DIGITAL Foresight 2024‐25 Winter 3rd Season Review

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  • 生成AI×マーケティング|アドビ

生成AIがクリエイティブを“民主化”
迅速で大量なコンテンツ生成が現実に

企業のマーケティングでSNSや動画の活用が進み、デジタルマーケティングに求められる画像や動画などクリエイティブの制作に変化が生じている。効果的なコンテンツを大量かつ迅速に作り続けることが、マーケティングの成功にとって不可欠となっているからだ。ブランド価値を毀損させずにクリエイティブを大量かつ迅速に生み出すには、プロであっても人間技では対応できない。生成AIなどを活用してクリエイティブを効果的に生み出し、マーケティングの効果を高める実践方法を見ていく。(聞き手:日経BP 総合研究所 イノベーションICTラボ 所長 大和田尚孝)

プロへの依頼から自社制作へ
クリエイティブの現場が変容

アドビ株式会社
デジタルメディア事業統括本部
Solution Consultant Creative Product
高橋 絵未 氏

大和田 マーケティングとデジタル技術の関係について、現状を教えてください。

高橋 これまでクリエイティブはプロフェッショナルしか手を出せない領域でした。ところが近年は、自分たちでデジタルコンテンツを制作して、ビジネスの成果を出している企業が増加しています。クリエイティブが未経験の人が、社内で動画を作ったりSNSに投稿したりすることがスタンダード化したと感じています。

大和田 具体的な事例はありますか。

高橋 SMBC日興証券の商品マーケティング企画部では、お客様と社員に商品やサービスを紹介する動画コンテンツを社内で作っています。専用のスタジオや機材を用意して、年間1000本の制作ができる体制を整えているのです。

大量のコンテンツが必要な現場を
生成AIがサポート

大和田 クリエイティブを内製化するとなると、課題もありそうです。

高橋 デジタルマーケティングの進展にともない、マーケティングの担当者にはスピード感と規模感が求められるようになっています。多くのコンテンツを迅速に作る必要性が高まっているのです。例えば、主要なプロダクトが8種類あったとします。プラットフォームや言語、キャンペーンの種類、頻度などを掛け算していくと、年間50万点ものコンテンツが必要になる計算になります。

大和田 そのような量になると、効率的に作れて、1つずつの品質を維持できる手法が必要になりますね。

高橋 実際に人が作る場合、年間50万点のコンテンツ制作は非現実的です。そこで生成AIの活用が注目されているのです。アドビでは生成AIモデルの「Firefly(ファイアーフライ)」をPhotoshopやIllustratorなどの既存のソリューションに組み込んで提供しています。これによって、従来の制作方法を変え始めています。

大和田 どんなことができるのですか。

高橋 PhotoshopではFireflyによる「生成拡張」機能を提供しています。ある写真をバナーに使おうとしたら幅が足りないようなときに、元の写真に合わせて背景などを拡張して横長の写真を生成します。また、テキストによる指示だけで、何パターンもロゴの素案のイラストデータを生成させることもできます。アイデアを素早く可視化して、多くの選択肢からイメージをふくらませられるのです。

大和田 現場で生成AIを活用している事例はありますか。

高橋 国内の最近の事例としては、リコーが社内研修プラットフォーム上の動画コンテンツをExpressとFireflyを活用して作っている事例があります。1万8000人の社員が見るコンテンツで、高いクオリティを要求されているためです。

 また、SNSマーケティングの事例では、SBC湘南美容クリニックでの活用があります。人物の写真などが必要なため、モデルの手配に苦労していたのですが、Fireflyを使ってサンプルの顔を作成してマーケティングに活用しています。

※講演の一部をOn-Demand形式で視聴いただけます。

生成AIを企業で使うための
2つのアプローチ

大和田 実際に企業で生成AIを使うときには、どのような利用形態が考えられますか。

高橋 マーケティングの文脈では、2つのアプローチが考えられます。1つが「プロのクリエイターとマーケターが共創する」アプローチで、もう1つが「APIによるオートメーションを導入する」アプローチです。

 プロのクリエイターとマーケターの共創では、ウェブブラウザーベースで簡単にデザインを作れる「Adobe Express」が有効です。プロが作ったクリエイティブに対して、キャンペーンの内容や対象商品、季節ごとのイメージなどの変更をマーケター自身の手で簡単にできるようになります。

大和田 もう1つのAPIとはどのようなものですか。

高橋 PhotoshopなどのアプリケーションとFireflyを連携して使えるようにします。弊社の事例ですが、キャンペーンのコンテンツとして、5万2000種類を5日間で作り上げた実績があります。これにより、63%の生産コスト削減、57%のクリック率向上を実現し、キャンペーンのROI(投資対効果)も140%に達しました。

大和田 一方で、生成AIを使う場合は権利関係も気になります。

高橋 2つの点を考慮してもらいたいと思います。1つが学習元のデータです。アドビでは許諾を取れたデータだけを学習に使っています。もう1つがコンテンツの透明性です。アドビでは、「コンテンツ認証イニシアチブ」という活動を通じて、コンテンツの来歴情報を公開する取り組みを進めています。

大和田 今後の機能拡充について教えてください。

高橋 アドビはFireflyの動画のモデルをβ版としてリリースしています。あらゆるユーザーが動画のマーケティングに生成AIを活用してもらえる時代がすぐそこまで来ていますので、ご期待ください。

[画像のクリックで拡大表示]
API連携したFireflyで多量のクリエイティブを生成
アドビが自社のキャンペーンで実践したAPI連携では、「A」の文字を様々な意匠でデザインしたバリエーション豊富なクリエイティブを生成。5日で5万2000種類という膨大なクリエイティブが出来上がった。


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