

生成AIの進展とAIがネットワーク化された社会の到来により、ビジネスや人々の暮らしが大きく変わろうとしている。生成コンテンツの種類はテキストに限らず、画像、動画、音声などに拡大を続け、AIの進歩に伴いAI学習とAI推論の通信トラフィックが爆発的に増えるほか、データ収集やコンテンツ生成のポイントもデータセンターからエッジデバイスまで広がる。通信事業者各社がこの状況に対応するためには、これまでとは異なる技術・アーキテクチャを用いた次世代型ネットワークを構築することが不可欠だ。サービスプロバイダーやグローバルクラウドプロバーダーにネットワーキングのサービス、ハードウエア、ソフトウエアを提供する企業・シエナのキーパーソンに、求められるアプローチを聞いた。

クラウドやモバイルデバイスなどの普及により、地球上の通信トラフィックが一貫して増大している。2022年ごろに登場した生成AIは、これに一層拍車をかけるだろう。既存のクラウドトラフィックに加えて、AI学習・AI推論などに用いられるGPUサーバーの高集積環境向けトラフィック、ユーザーが持つエッジデバイスとの間のトラフィックなども大きく増えることが予想されるからだ。
「生成AIのマルチモーダル化の進展、企業におけるRAG(Retrieval-Augmented Generation:検索拡張生成)活用の増加などを踏まえると、トラフィックの増大は今後も加速していくでしょう」とシエナのガウタム ビラ氏は語る。
この状況を踏まえて、世界中で既存ネットワークインフラの最適化や新たなネットワーク構築が喫緊の課題になっている。AIによる情報処理を確実に行うためには大量のデータを遅延なく送受信出来る必要がある。サービスプロバイダーやデータセンター事業者、ハイパースケーラー※の基盤となるネットワークには、増え続けるトラフィックを高速かつ安定的に処理できる能力が求められている。
そこで注目を集めるアプローチがAIネイティブな分散型ネットワークモデルである。AI学習、AI推論に利用されるコンピューティングリソースをコアからエッジへ分散配置して、メッシュ状に構成する(図1)。これにより大量のデータを高速かつ低遅延で処理するAIワークロードの要件に応える事が可能となる。
データセンターを分散させて、なるべくユーザーの近く(エッジ)に配置する。これにより、より低遅延・高品質なネットワークの提供が可能になる
また、このモデルが注目を集める背景にはもう1つ要因がある。データセンターの消費電力の問題だ。現在は、サーバーの高集積化によってラック当たりの消費電力が増大。AIの利用拡大によってGPUサーバーの利用も増えている。GPUは高性能かつ高効率なAI処理が行える半面、CPUに比べて大量の電力を必要とする。1つのデータセンターにリソースを集中させると消費電力が急増し、その拠点や地域の発電・配電網のキャパシティを超えてしまう可能性があるからだ。
AIネイティブな分散型ネットワークモデルにすることで、データセンター当たりの消費電力を抑制できる。電力の地産地消にもつながることから、社会的にもニーズが高まっているのである。
「つまり、生成AI時代のデータ活用ニーズに応えるためには、ネットワークインフラを最適化する必要があります。コアからエッジに至るまで、ネットワーク設計者はスケールと信頼性の概念を再考する必要があります。ネットワーク運用はアジャイルで、API主導で、そしてシンプルである必要があります。」(ビラ氏)。これは世界全体の潮流であり、日本のネットワークインフラにも当てはまることといえる。
※100万台以上のサーバーを保有するクラウドサービスプロバイダー

サービスプロバイダーやグローバル・クラウドプロバイダー各社の取り組みを支援するのがシエナだ。世界的なネットワーキングのサービス、ハードウエア、ソフトウエア企業であり、デジタルコヒーレント光伝送技術のパイオニアとして、メトロ/コア/データセンター間のネットワークから海底ケーブル通信まで、様々な領域に高度な光通信技術と製品・ソリューションを提供している。
シエナがリファレンスとして提唱するネットワークコンセプトが「アダプティブ・ネットワーク」だ。従来型の静的なネットワークから、分析と自動化技術を組み込んだ動的かつ分析主導型のネットワークに変革するアプローチである。
「その実現に向けては3つの要素を考えることが重要です」とビラ氏。1つ目は「プログラマブルなインフラ」だ。インフラのリソースプールを動的に最適化、常に変化する状況に合わせて速やかに組み替えられる(プログラマブル)ようにすることである。「シエナは、幅広いトラフィックパターンと需要シナリオに対応するプログラマブルな光伝送、ルーティング、スイッチングの包括的なポートフォリオによって、その実現を支援しています。世界トップクラスのハードウエアと高度なソフトウエア制御を組み合わせることで、アダプティブ・ネットワークのコンセプトを実現するための強固な基盤を構築することができます。」とビラ氏は説明する。
2つ目が「分析とインテリジェンス」だ。大量のデータをリアルタイムに監視・分析することで、ネットワークの潜在的な問題を高精度に予測。これにより、障害やその結果として起きる機能停止に陥る前に、注意すべきトラフィックパターン、脆弱性を内在している可能性があるネットワークの場所などを積極的に把握して対処する。分析によって得られる高度なインサイトを、人の意思決定の高度化に役立てることも可能になるという。
そして3つ目が「ソフトウエア制御と自動化」である。エンド・ツー・エンドのネットワークに対し、サービスのライフサイクル全体を管理して自動化する。具体的には、Navigator NCSのインテリジェント機能を活用することで、ネットワーク障害につながる兆候の把握や障害原因特定を容易にするなど、運用負担を削減。同時に、ネットワークの稼働状況を最適化して安定運用を継続的に実現する。「世の中の多くのネットワークは複数ベンダーの機器で構成されています。シエナ製品は、オープンAPIを使用して相互運用を可能にし、マルチベンダーからなるネットワークを自動化することも可能です」と日本シエナコミュニケーションズの今井 俊宏氏は話す。
さらにアダプティブ・ネットワークを実現・運用していく中では、新技術を積極的に取り入れながら進化を図ることも欠かせない。例えば通信事業者であれば、顧客であるハイパースケーラーの帯域需要を満たすネットワーク環境を継続的に提供していく必要があるだろう。そこで今、注目を集めているソリューション・ストラテジーが「MOFN(Managed Optical Fiber Networks:マネージド光ファイバー・ネットワーク)」である(図2)。
大容量コヒーレント・トランスポンダ、柔軟なオープン・ライン・システム(OLS)、革新的な管理・監視ソリューションで構成される、サービスプロバイダーおよびハイパースケーラ・ネットワーク向けに設計されたアーキテクチャと柔軟なビジネスモデル。MOFNは、専用ファイバー・ネットワーク、バルク波長による容量拡張、スペクトラム・リースなど、様々な消費モデルを利用できる。
シエナでは、このMOFNビジネスモデルを軸とした大容量・低遅延ネットワークを、柔軟に設計・構築・運用できるようにするサービスを提供している。これにより、AIネイティブな分散型ネットワークモデルの実現を強力にサポートするという。
「私たちは業界をリードするWaveserver、オープン・ライン・システム(OLS)、業界最大容量を提供するWaveLogicコヒーレント光伝送技術などにより、業界をリードするデータセンター相互接続(DCI)プラットフォームを提供することで、MOFNを実現する支援をしています」とビラ氏は語る。「加えて、MOFNの計画、展開、運用においてサービスプロバイダーをサポートする広範なサービスを提供しており、MOFNソリューションの包括的なネットワーク監視を実現するNavigator NCSで革新的な管理ソリューションを提供しています」
さらに一連の製品を活用したネットワークインテグレーションサービスも提供する。「新たな時代に対応した高効率なネットワークの実現、および新しいビジネスモデルの確立をサポートすることで、お客様のビジネスチャンス拡大と収益増に貢献します」と今井氏は強調する。
なお、グローバル展開する企業の製品・ソリューションを利用する場合、不安要素になりがちなのが国内のサポート体制だ。しかし、シエナであればその点も心配無用だ。国内に事業拠点を置き、専門のサポート体制を整えている。
「日本シエナコミュニケーションズとパートナー企業のエンジニアによって構成されるサポートチームが対応に当たります。ネットワーク全体の設計、機器の提供から構築、検証までトータルにご支援可能です」(今井氏)。稼働後のトラブルや問い合わせにも迅速に対応する。もちろんグローバルレベルの連携によるサポートも可能だ。
さらに、大規模ネットワーク環境を構築する際に考えなければならないのが環境への負荷だ。これについてシエナは、冷却効率を高めた製品の開発など、脱炭素社会の実現に向けた取り組みにも力を入れている。先に触れたデータセンターの消費電力問題の解決に加えて、環境負荷低減の観点でも、シエナの製品を活用することは意義があるだろう。
生成AIをはじめとする最新技術を、スムーズにビジネスや暮らしに取り入れる上で、高度なネットワーク環境は不可欠だ。シエナは、業界トップクラスの技術とソリューションの提供を通じて、社会基盤となるネットワークの高度化を強力に推進していく。