
数々の名作アニメーションを手掛けてきた旭プロダクション。デジタル作画や3DCGなど、技術の進化とともに作品の質も向上させてきたが、ネットワークやサーバーへの負荷が増大したことで課題を抱えていた。具体的には部門間のコラボレーションが増える中で、データのやり取りが既存のインフラの限界を超え、トラブルが頻発していたのだ。そこで同社では、データプラットフォームの刷新を決断。高い耐障害性と柔軟な拡張性を持つデル・テクノロジーズのDell PowerScaleを採用した。これにより、様々な課題を一挙に払しょくするとともに、クリエイターたちの作業効率も飛躍的に向上したという。

1973年の設立以来、アニメーションからプロモーション映像まで幅広い作品を手掛けてきた旭プロダクション。同社はデジタル作画、撮影、編集に加え、特殊効果や2Dデザイン、3DCGなど、すべての工程をカバーできる技術と総合力を強みに、「機動戦士ガンダム」など、数々の有名作品の撮影に携わってきた。また「魔法少女にあこがれて」「アルスの巨獣」などのオリジナル作品も多数手掛けており、150人以上のスタッフがグローバルなアニメーション業界に新風を送り続けている。
株式会社 旭プロダクション
管理本部 人事総務部 システム班
マネージャー
本田 拓望氏
同社ではここ数年、特殊効果やCG、デジタル作画など、部門の壁を越えたコラボレーションが増加してきたことで社内ネットワークのトラフィックやサーバーへの負荷が増大。ネットワークダウンやサーバー停止などの障害が多発する状況に頭を悩ませていた。
「作品量の増加やコンテンツのリッチ化に伴い、社内シナジーを生み出すための大量のデータのやりとりが既存環境の限界を超えている状態でした。ネットワーク環境は早くから10Gに増強していましたが、それでも週1回は何かしらのトラブルが発生し、制作に全精力を傾けているアニメーターやクリエイターたちに多大なストレスを与えていたのです」と話すのは、同社のシステム環境を一括してインテグレートしている本田 拓望氏だ。
既存環境では5台のWindowsサーバーが社内に散在し、各部署に配置されたNASを介して計147TBのストレージが分割利用されていた。このため素材データの容量が年々増加するにつれ、コピーや移動に遅延が発生。またバックアップに時間がかかるという課題も顕在化していたという。
「同じ素材を各部署がコピーして使う状態が慢性化し、重複データの増大に加え、マスターデータの所在も分からない状態になっていました。こうした環境ではネットワークやサーバーの負荷が高まるばかりか、重要データを誤って削除してしまうヒューマンエラーも頻繁に起きてしまいます。そこで、データを1カ所に集約することで活用効率を高め、社内シナジーを最大化できる環境をつくりたいと長年考え続けてきました」(本田氏)
2021年にはWindowsサーバーの1台が致命的なトラブルを起こし、一部のデータが消失してしまうインシデントが発生。冗長化を図っていたほかのサーバーからデータは復元できたものの、これを機に同社はストレージ環境の刷新を決断する。
「一定期間ごとに膨大なデータの引っ越しを伴うサーバーリプレースではなく、継続的に資産を守り続ける強固なデータプラットフォームの構築を目指しました」と、本田氏は当時を振り返る。

新たなデータプラットフォームの要件として本田氏はまず、「耐障害性を飛躍的に高めること」「容量の追加やリプレース時に業務停止を最小限にできること」という2つのテーマを設定した。
「そのほかにも、運用保守の工数を削減できること、ユーザーの快適性を高めること、情報漏えいリスクを最小化できることなども要件に挙げ、独自に機器選考を行いました。その結果、すべての問題を効果的に解決できるのはデル・テクノロジーズのDell PowerScaleしかありませんでした」(本田氏)
Dell PowerScaleは、世界最高水準の安全性、柔軟性、効率性を備えたスケールアウト型NASプラットフォーム。独自の分散ファイルシステム「OneFS」により、大容量データを単一のファイルシステムで管理可能だ。
またDell PowerScaleではデータの書き込み要求が発生した場合、OneFSが自動的に各ノードに分散してデータとパリティを書き込み、データの読み取り時には、どのノードにアクセスしても同じデータにアクセスすることができる。この仕組みにより、1つのノードの障害やノードを跨ぐストレージに障害が起こっても、データを安全に保てる。この独自の特長が、耐障害性を何よりも重視する同社の要件に合致した。
「いくらサーバーの冗長性を図っても、障害時の切り替えでは必ずダウンタイムが発生します。トラブル発生時にシステム自体が起き上がってこないケースも少なくなく、既存のサーバーに依拠したストレージ運用は、もう止めたいと考えていました。その点、Dell PowerScaleは1シャーシに4ノードが入っていて連結したクラスタを形成しているので基本的に止まることがありません。デル・テクノロジーズの検証機を試させていただいた際も、ノードを2本同時に抜いてしまっても止まらないことを目の当たりにし、“これだ”と確信しました」と本田氏は強調する。
本田氏に対してデル・テクノロジーズは、アニメーション業界への導入で強みを持つSIer「テクマトリックス」を紹介。具体的な要件定義の作業がスタートした。テクマトリックスは旭プロダクションの要望に最適なシステム構成として、Dell PowerScaleのミッドレンジモデル「H500」と、5年後まで不足することのない356TBのストレージ容量を提案。社内ユーザーや経営層に向けた両社の積極的なプレゼンも好評を博し、2022年12月からの導入検証を経て、翌2023年4月には本稼働している(図)。
導入されたDell PowerScale H500(容量356TB)は10GベースのL3/L2スイッチを介して、
撮影部やCG部などのクライアント/レンダリングマシン約160台と連結され、スピーディーで効率的なデータ活用が行われている
「実稼働が始まって数カ月が経ったころ、ファイルアクセスのレスポンスが若干遅くなっているという声がユーザーから上がってきました。テクマトリックスに相談したところ、問題の切り分けを迅速に行っていただき、ソフトウエア側の設定がボトルネックになっていることが判明しました。早速チューニングしていただいたところ、すべての問題が解決しました。デル・テクノロジーズ製品とアニメーション業界のシステムそれぞれに精通したノウハウを持つテクマトリックスにお任せして本当に良かったと思います」と本田氏は話す。

Dell PowerScaleの導入により、ユーザーの快適性は飛躍的に向上した。
「ネットワークトラフィックが整理されたことで、160台のクライアントマシンからのサーバーアクセスやデータのコピー・移動などがストレスなく行えるようになりました。10Gのネットワークインフラがようやくフル活用できるようになったイメージです。ストレージが356TBに拡張されたことで容量不足に悩むこともなくなりました。従来なら日々何かしら上がっていた現場からのクレームを、ここ1年聞くこともありません。これは快適性が向上した何よりの証拠です。Dell PowerScaleの導入によって部門の壁を越えたシナジー効果が最大限に生かせる環境になったと考えています」(本田氏)
5台に分散したサーバーとNASがDell PowerScaleに統合されたことによる省スペース化・省電力化も大きなメリットだ。マルチベンダーの機器で構成されていた従来システムの保守コストも大幅に下がり、運用管理やメンテナンスも一元化された。
「Dell PowerScaleに社内のデータがすべて集約できたため、同じ素材を各部署がコピーして使っていたデータ重複の悩みも解消しました。今後は重複排除機能も活用することで、さらに効率的なストレージ運用を進めていきます」(本田氏)
Dell PowerScaleが備える様々な機能はストレージ運用の管理負担軽減に役立っている。例えば、負荷分散機能の「SmartConnect」はその1つ。クライアント接続をクラスタ全体にわたって自動的に均等化することにより、ストレージのパフォーマンスと可用性を最適化。常にシステムを安定的に稼働させる。
また、スナップショット機能「SnapshotIQ」は、バックアップが必要なデータをディレクトリあるいはサブディレクトリ単位ですばやくバックアップし、細かな復元ポイントを自動的に生成する。クラスタストレージプール全体としては無制限、単一ディレクトリとしては最大1024世代までスナップショットを作成できるため、煩雑なバックアップ業務を大幅に軽減する。
「Windows Sever標準のVSS(ボリュームシャドウコピー)では最大63.8TBまでしかスナップショットを撮れません。しかしSnapshotIQなら限界なくオンラインバックアップが行えるので、ユーザーがうっかりデータを削除してしまうようなミスにも安心して対応できます。制作中の作品が入れ替わる5日分のスナップショットで間に合うところ、現在は余裕を持って2週間分を確保していますが、作品放映後に1~2日かかっていたデータのバックアップ作業が、今では全く必要なくなりました」(本田氏)

「ようやく理想とする業務環境が構築できた」と語る本田氏の次なるテーマは、セキュリティーの強化だ。
「アニメーション業界にもランサムウエア攻撃が年々増加しており、当社だけでも月間2万件を超える不正アクセスが判明しています。セキュリティー対策には従来から力を入れてきたつもりですが、テレビ局や映画会社、グローバルなネット配給会社など、お取引先の方々にご迷惑をかけないためにも、さらなる対策強化を図ることが重要な企業責任だと考えています。そこで現在、デル・テクノロジーズやテクマトリックスに支援していただきながら、Dell PowerScaleのデータを守るエアギャップとSuperna社が開発したランサムウエア対策ソリューションの導入を検討しているところです」(本田氏)
Dell PowerScaleによって、クリエイティビティを最大化できるシステム環境の構築に成功した旭プロダクション。同社は今後も高信頼・高セキュアなストレージプラットフォームをベースに、世界に感動を与える高品質なコンテンツを送り続けていく考えだ。