建設・不動産業界におけるサーキュラリティ(循環型経済)は、大量の資源消費と廃棄物排出という業界特有の課題に対応するために重要なアプローチとなる。従来の「生産、使用、廃棄」という直線的な経済モデルから脱却し、資源の利用を最適化し、廃棄物を最小限に抑え、バージン素材を使わないことを目指す。環境コンサルタントをファシリテーターに、設計事務所と不動産会社の視点からディスカッションを進めた。
先行する海外のサーキュラリティ
英国、ドイツでの先進事例
堀江氏 サーキュラーエコノミーは、脱炭素(ネットゼロ)やネイチャーポジティブといった概念と密接に関連している。建築分野においては、ライフサイクル全体での炭素排出を考慮する「ホールライフカーボン」の考え方が重要であり、特に解体段階と次のライフサイクルでのリユースがサーキュラリティに関係している。
英国のロンドンの事例を紹介する。開発にはホールライフカーボン・アセスメントとサーキュラーエコノミー・ステートメントの提出が必要である。ロンドンの設計事務所では、新築よりも既存建物の再利用を優先する考え方が主流になっている点に注目したい。
建築・不動産におけるサーキュラーエコノミーの方向性として以下の3つが挙げられる。
(1)解体しないでリノベーションする、(2)解体を考えて設計する(DfD:Design for Disa-ssembly)、(3)建材のリユース・リサイクルを促進する。
ドイツでの例を紹介する。(1)の事例では200mmの外断熱を施工した物件に、解体を行わずさらに外断熱を加えて機能を向上させたりしている。(3)のケースとしては「マテリアルパスポート」と呼ぶシステムがある。建築素材の種類、寿命、設置場所を登録して、将来的な再利用に備える仕組みだ。
サーキュラーデザインを重視
オリンピック選手村ビレッジで
実現
金子氏 日建設計はサーキュラーデザインを重要視している。地球規模での資源消費が持続可能な量を超えており(地球全体で1.7倍、日本では6.4倍)、建築材料の資源枯渇(鉄鉱石は70年、石油は45年)が迫っている。また、産業廃棄物の最終処分場も国内で17年分、首都圏では6年分しか残っていないという課題がある。
先の東京オリンピック2020の選手村ビレッジプラザの設計事例を紹介する。全国63自治体から提供された木材を使用し、大会後に各自治体に返却して再利用するというスキームを実現した。
このプロジェクトではマテリアルパスポートを活用し、ボルト接合による解体しやすい設計を採用した。
高まる再生建築のニーズ
社会的インパクト不動産に注目
松本氏 東急不動産は、循環型社会の社会的インパクト不動産実現と再生建築の取り組みに力を入れている。「COERU(コエル)」というブランドで展開している再生建築では、築40~50年の既存建物の主要構造部分(スラブや柱)を活用しながら、オフィス等に生まれ変わらせるプロジェクトがある。
東京23区の中小規模オフィスビルの約8割が築20年を超えており、そのうち2割が旧耐震基準であることから、今後再生建築のニーズが高まると予測している。
再生建築は通常の新築建替えと比較してCO2排出量と廃棄物を約9割削減できると試算できる。環境負荷の大幅な削減が可能だ。
堀江氏 サーキュラーエコノミー推進のためのに必要と思われるもの、そして不動産価値への反映方法などについてどう、考えているか。
金子氏 「ナロー・スロー・クローズ」(少なく作る、長く使う、循環させる)という3つの視点の重要性を強調したい。どのような思想で建物をつくるのか、関係者が共有して取り組むことが重要。
松本氏 認証制度よりも指針の必要性や経済的メリットの視点を持つことが大切だ。マーケットを作っていかなければ取り組みは進まない。
サーキュラーエコノミーの取り組みを不動産価値に反映させる方法として、「社会的インパクト不動産」の概念が大切で、定量化や可視化することで、金融機関の理解を得ることが今後の課題となる。
※所属・肩書は2025年10月29日時点のものです。















