企業変革の羅針盤 デジタル変革のエキスパート達
株式会社YEデジタル
代表取締役社長
玉井 裕治

40年培った経験をベースに
データの連携と活用で
物流業務を変革する

YEデジタルは物流システムの分野で、約40年にわたって経験を重ねてきた。自社システムの提供だけでなく、倉庫管理システムの構築などを通じて、他社の様々なシステムに関する知見も獲得してきた。こうしたノウハウを基に、近年新たな物流関連サービスを次々にリリース。キーワードは倉庫の可視化と自動化、そしてシステム運用管理のアウトソーシングである。多くの企業が物流の課題を抱える中で、多様なサービスで課題解決をサポートしている。
インタビュアー:
日経BP 総合研究所 フェロー 桔梗原 富夫

新設が相次ぐ巨大物流センター
内部では自動化が急速に進展

桔梗原 パンデミックの時期を経て、世の中の変化はますます加速している感があります。最近は、どのような変化に注目していますか。

玉井 物流を取り巻く様々な課題に注目しています。私たちは物流システムの分野で約40年の経験を重ねており、そのノウハウを生かしてお客様の課題解決に寄与したいと考えています。労働規制の強化に伴う人手不足を懸念する「2024年問題」という言葉はかなり広まりました。また、東京23区の新築マンションの平均価格が1億円を超えたというニュースに象徴されるように、人件費や資材費を含む建築コストの高騰という側面も見逃せません。これまでメーカーや流通各社は自前の物流センターを持つケースが多かったのですが、今後は投資額が膨らむので、そのスタイルを維持するのは難しいでしょう。マルチテナント型物流センターの一部を借りるスタイルが主流になると思います。

桔梗原 大都市の郊外では巨大な物流センターが次々に建設されていますね。

玉井 新しい物流センターに移転する際、多くの企業は自動化の水準を高めています。その背景には、倉庫現場での人材確保難があります。こうしたニーズを受けて、設備メーカーはロボットを含め新たな機器類を開発し、市場に投入しています。しかし、自動化設備だけでは不十分です。多様な設備をつないで現場のオペレーション全体を効率化・最適化する必要があります。それを支援するのがWES(Warehouse Execution System:倉庫実行システム)であり、当社は「MMLogiStation」を提供しています。

連携機能に強みを持つ
WESに加え
倉庫を可視化する
サブスクサービスも提供

桔梗原 WESは具体的にどのような働きをするのでしょうか。

玉井 倉庫業務を自動化するためには、基幹システムであるWMS(Warehouse Management System:倉庫管理システム)と、倉庫内の設備のリアルタイム制御を行うWCS(Warehouse Control System:倉庫制御システム)のスムーズな連携が欠かせません。WMSとWCSをつなぐとともに、倉庫内の設備などを制御・管理するのがWESの役割です。物流DXを推進する上で、欠かせない機能といえるでしょう。

桔梗原 物流業界を変革する手段として物流DXが注目されていますが、御社のWESの強みはどこにあるのでしょうか。

玉井 WMSやWCSとのインターフェースの種類が多いことです。私たちは「プラグイン」と呼んでいるのですが、現在、入荷から出荷までの各工程で使われる8メーカーの設備に対応しており、着実に増えつつあります。プラグインの開発を始めた当初は、本当にニーズがあるのか心配していましたが、最近は多くのお客様に注目されるようになりました。豊富なプラグインが決め手になって、大きな商談がまとまるケースも増えています。その1つが、2024年2月に開所式が行われたカインズ様の桑名流通センター(三重県桑名市)です。延床面積約2万9000坪の施設では、多種多様な最新自動化設備が動いています。これらをつないでいるのが、当社のMMLogiStationです。

桔梗原 物流DXの支援という観点で、ほかにも取り組みを進めているのでしょうか。

玉井 物流分野での経験が豊富なアビームコンサルティングと共同開発した「Analyst-DWC」を、この5月にリリースしました。物流倉庫向けの意思決定支援ダッシュボードで、当社としては初のサブスクリプション型サービスです(図)。倉庫現場のオペレーションでは、経験と勘に頼る部分がかなりあります。当日出荷が当たり前になってきた最近では、朝の段階では1日の荷物量がまだ確定しておらず、倉庫内の状況は常に変化するので、綿密な作業計画が立てにくい。ベテランの管理者は各工程の状況を見ながら、「A工程からB工程に3人回してください」といった指示を出して、効率的に業務を進めています。こうした管理業務は属人化している上、熟練の管理者は多いとはいえません。Analyst-DWCは、倉庫現場の可視化によって課題の解決を図ります。

リフォーム体験で得たヒントから
「見積もらない営業」にシフト

株式会社YEデジタル 代表取締役社長 玉井 裕治氏
桔梗原 倉庫現場を可視化する仕組みはどのようなものでしょうか。

玉井 倉庫で動いている様々なシステムと連携し、すべての稼働データを収集してデータ基盤に格納し、それらのデータを基に、作業状況をリアルタイムで表示します。また、スタッフの配置をシミュレーションし、作業時間を予測する機能なども搭載しています。お客様からは「こういうものが欲しかった」という声が寄せられており、発売前から複数の予約注文がありました。Analyst-DWCは現在の倉庫運用を最適化するものであり、前述のMMLogiStationは自動化によって倉庫の運用そのものを変革するものという位置付けです。

 物流DXの取り組みのもう1つの柱が、ITカスタマサービスセンターの「Smart Service AQUA」(北九州市)内に今年1月開設した「物流DXサービスセンター」です。オンライン化された物流システム専用の運用拠点であり、物流業務と物流システムを熟知したプロフェッショナルが、お客様のシステム運用管理を引き受けます。当社が提供したシステムだけでなく、他社が導入したシステムを含めてトータルな運用管理を担います。

桔梗原 一種のアウトソーシングサービスですね。他社システムの運用も行うという点では困難があったのではないでしょうか。

玉井 私たちはこれまで、物流分野で様々なベンダーの製品を使ったシステム構築に携わってきました。同時に、ベンダー各社から多くを学び、ノウハウを蓄積してきたことによって実現できています。お客様は面倒なシステムの運用管理から解放され、倉庫自動化の企画・検討など、より付加価値の高い業務に集中することができるでしょう。システムの運用管理にとどまらず、改善提案や効率化支援などを含め、倉庫のシステム全体をサポートする一気通貫のサービスです。

桔梗原 物流DXを支えるソリューションに加えて、会社全体として進めている変革はありますか。

玉井 物流システム構築プロジェクトの進め方も大きく変わりました。最近取り組んだのは、「見積もらない営業」です。従来は、お客様の要件を詳しく聞いた上で、技術部門が工数などを細かく計算してお客様に回答していました。この方法では、回答までに数週間かかります。にもかかわらず、常に高精度の見積もりができたわけでもありません。そこで、思い切って見積もらない営業にシフトしたのです。

 きっかけは、私個人のマンションリフォーム体験でした。依頼したリフォーム事業者は、「広さ何平米」と伝えるだけで金額を提示してくれ、実際の費用もその金額内に収まりました。同じことが物流システムでもできるのではないかと考え、見積もりのためのツールを開発しました。営業担当者がお客様からいくつかのポイントを聞いて入力すると、その場で金額が弾き出される仕組みです。瞬時に回答できるのでお客様からも好評で、技術部門の負荷を大幅に軽減できました。


業務を汎用パッケージに合わせる
「つくらない開発」で
コスト・時間を節約

桔梗原 慣れ親しんだ見積もり業務を変えることに、現場の抵抗もあったのではないですか。

玉井 大いにありました。それが普通ですよね。しかし、そうした抵抗を突破するのが経営者の役割だと思います。見積もらない営業が軌道に乗って、次に取り組んでいるのが「つくらない開発」です。お客様からWMS導入を受注したとき、従来はかなりの量のカスタマイズが発生していました。このカスタマイズがプロジェクトを複雑にし、コストや時間がかかる要因ともなります。カスタマイズをなくせば、お客様はコストと時間を節約することができる。これが、つくらない開発です。そのため、WMSメーカーとの協業を進めています。

 WMSにはいろいろなものがありますが、広く活用されている汎用パッケージは限られます。こうした汎用のWMSパッケージに、お客様が業務を合わせればカスタマイズは不要です。そこで問われるのが、当社のコンサルティング能力です。既存業務を標準に合わせることに対して、お客様の理解をいかに得るか。そして、お客様の負荷を最小化しつつ、業務プロセスを変革しなければなりません。こうした方針のもと、今年1月に富士通との協業を発表しました。同社のWMSパッケージとMMLogiStationのシステム連携を軸に、物流センター関連サービスの価値を高めていきたいと考えています。
データを「つなぐ」から「活用」に発展させ
物流業界の課題解決に貢献したい
株式会社YEデジタル 代表取締役社長 玉井 裕治氏
桔梗原 最後に、物流に携わる企業へのメッセージをお願いします。

玉井 当社はこれまでデータを「つなぐ」ことに軸足を置いていましたが、一歩進んでデータを「活用する」ステージに入ったと感じています。日本全体を見ても物流データの活用はあまり進んでおらず、今後ますます切実な課題になるでしょう。その課題を解決する新サービスを次々生み出していきたいですね。特に注力したいのは、Analyst-DWCのようなサブスクリプション型サービスです。多様なサービスを通じて、物流におけるデータ活用とお客様の生産性向上に貢献していきたいと考えています。
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