これまでと同じ価格でAI機能が利用可能に
1982年に最初のバージョンがリリースされ、「PCで動く」ことでCADを身近な存在にしたAutoCAD。2021年からは、汎用的な2D/3D CAD機能を提供する標準版の「AutoCAD」と、AutoCADの機能に加えて業種別ツールセットや先進的なAI機能を装備した「AutoCAD Plus」の2製品を提供している。サブスクリプション料金は、前者は年間7万円台、後者は年間24万円台だ※
※ 料金は米ドルベースで決められており、日本国内での料金は為替相場に応じて変動する
2025年9月、オートデスク社は重大な発表を行った。その内容は、「AutoCAD Plusでしか使えなかったAI機能を、標準版AutoCADでも使えるようにする」というもの。しかもサブスクリプション料金はこれまでと同じ。つまり年間7万円台でAI機能が使えるようになったわけだ。このことは業界の内外で大きな注目を集めた。
2009年から続くAIへの挑戦
――オートデスクの長い歴史と取り組み
オートデスク株式会社
日本地域営業統括 チャネルセールス本部
業務執行役員 本部長
中井 進氏
AutoCAD PlusにAI機能が本格的に搭載されたのは2023年だが、その背景には長年の研究開発がある。「オートデスクによるAIへの取り組みは長い歴史を持っています」と語るのは、オートデスクの中井 進氏だ。
「オートデスクが最初に発表したAI関連の論文は、2009年のジェネレーティブデザインに関する論文でした。その後もAIに関する研究は続けられ、2018年にはAIラボも設立、現在までに査読済みの論文が90以上発表されています」と中井氏は話す。
同社が提供するAI機能「Autodesk AI」の大きな特徴は、「信頼できるAI」を追求していること。「製品のセキュリティーやプライバシー、コンプライアンス遵守のためにAutodesk Trust Centerにおいて、常に信頼できるAIであるかどうかの確認と情報公開を行っています」と中井氏は説明する。
Autodesk AIの機能がAutoCADに取り込まれたことで、AutoCADとAutoCAD Plusの主要機能は図のようになった。各種AI機能がAutoCADで利用できるようになった一方で、業種別ツールセットなどのより高度な機能はAutoCAD Plusだけの機能になっており、これらを利用したい場合にはAutoCAD Plusがお勧めだ。
AutoCADとAutoCAD Plusの機能比較
9月9日の発表で、AutoCAD Plusの各種AI機能がAutoCADでも利用可能になった。なお業種別ツールセットなどのより高度な機能は、引き続きAutoCAD Plusでのみの提供となる

チーム設計の一貫性維持と
効率化に寄与する4つの機能
オートデスク株式会社
日本地域営業統括 技術営業本部
業務執行役員 本部長
加藤 久喜氏
それではAutoCADに組み込まれたAIによって、具体的にどのようなことが可能になるのか。「AIを活用した主要な機能は、マクロアドバイザ、スマートブロック、マークアップ アシスト、オートデスク アシスタントの大きく4つあります」と説明するのはオートデスクの加藤 久喜氏だ。
まず1つ目の「マクロアドバイザ」は、ユーザーの操作や図面のコンテキストにもとづき、コマンドマクロを提案する機能だ。AutoCADは以前から、一連の操作やコマンド入力などを「コマンドマクロ」として定義し、それをワンクリックで実行できるようになっていたが、マクロアドバイザによって反復の多い操作をAIが見つけ出し、それを自動化するマクロを提案してくれるようになった。これを利用することで簡単に作業効率を高められる。
2つ目の「スマートブロック」は、AutoCADの「ブロック機能」をAIでスマート化したもの。ブロック機能とは「複数の単純な図形(線や円、文字など)」をひとまとめにして単一のオブジェクトにし、図面内で再利用可能にする機能。従来のブロック機能は「同一の図形要素」しか対象にできなかったが、スマートブロックではAIを活用することで、図面内に繰り返し使われている同一形状のオブジェクトを自動検出し、ブロック化や置換を支援できるようになった。同じ形のオブジェクトが図面内に複数存在する場合、それらを共通のブロックとしてまとめることが可能だ。これにより、複数の設計者が作業する際の不一致を解消し、図面の一貫性を保つことが可能だ。
「例えばオフィスレイアウトを複数の設計者で作成する場合、配置する椅子の形が設計者によって微妙に異なることは珍しくありません」と加藤氏。こうしたケースでスマートブロックの検出機能を使えば、検索元となるブロックがなくても、図面内で繰り返し使われている同一形状のオブジェクトを自動的に検出し、統一化したブロックに置き換えることができるわけだ。
「どのようなブロックにすべきかも、膨大なブロックライブラリの中から最適なものを推奨します。配置の向きが異なるオブジェクトに対しては、その向きや周りの状況に合わせたブロック挿入を行うようになっています」(加藤氏)
スマートブロックの説明動画
図面全体をスキャンして類似の図形要素を識別し、それらをブロックに一括変換できる。配置の向きが異なる場合でも、その状況に合わせて自動的に最適なブロック挿入が行われる
3つ目の「マークアップ アシスト」は、PDFなどで出力された図面に書き込まれたマークアップ(修正指示など)をAIが識別し、図面の上にオーバーレイするとともに、指示に対応した図面修正などを行う機能。PDFのほか、JPEGやPNGに書き込まれたマークアップも読み込んで識別できる。
最後に4つ目の「オートデスク アシスタント」は、オートデスク製品やサポートに関する質問や問い合わせを、チャット形式で行える仮想エージェントだ。単なるチャットボットではなく、AIだけでは解決できない問題については、担当者とのライブチャットやコールバック予約なども実行してくれる。
なお、AIは活用されていないものの、これまで制限されていた「アクティビティ インサイト」の作業履歴を時系列で確認・比較できる機能も今回の変更で使えるようになっている。
AU 2025で発表された
Autodesk AIの近未来
このようにAutodesk AIは、日常的な設計業務で煩雑だった作業を効率化・自動化でき、複数メンバーによる設計の一貫性の維持も容易にする。設計現場の様々な悩みを解消できる、現実的かつ堅実なAI活用の形だといえるだろう。
ただしAutoCADにおけるAI活用は、これが完成形というわけではない。2025年9月に開催された「Autodesk University 2025(AU 2025)」でAI技術に関する様々な発表が行われており、今後もさらなる進展が期待できる。
「AU 2025は『Design & Make』をテーマとし、初めてAIに特化した基調講演が行われました。単なる新技術展示の場ではなく、AIがいかに人間の創造性を増幅し、設計から製造までの全プロセスを変革できるのかが示されたのです。建築・エンジニアリング業界や製造業界、メディア・エンターテインメント業界などの第一線で活躍する1万2000人以上の人々が集結し、Design & Makeの近未来の姿が共有されました」と中井氏は語る。
その中でも特にインパクトが大きかったのが「ニューラル CAD基盤モデル」の発表だ。これは生成AIを活用した次世代の3D設計エンジンで、CADオブジェクトや産業・建築システムを直接推論し、人間の意図を理解して設計を自動生成できるもの。これをオートデスクの主力製品に搭載することで概念設計から詳細設計へのシームレスな橋渡しを行い、専門家でなくても高度な設計が可能になる「設計の民主化」や、これまでの常識を遥かに超える「生産性の飛躍的向上」を実現しようとしているという。
AutoCADの採用は、前述のようなAI機能を現在の設計業務に取り込めるだけではなく、このような未来に向けた投資にもなり得る。AI時代にふさわしい設計力を備えていくためには、有力な選択肢といえるだろう。

購入に関する問い合わせ
オートデスク株式会社
TEL:0120-612-560
URL:https://www.autodesk.com/jp/campaigns/inside-advisor/contactme-autocad


