程で、システムに入り切らず取りこぼしてしまう情報が必ず出てくるという。欠落してしまった情報に業務を遂行するための重要なノウハウが含まれていても、そもそもシステムに入っているデータしか使えないという問題に直面する。「弊社ではいかに欠落がないデジタル化を実現するかに着目し、プロダクトを開発・提供しています」(大澤氏)
アナログ業務のデジタル化を果たしたユーザー企業のうちの1社が、トヨタ自動車東日本である。
トヨタ自動車東日本の自動車製造現場では、自動車の部位や製造工程ごとに数千種の管理帳票が存在し、多くを手書きで対応していたため膨大な業務負担がかかっていた。また塗装品質管理でもセンサーを用いて発色を計測し基準値との合否を測定していたものの、測色結果の分析は、手作業で行っており、時間と手間がかかり過ぎて有効活用できていなかった。
そこで、帳票デジタル化ツールとMotionBoardを導入。両ツールを連携したことで、管理グラフ図の自動描画や異常傾向のアラート表示の自動化などを果たした。塗装工程ではセンサーから入力される測色管理データベースとMotionBoardを連携し、車種や塗色ごとの傾向を自動でグラフ化できるようになった。
トヨタ自動車東日本の担当者によれば、当初はMotionBoardのクラウド版を採用しており、クラウドだからこそ工数をかけずスモールスタートできる点、また現場作業者でも使える操作性の高さなどが、導入の決め手になった。
「製造業に限らず、例えば金融業でも紙ベースの業務は多く残っています。ただ“アナログ業務=無駄”ではなく、そこにこそ長年蓄積された重要な情報があるもの。それにいきなり業務全体をデジタル化するとなるとハードルが高いですし、現場の抵抗感も強くなるでしょう。そんな中でデジタル化するときの欠落をできるだけ減らせるよう、AI-OCRなどのツールも使い、アナログを否定しないデジタル化を提案していきます」(大澤氏)
現場業務に溶け込むデータ活用
※Dataring:データパイプライン構築により、戦略立案・遂行の精度を高め、データの価値を循環させるウイングアーク1st提供のサービス。「Dr. Sum」「MotionBoard」と共にデータ活用基盤の定着化を推進するとして好評を博している。
年々成長するユーザーコミュニティが データ活用のヒントに
同社のユーザーコミュニティ「nest」も、データ活用を推進する環境づくりに一役買っている。2024年8月現在で約4300人が登録し、2023年比で約1000人増加した。コミュニティ内では活発にディスカッションが行われており、デジタルトランスフォーメーション(DX)推進のヒントを得られる機会となっている。
各種オンライン/オフラインイベントも定期的に開催する。イベント運営こそ同社が支援するものの、内容企画などはコミュニティで選ばれたリーダーが中心となって進める。
様々なワーキンググループも立ち上がっており、エリア別や業種別、抱えている課題別に参加でき、情報交換が可能だ。
「データ活用を進めるにあたり、知識の壁、目的の壁、データの壁、文化の壁、組織の壁など、様々な壁に直面します。これらの壁をどう乗り越えるかについて、当事者の経験に勝る手本はありません。特にその業界全体が持つ課題やトレンドなどは、我々よりユーザー様のほうが知見をお持ちです。成功も失敗も含めて経験を共有して、気軽にやり取りできる場を設けることで、新たな取り組みのヒントが得られるでしょう。製品については我々がサポートし、現場での運用についてはユーザーコミュニティで補完する流れができています。まさにデータ活用のための環境づくりの一環だととらえています」(大澤氏)
同社が目指すのは自社ツールを導入してもらうことではなく、ツールによってデータ活用を進め、すべてのユーザーにその成果を実感してもらうことだ。「ユーザー様がデータ活用へ踏み出す、その一歩の壁を壊していきたい。今後も誰もが身近にデータを扱える世界を目指して、真摯に向き合っていきます」(大澤氏)。生成AIなどテクノロジーの存在に捉われずデータを気軽に扱うことができる、そんな環境をさらに広げるため、同社は走り続ける。