大阪教育大学創基150周年記念 教育とICTセミナー 2024秋
これからの学びを支える
ICT活用教育

大阪教育大学は創基150周年を記念して、2024年11月28・29日の両日、日経BPと共同で「教育とICT セミナー 2024」を開催した。人工知能(AI)の教育利用や情報教育、デジタル活用による教員の働き方改革など、ICT活用教育に関する最新情報を基調講演や協賛企業の講演、展示を通じて発信した。
主催者を代表して、大阪教育大学 理事・副学長の鈴木剛氏(左、11月28日)、同 副理事・副学長の片桐昌直氏(右、11月29日)が挨拶した
1874年5月に設置された教員伝習所を起源とする大阪教育大学は、西日本最大の教員養成大学だ。2022年には「令和の日本型学校教育」を担う教員養成の在り方を変革するけん引役として、文部科学省から「教員養成フラッグシップ大学」の一つに選ばれた。
創基150周年を迎え、2024年春に天王寺キャンパスに最先端のICT機器を整備した産官学連携拠点「みらい教育共創館」を開設。今回のセミナーも、この会場で教育関係者を集めて開催した。
産官学連携で課題に取り組む
主催者を代表して11月28日に挨拶した大阪教育大学理事・副学長の鈴木剛氏は、「本学は現代的教育課題への対応、教育DXの推進、産官学連携の展開という3つの課題に取り組んでいる。みらい教育共創館を拠点に、教育委員会・学校現場・行政・産業界・大学等が、それぞれの抱える課題や資源を集積し、産官学連携で大阪の教育課題の解決に取り組むことを目指している」と話した。
2日間のセミナーでは、同大学の3人の教員がICT活用教育や大学の取り組みに関連したテーマで講演した(右ページ参照)。また、大阪教育大学の客員教授を務める日経BP技術プロダクツユニットの中野淳ユニット長補佐が生成AIやVRの教育利用について紹介。日経パソコンの江口悦弘編集長が、ICT活用教育の最新事情を解説した。
今回のセミナーには、スプリックス、日本HP、NTT ExCパートナー、ソリトンシステムズ、日本マイクロソフトの担当者がICT活用教育の最新のソリューションについて講演した。企業の取り組みを展示するコーナーも設置し、多くの教育関係者が訪れていた。
最新のソリューションに関する企業展示にも多くの人が参加。ICT活用教育や教育DXなどについて活発な議論を交わしていた
児童・生徒の学びに寄り添うICT活用
ダイバーシティ大阪での実践の可能性
日本の学校では児童・生徒が同じクラスで長い時間を過ごし、1人の教員が学級運営を行うことが多い。コロナ禍以降、生徒一人ひとりのニーズに応える個別支援と、学級全体の規律を保つ集団づくりのバランスを保つ学級経営の重要性が高まっている。教員には、ルール重視の指導(P型)と、生徒との関係性を重視した指導(M型)を適切に使い分けるスキルが求められる。不登校やいじめ被害に苦しむ子どもの支援には、学習面、家庭環境、対人関係への支援が検討されるべきである。こうした課題に対処するには、データや統計に基づいた現状把握と柔軟な教育実践が必要だ。ICTを活用して生徒一人ひとりの状況をより正確に把握し、プライバシーに配慮しつつ支援を提供することが期待される。教育データの共有と分析を通じて、学校現場での意思決定の質を向上させることが可能になるだろう。(談)
大阪教育大学
教授・副学長
みらい教育共創拠点 拠点長
水野 治久 氏
AI時代の人材育成を目指す情報教育
全学情報教育とICT教育コースの取り組み
2003年に高校で教科「情報」が導入されてから20年が経った。2022年から「情報I」が必履修科目になり、2025年1月には大学入学共通テストで「情報」の入試が実施される。本学では、2024年から学生として必要最低限のICT活用の基礎と発展的な実践力を定着させるため、全学共通の「情報活用基礎」をスタートさせた。すべての学生が統一カリキュラムを学ぶことで教育の均質化が図れるようになる。同じく2024年から、教員養成のフラッグシップ大学構想を象徴する専攻として「次世代教育専攻・ICT教育コース」を新設した。ICTリテラシーやデータサイエンス、プログラミング、デジタル教材活用力などの高度な専門知識・技能を修得して、情報教育の推進を担うリーダー的役割を担う教員の養成を目指している。実社会との接点を増やすため、みらい教育共創館を拠点として、企業との協業も模索していきたい。(談)
大阪教育大学
理数情報教育系 准教授
次世代教育部門 ICT教育コース担当/
みらいICT先導センター副センター長
尾崎 拓郎 氏
ChatGPT時代の「対人対話力」「認知科学の知識」
非専門家向けのAI・データリテラシー教育
2023年に米Open AIの「ChatGPT」が登場して以来、情報の扱い方は「検索」などのより静的なものから「生成」という動的なものへのシフトが加速したといえる。生成AIは、蓄積した情報を引き出すものでなく、対話や議論のパートナーのように向き合う姿勢が求められる。AIはヒトの代替ではなく、人間の能力を拡張する道具・ツールとして捉えるべきだ。教育分野でも問題発見・解決能力や情報社会への主体的参画が重視されている。技術を「単に使える(動かせる)人材」ではなく「技術を活用して社会に参画できる人材」を広く育成するには、例えば「プログラミング言語を一切使わずにプログラミング的思考を学ぶ授業」や「数学の知識を使わずにAIを理解できる授業」などが重要だと考え、大学や高校で実施している。AIは今後さらに身近なものとして新しい仕事や社会的な価値を生んでいくだろう。人間の創造力を豊かにするパートナーとして生成AIを活用していくことが、Society5.0としてのよりよい社会を実現する一歩になるだろう。(談)
大阪教育大学
特任准教授
株式会社エボルブ
Chief Assemblage Officer
安松 健 氏
