

プロダクト、コミュニティを軸に「エコシステム」の深化に取り組む

5連覇となった「クラウド情報系サービス」部門に加え、「業務効率化・内製支援ソフト/サービス」部門も2連覇。この2部門を今回も制したのがサイボウズである。同社のビジネスは、パートナー企業との協業が前提となる「エコシステム」が重要なキーワードであるため、パートナー満足度は極めて大きな意味を持つ指標だ。満足度を高めるため、どんな取り組みを強化しているのか。協業の拡大、コミュニティ育成の2つの側面から聞いた。
直感的に使えるkintone3つの領域でさらなる展開へ
サイボウズ株式会社
営業本部
副本部長
パートナー統括
石井 優氏
「サイボウズビジネスの展開には、パートナー企業の協力とそれに基づくエコシステムの構築が必須です。パートナー企業の満足度は最も重視する指標の1つで、継続して高い評価を頂けたのは率直にうれしいですね」。2部門での連続No.1評価を受け、営業本部の石井 優氏はこう語った。
ビジネス環境が目まぐるしく変化する中で、高評価を継続するのは簡単ではない。サイボウズがそれを実現した背景として、事業戦略室の蒲原大輔氏は1つの数字を挙げた。ノーコード/ローコードで業務アプリを開発できるkintoneを導入する際、導入担当者の約93%が非IT部門。「現場で直感的に使えるのがkintoneの強みであり、ビジネス環境の変化にも迅速に対応でき、成果を上げられるところが評価されていると思います」
ビジネスをさらに強化するための注力領域として取り組んでいるのは「セミオーダー」「エンタープライズ」「DX人材育成」の3つだ。セミオーダーは、kintoneをベースに作られる業種業務特化型のアプリパッケージのこと。パートナーは、自社の得意分野や専門知識を活かしてパッケージ化することで効率的に販売ができるほか、ユーザーにとっては専門ソフトよりも低価格かつ手軽に導入できるというメリットもある。
これらに加え、パートナー評価制度にセミオーダー部門を設けるなど、パートナーを通じた展開を着実に進めている。
エンタープライズに関しては、2025年1月に関連機能を1つの事業部に統合し、大手企業向け施策を強化した。強化策の1つが「ワイドコース」と呼ぶ大規模利用に特化したプランだ。「専用機能を追加し、利用可能なアプリ数・スペース数・APIリクエスト数を他コースより拡大することで、大規模利用を円滑にする狙いがあります」と蒲原氏。大手企業がより最適なパートナーを選択できるようにするため、大規模案件を手掛けるパートナー企業を認証する制度も設けている。
DX人材育成では、kintoneユーザーから得られたノウハウを元に、ガイドラインや事例集、オンデマンドセミナーなど多くのコンテンツを提供している。
また、パートナーの中には、DX人材育成を目的として、kintoneを使った実践研修をビジネスにしている企業もいるという。「人材不足が叫ばれる昨今において、非IT人材でも学びやすく簡単に使えるkintoneは、現場でDXを始めるにはぴったりのツールといえます。まだまだアナログな業務が多く残っている企業にこそ、ぜひkintoneをきっかけとしてDXにチャレンジしてもらえたらと思います」と蒲原氏は期待を寄せる。
AIや基幹システムとの連携でkintoneの可能性を広げる
サイボウズ株式会社
事業戦略室
kintone
プロダクトマーケティング
マネージャー
蒲原 大輔氏
実際には、パートナー企業とどのような協業が進んでいるのか。蒲原氏は住信SBIネット銀行、長崎県西海市の2つの事例を紹介した。
「どちらもkintoneを導入していただき、そこに各パートナー企業が持つ生成AIソリューションを組み合わせた事例です。金融機関や自治体の現場においても、kintoneで情報の一元化と共有を進めると同時に、業務理解を深めさせた生成AIで業務効率化が広がってきています」(蒲原氏)
生成AIのビジネス実装は今後ますます加速していくだろう。製品としても、今年の1月より一部のkintoneユーザーにAI機能のベータ版提供を行っている。そこからフィードバックを受け、可能性を模索しながら次のフェーズへの準備を整えているという。
また、蒲原氏が「フェーズが1つ上がった」と感じているのが、基幹系システムとkintoneとの連携だ。パートナー企業にはユーザー企業の基幹系導入に携わっているところも多い。「そこをきっかけにして、kintoneを使った情報共有など周辺業務のためのシステムと基幹系システムをつなぐ事例も生まれています」
こうしたパートナー企業やユーザーとの積極的な連携により、エコシステムの構築や深化に向けて手応えを感じているという。
パートナー、ユーザーとの多様なコミュニティイベント
様々な取り組みを進める中で、課題はどう位置付けているのか。kintoneに関して、石井氏は「特定の業務改善で終わっているケースが多いこと」を挙げた。
「よりユーザー企業内で幅広く活用いただくための機能強化と市場への訴求を通じて、エンタープライズ企業においても全社導入を増やすことを狙っていきます」(石井氏)
実際、業務改善につながるノウハウを披露・共有するイベント「kintone hive」には、多様な用途でkintoneを活用しているユーザーが集う。「業務改善に成功した他企業の生の声に触れると、すんなり腹落ちするケースが多いようです。こうした交流から広がるコミュニティがサイボウズの大きな強みと言えます。ユーザーメリットが大きいだけでなく、パートナー企業からは提案や展開がしやすくなるという評価を頂いています」(石井氏)
エコシステムを深化させる取り組みは、パートナーに対しても積極的に行なっている。
毎年恒例のパートナー限定イベント「パートナーミーティング」は、ビジネス概況やプロダクト開発のロードマップ報告のほか、顕著な実績を挙げたパートナーを表彰する授賞式も盛り込んだ内容で、2024年の東京、大阪での開催時には申し込み枠が短期間で埋まったという。2025年は規模を拡大し、名古屋、仙台、福岡でも開催される予定である。
エコシステムを広げ、深めるため、パートナー企業の重要度はより増していく。
「次回調査でもNo.1の評価を頂けるよう、様々な領域でパートナー支援を強化していきたいと思います」。石井氏は決意を込め、そう語った。