【主催者パネルディスカッション】

アーバン・ネイチャーポジティブ、
ネットゼロの同時達成に向けて

〈モデレーター〉

〈パネリスト〉

日経BP 総合研究所
フェロー

安達 功

〈パネリスト〉

日経不動産マーケット情報
編集長

岡 泰子

日経コンストラクション
編集長

眞鍋 政彦

日経アーキテクチュア
編集長

木村 駿

日経クロステック建設
編集長

佐々木 大輔

安達 ネイチャーポジティブ(NP)カーボンニュートラル(CN)サーキュラーエコノミー(CE)を同時に達成するというより、これらをつなげて上向きの取り組みができるのではないかと考えている。

わかりにくい概念こそ
可視化が重要になっている

佐々木 基調講演で東北大学の藤田香教授が、いま挙げた3つを統合的に進める重要性を強調していた。特に企業価値と地域価値の向上を同時に考える視点や、見える化が大切だ。大阪・梅田のグラングリーン大阪や大阪・関西万博の「森になる建築」が好例だが、取り組みを進めるには、デザインの力が重要になる。

真鍋 科学的アプローチによるアーバンネイチャーポジティブについて2点を強調したい。1点目は「ウェディングケーキモデル(自然資本の上に社会経済活動が成り立つという考え方)」の重要性で、自然があってこその社会経済という視点をもっと広める必要がある。2点目はミティゲーションヒエラルキー(回避、最小化、復元、オフセット)の考え方で、現場での工夫をデータとして実証し、次世代に伝えていく。

木村 木造建築に関するパネルディスカッションでは、コストとプライスの議論が活発だった。各社が競争力確保のために独自の仕様で囲い込む傾向がある中、今後は競争と協調をどう切り分けていくかが課題になるだろう。また、シェルターの安達氏が触れた木造の解体設計が興味深い。ピンで簡単に解体・再利用できる技術の可能性に注目している。

不動産の観点から、講演で「可視化」というキーワードが頻繁に出てきたことが印象的だった。不動産業界は透明性が低く、ネイチャーポジティブのような分かりにくい概念こそ可視化が大切になる。また、木造建築は単体でも取り組みやすく、テナントにとっても分かりやすいため、ネイチャーポジティブへの第一歩として高いポテンシャルがあるのではないか。

キーワードはつなぐこと
業界からの情報発信が必要

安達 それぞれの専門領域から、NP、CN、CEの融合がもたらすビジネスチャンスとリスクについて、どう考えるか。

不動産において、ネイチャーポジティブへの投資にはリスク認識が強く、初期投資の増大や工期の延長、維持費の増加などが懸念されている。投資を促進するためにはやはり、投資効果の可視化が不可欠になる。一方で、テナントの募集が好調だった木質オフィスビルや、グラングリーン大阪のように周辺エリアの賃料上昇にもつながった事例に注目したい。

木村 「リジェネラティブ」というキーワードがある。サステナブル(持続可能)よりも一歩踏み込んだ「再生・回復」の考え方が建築分野で広がっている。実現するためには、人材育成・リスキリング、企画・設計・施工・運用の統合、データ活用、そして土木など異分野の知見を建築に取り入れることが重要だ。大阪・関西万博のパビリオンでは、廃材のアップサイクルや解体・移設を前提とした設計など、サーキュラーな取り組みが進んだ。

真鍋 建設行為自体が自然改変によるリスクを持つ一方、現場の工夫次第でチャンスにもなる。ボトムアップ型の取り組みが可能である一方、オフサイトでの自然回復やクレジットなども含めた総合的なアプローチが必要になる。また、グリーンインフラの考え方をさらに発展させ、自然をなるべく壊さない計画段階からの「グリーンな発想」が重要だ。さらに、地方創生においては他産業との連携が鍵であり、日本の自然共生の知見を国際標準化していくビジネスチャンスがある。

佐々木 世界では環境規制が急速に進んでおり、日本でも2028年にはエンボディドカーボンの算定義務化・表示制度が創設されるなど、対応が急務になっている。気候変動への危機感から欧州を中心に規制が進み、ニューヨークの「ビッグU」プロジェクトのような防災と地域機能を両立させる取り組みも出てきている。こうした変化に対応するためには、デジタル技術の活用や業界横断的な取り組みが重要になる。早期に動き出すことがチャンスをつかむ鍵だろう。

安達 キーワードは「つなぐ」こと。加えて「ウェディングケーキモデル」も意識すべきだろう。業界からの情報発信の必要性が高まっている。

※所属・肩書は2025年10月29日時点のものです。

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