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教育とICTセミナー 2025 大阪 Summer これからの学びを支えるICT活用教育 特別パネルディスカッション

学校現場の個人情報を守り
コストを削減
ローカルLLMが拓く
AI活用の最前線

GIGAスクール構想の推進によって1人1台端末が普及した教育現場では、生成AIの活用が次の争点となっている。PCや校内サーバーでAIを運用する「ローカルLLM」をテーマに、授業と校務の両面におけるAI活用の現状と未来の可能性を専門家が議論した。

安藤 昇氏

青山学院大学・青山学院中等部 講師
スタディサプリ情報Ⅰ講師
Genspark Industry Advisor
Empower Canvassador
安藤 昇

勝谷 裕史氏

日本HP エンタープライズ営業統括
ソリューション営業本部
ワークステーション営業部
AI/DS市場開発担当部長
勝谷 裕史

田村 洋樹氏

WEEL
執行役員
生成AI事業部統括部長
田村 洋樹

 パネルディスカッションのモデレーターを務めた大阪教育大学 理数情報教育系 数理・知能情報部門 特任教授の中野淳氏は冒頭、生成AIの教育活用の最新の状況を紹介した。中野氏はまた、教育現場の特別な知識やノウハウを学習した専用の生成AIで広がる可能性について指摘した。

 教育現場では、機微な個人情報や学習履歴を外部に送信することへの懸念がある。専用のAIを校務や教育に活用したいというニーズもある。クラウド利用は従量課金制が多く、長期的にはコストが膨らむ可能性も高い。

 こうした要望への解の1つが、インターネットから切り離した環境で稼働する大規模言語モデル「ローカルLLM」だ。校内のワークステーションにローカルLLMを置くことで、データを外部に出さずに生成AIを利用でき、セキュリティとコストの両面で有利になる。

教育現場における生成AI活用
創造性を引き出す授業設計

 教育分野における生成AI活用の第一人者である青山学院中等部講師の安藤昇氏は「クラウドの手軽さは魅力だが、使うたびに『この情報を外に出していいのか』と考えるのはストレスになる。ローカルLLMは心理的なハードルを下げられます」と話した。

 安藤氏は、生成AIを授業に組み込むことで学びの構造そのものを変えるプログラミング授業での事例を紹介した。「生徒が『オセロゲームを作って』と指示すると、AIが即座にコードを生成します。これまでは1年かけてようやく作れたレベルのものが、授業のスタート地点になるのです」という。

 生徒は生成されたコードを分析して改良や新機能の追加を行う。安藤氏は「AIがベースを作り、生徒が自分のアイデアを反映していくサイクルが、学びにおける主体性と創造性を高めることにつながります」と語る。

 校務でもAI活用の効果は大きい。レポートの採点作業は以前なら1週間かかったが、AIを使えば5分で終わる。採点基準を明確に設定することで評価の公平性が保たれ、生徒の納得感も高まった。電話対応を一次的にAIが担うシステムも構築中で、教員の負担軽減につながっている。

 システムベンダーである日本HPの勝谷裕史氏は「クラウドAIは利用量に応じて課金が増えるが、ローカルLLMなら一度導入すれば追加コストなしで何度でも処理できるので、長期的なコスト構造が変わります」と説明した。

生成AI導入を加速するには
安全性とコストの両立が鍵

 生成AIソリューション提供企業であるWEELの田村洋樹氏は現場導入の課題を「安全な情報管理」と「導入コスト」と指摘し、自社で支援した自治体の事例を紹介した。AIで住民相談や教育相談を効率化する試みは、クラウド型では匿名化やマスキング処理に時間と人手がかかり現場の負担になった。「ローカルLLMはネットワークを遮断した環境で運用でき、情報の外部流出リスクを最小限に抑えられます」と語る。

 ローカルLLM導入には高性能GPUや大容量メモリを搭載したマシンが必要で、初期投資は数百万円規模になる場合もある。田村氏は「国の補助制度の活用や共同利用モデルの設計が鍵になります」と話した。

 勝谷氏は、教育現場に向けてワークステーションを提案した経験を踏まえ、「導入初期に必要な性能要件や、学校のネットワーク構成に合わせたセキュリティ設計は、ベンダーがサポートできます」と説明した。

 海外の教育機関の導入事例も紹介した。米国のある高校では、理科実験データの解析をAIで行うためにローカルLLMを導入した。教師はリアルタイムで解析結果を得られるようになり、生徒の探究活動が加速したという。勝谷氏は「同じことは日本の高校でも可能です。探究学習の比重が増す中で、こうした仕組みは必須になるでしょう」と述べた。

 田村氏は「導入効果を最大化するには、教員研修をセットで行うことが必要です。ハードが整っても、使いこなせなければ意味がない。初期研修と数カ月後のフォローアップが重要です」と補足した。

教育委員会や自治体とビジョン共有
トップダウンの意思決定で前進

 中野氏は「AI導入の成否はトップの意思決定が重要」と強調した。「全校的な効果を生むには、教員の取り組みだけでなく、校長や教育委員会がビジョンを共有し、予算や人員配置を含めた戦略を描く必要がある」(中野氏)。

 AIを単なる省力化ツールとして導入するのではなく、授業の質向上と働き方改革を同時に実現する教育改革の一環と位置づけるべきだ。ローカルLLMは、その基盤となる存在で、安全性、コスト効率、運用自由度の3点でクラウドに勝るケースが多い。

 勝谷氏は「現場、ベンダー、行政の三者が役割を分担しながら進めることが、日本全体の教育DXを加速させます」と呼びかけた。田村氏も「補助金や制度設計が追いつけば、日本の学校におけるAI活用は一気に広がるでしょう」と展望を語った。安藤氏は「教師が創造的な時間を持てるようになれば、生徒の学びも確実に変わります」と締めくくった。

●ワークステーションの優位性

株式会社 日本HP

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