医薬の未来を創造するために

450名以上のプロフェッショナルが支援 AIとデジタルの登場で製薬業界に求められる人材

歴史的な転換点に立つ製薬業界。従来の研究開発手法には限界が見え始め、AIやデジタル技術の活用が業界の未来を左右する重要なカギとなっている。その変革の最中で、製薬企業はどのような道を歩んでいくべきなのか。

1製品あたりの売り上げは減り、コストは増大
転機に直面する製薬業界

私たちが普段服用する薬が開発されるまでには、気の遠くなるほどの長い年月が費やされている。

1製品あたりの研究開発期間は、じつに10年以上。だが、開発の成功確率はわずか数万分の1と言われている。製薬企業が投じた膨大な時間と巨額の費用が、無駄になってしまうリスクは極めて大きい。

大川氏
デロイト トーマツ コンサルティング合同会社
執行役員 ライフサイエンス&ヘルスケア
大川 康宏
ライフサイエンス&ヘルスケア業界に20年以上従事。製薬企業を中心に、医療機器企業、保険企業、製造業、テクノロジー企業を支援。イノベーションを通じた持続的成長をコンセプトとし、事業ビジョン、事業戦略、組織変革、R&D戦略、オペレーション変革、DXなどのプロジェクトを手掛ける。

「その一方で、製品化に成功すれば、百億円から数千億円の売り上げが得られる可能性もあります。製薬業界は、典型的なハイリスク・ハイリターンの収益構造を持っているのです」

そう語るのは、デロイト トーマツ コンサルティングの執行役員で、ライフサイエンス&ヘルスケアを担当する大川康宏氏である。

また、これほどの時間と費用をかけて新薬を開発しても、特許切れによってジェネリック医薬品に置き換わると、売り上げが急減してしまうという悩ましい問題もある。いわゆる「パテントクリフ」(特許の壁)だ。

「パテントクリフを乗り越えながら売り上げを伸ばしていくためには、次々と新しい薬を生み出していかなければなりません。否が応でもハイリスク・ハイリターンな医薬品開発を繰り返さなければならないわけです」(大川氏)

そうした従来からの課題に加え、製薬業界の新たな悩みとなっているのが生産性の低下だ。背景にあるのは、1製品あたりの市場規模の縮小である。個別化医療の進展によって製品の適応症が細分化された結果、1製品あたりの売り上げが小さくなってしまったのだ。

「これまで収益を生み出していたトップラインの製品が頭打ちとなる中、製薬企業は、時間とお金がかかる研究開発のコスト削減に迫られています」と大川氏は指摘する。

研究開発の生産性を
飛躍的に高めるデジタル技術

製薬業界が直面する様々な課題の解決策として、現在、注目されているのがAIをはじめとするデジタル技術だ。

宍倉氏
デロイト トーマツ コンサルティング合同会社
執行役員 AI&Data
宍倉 剛
AIスタートアップ、国内系コンサルティング会社を経て現職。先進技術を用いた新規ビジネス創出、業務の変革等、企業のデータドリブン・トランスフォーメーション実現に従事。データサイエンス領域における戦略策定・業務変革、組織設計・人材開発に強みを持つ。『ビッグデータ総覧』(日経BP社)など、著書・寄稿多数。

「医薬の研究開発は、膨大なデータ分析や、手間のかかる実験などの積み重ねです。現在は、相当な割合の作業が人手で行われていますが、これをAIなどのデジタル技術に置き換えれば、大幅な時間の短縮やコスト削減の効果が期待できます」

と語るのは、デロイト トーマツ コンサルティングの執行役員で、企業や産業のAI活用支援を担当する宍倉 剛氏である。

例えば研究領域では、疾患メカニズムの解明や最適な治療法の特定のため、気が遠くなるほど膨大なデータの処理が必要だ。現状では、薬を形成する化合物がどの疾患に効くのかを研究者が自分の頭で検討し、手作業による実験で確認するという地道な作業を行っている。これがAIやコンピューターシミュレーションで検証・デザインできるようになれば、研究開発の効率は飛躍的に向上するだろう。

また、開発領域では、臨床試験の成功確率をいかに向上させるかが最重要課題となっている。世界中で段階的に実施される臨床試験は、多額のコストを要するため、試験開始前に有効性と安全性を見定めることが極めて重要となる。

宍倉氏は、「あらかじめ新薬投与時の効果をシミュレーションできれば、成功確率が高い候補だけを臨床試験に進められるので、試験数を減らすとともに成功確率を高めることができます。AIやデジタルの活用は、医薬品の研究開発の生産性を大幅に向上させるのです」と語る。

実際、どれほどの生産性向上が期待できるのか?

例えば、今、製薬業界で大きな注目を集めている「AI創薬」。膨大な化合物のデータベースの中から、各化合物の薬効、物性、薬物動態、安全性などの情報を基に、AIが新薬のもととなる化合物をデザインするものだ。

人の頭と手では数カ月を要するこの化合物デザインが、AIなら数日から数時間で完了することも期待されている。

また、新薬の開発では、AIによるモデリング&シミュレーション技術も生産性向上への寄与が大いに期待できる。臨床試験前に候補医薬品の有効性、安全性、最適投与量をシミュレーションできれば、どの患者にどの程度投与すれば、最適な効果が得られるのかを事前に把握できるからだ。その結果、臨床試験の削減と、試験に必要な患者数の最小化が実現し、投資効果の高い開発ができるようになる。

宍倉氏は、「GPU(Graphics Processing Unit)のような高性能計算リソースが利用しやすくなり、ディープラーニングの発展とそれによる生成AIの加速的進化により、人が回していた研究開発プロセスをAIに置き換える環境は整いつつあります。今後、導入コストも徐々に下がりつつあることとAI技術による効果がより明確になってくることを踏まえると、投資対効果を期待できるコストバランスの中で積極的なAI導入が進むのではないでしょうか」と見る。

構造改革が進む医薬品産業

構造改革が進む医薬品産業
現状のハイリスク・ハイリターンの事業特性から、リスクを低減しつつ革新的治療薬を持続的に創出可能な状況への転換が急務。先端バイオロジーの適用に加え、デジタル技術の実装が新たな競争優位の源泉になっていく

デジタルと人間の知恵の融合で
医薬の新たな未来を創造しよう

日本の製薬業界でも、デジタル技術の活用に向けた様々な取り組みが行われている。しかし、投資コストも高額であることから、積極的な活用に踏み切れていない製薬企業も少なくないようだ。

大川氏は、「多額のコストがかかるデジタル技術の活用は、単独企業での取り組みには限界があります。同業他社とのアライアンスや共同開発など、業界全体での協力体制の構築が重要となってくるのではないでしょうか」と指摘する。

競争の源泉となる化合物探索などの領域は単独で取り組む一方、「社会貢献の観点から協力し合って取り組むべき分野は、業界ぐるみで活用環境を整えていくべきではないか」というのが、大川氏の考え方だ。

そうした業界全体としての取り組みや、個別の製薬企業のデジタル変革を包括的に支援しているのが、デロイト トーマツ コンサルティング(以下、DTC)である。

同社は、製薬のデジタル変革を促すための技術探索から、新しい研究開発の将来像構想、実際の技術活用・検証、システム導入、デジタル人材の獲得・育成まで、幅広い領域のサービスを提供している。

「AI創薬分野では、米国でAIプラットフォームを提供しており、国内では量子コンピューターを活用した量子創薬の実証事業を進めています。また、モデリング&シミュレーション分野では、個別医薬品の予測アルゴリズム開発から、最適なアルゴリズムを適用するためのPoC(概念実証)までをトータルに支援し、オペレーション自動化では、生成AI技術を活用した技術探索・評価プロセスの効率化、計画書・報告書などの文書作成の自動化をお手伝いしています」(大川氏)

製薬業界のデジタル変革を支援するDTCのコンサルタントには、医薬ビジネスとサイエンスの知識に加え、デジタル技術への深い理解が求められる。この3つの観点から製薬業界の将来像を描き、個々の技術を見定めてビジネスの変革を支援できる人材を、同社は常に募集している。

「クライアントとなる製薬企業との関係を構築し、変革の効果が出るまで伴走支援ができる人材にぜひ仲間になっていただきたいと思っています」と大川氏。

一方、宍倉氏は「データサイエンスを専門とする人材も求めていますが、製薬業界のデジタル変革支援では、従来の統計解析や機械学習に加え、生成AIなどの新技術に取り組み、様々な組み合わせから新しいサービスやアプローチを生み出せる実装能力が必要です。個人の能力だけでなく、チームで協力して社会課題に向き合う姿勢も求められます。そんな力を兼ね備えた人材に、ぜひ来ていただきたいですね」と語る。

DTCは、グローバルで世界の製薬業界、製薬企業のデジタル変革を支援しており、クライアントとの長年の信頼関係の中で、極めて重要なプロジェクトを支援できることが大きな魅力だ。社内では、産業やテクノロジーといった専門領域の垣根を越え、多様な仲間とコラボレーションしながら課題解決に取り組めることも、活躍する上で恵まれた環境だと言える。

最後に大川氏は、「製薬業界は、デジタル技術で大きく変わろうとしています。薬を作る製造業から、情報産業へと大きな変貌を遂げているのです。コンサルタントとして、この歴史的変革を支援することは、極めて意義深い経験になるはずです」と語った。

宍倉氏も、「デジタル技術と人間の知恵を融合させ、より効率的で革新的な創薬プロセスを実現することは、患者さんの健康と社会全体の福祉向上のために重要です。ぜひ、我々と一緒に、製薬の新たな未来を創造していきましょう」と呼び掛けた。

企業や産業のAI活用支援を担当する宍倉氏(写真左)と、製薬業界担当の大川氏(写真右)。両チームの緊密な連携によって、製薬業界のデジタル変革を強力に支援している