先端産業の誘致に力を入れる茨城県
日進月歩で進化するデジタルテクノロジー。企業・組織がそれらを活用し、継続的にサービスやユーザーの体験価値に転換していく上では、たゆまぬ研究開発の取り組みが必要になる。しかし、研究開発のための拠点やインフラを十分整備できている日本企業は多くない。用地選びや継続的な人材確保の難しさ、コストなど、そこには多くの課題が横たわっている。
この状況を打破するため、国や自治体が企業を支援する動きが活発化している。中でも積極的な活動によって「県外企業立地件数が8年連続全国1位※1」という実績につなげているのが茨城県だ。日立市にはものづくり産業、鹿島臨海工業地域には鉄鋼・石油化学などの素材産業が集積するほか、つくば地区には国の研究機関が多数立地するなど、地区ごとの特徴を生かした産業拠点が形成されている。
「AI、IoT、ロボット、次世代モビリティーなど、有望な成長分野の企業の誘致に県を挙げて取り組んでいます。今後も成長が見込まれる先端産業の誘致を進め、県内への若者世代の流入、新規雇用創出も図りたい狙いです」と茨城県の大窪 浩一郎氏は説明する。

茨城県 立地推進部
宅地整備販売課
課長補佐(宅地企画・販売担当)
大窪 浩一郎氏
そのような未来を見据えた取り組みを象徴する用地の1つが「最先端リサーチパーク」だ。つくば市の研究学園エリアに位置し、隣接する用地と合わせて約14ヘクタールの広さを擁する。日増しに高まる研究開発拠点の立ち上げニーズに応えることを主目的とした用地である(図1)。
※1 経済産業省「2024年(1月~12月)工場立地動向調査」
図1 最先端リサーチパークの概要(2025年10月時点)

主に研究開発拠点向けに、隣接する用地と合わせて14ヘクタールの土地を整備。周辺には半導体大手TSMCの研究開発拠点があるほか、商業施設も複数あり、暮らしの利便性も高い
つくば市ならではのメリットが多数
「最先端リサーチパークの強みは大きく『環境』『立地』『人材』の3つあります」と大窪氏は言う。
1:環境世界屈指の研究拠点として多くの研究機関が集積
半導体や量子コンピューターなど、我が国の最先端技術の開発・社会実装をリードしてきた産業技術総合研究所をはじめ、国の研究機関の3分の1に当たる29機関が近隣に集積。民間企業の研究機関も多数集まっている。
「例えば、産業技術総合研究所内には、半導体大手であるTSMC(台湾積体電路製造)の初の海外研究開発拠点や、量子コンピューターの産業化に向けた研究拠点も設置されています。それらの研究機関と企業が連携し、研究や技術交流が行われています」(大窪氏)
活発な情報交換を通じて、新しいアイデアやイノベーションの創出につながりやすい環境がある。研究開発を次のフェーズに向かわせたいと考える企業・組織にとって、こうした環境は極めて魅力的に映るだろう。
2:立地都内から1時間以内でアクセス可能
鉄道、高速道路などの交通アクセスが充実しており、暮らしや通勤に便利な点は研究学園都市エリアならではの強みだ(図2)。つくばエクスプレス(TX)で秋葉原から最速46分。駅からも徒歩圏内で、本社と研究拠点または取引先との間で人が移動する際も時間のロスを抑えられる。
「首都圏内外への車移動にも高い利便性があります」と大窪氏は続ける。周辺で首都圏中央連絡自動車道と常磐自動車道が交差しており、設置されているインターチェンジはスマートインターチェンジを含めて4つ。成田空港へも約50分でアクセス可能だ。この好立地は、グローバルにビジネスを展開する企業にとってメリットになるだろう。
図2 都内から1時間以内の好アクセスが魅力


東京から約50km圏内にあり、秋葉原駅から最寄りの研究学園駅までは最速46分。高速道路のインターチェンジも複数あり、空港へのアクセスも良い
3:人材人口増加地域のため雇用面で有利
2024年のつくば市の人口増加率は、特別区を除く市の中で全国1位※2。さらに国立社会保障・人口問題研究所の推計によれば、2035年までの人口増が予測されている。つまり、労働力人口の減少が課題になっている日本においても、将来にわたり安定的に人材を確保できる可能性が高いエリアなのだ。
「また、市内で活躍する研究者は1万7000人を超え、就業人口当たりの研究者数で全国トップクラスです。筑波大学の学生や海外からの留学生を含め、将来を担う優秀な人材が集まっているのも特徴です」と大窪氏は言う。
この優位性を一層強化するため、県も様々な取り組みを行っている。2023年度に県内初の科学技術科を持つ「県立つくばサイエンス高校」を開設したことはその1つとして挙げられる。さらに、市内には研究者や留学生など約1万4000人の在留外国人がおり、外国人在とのマッチング支援に取り組むほか、インドの大学と協力関係を結び、日本企業の人材確保につながる環境づくりや支援を行っている。継続的な人材確保の難しさは、企業・組織が拠点を展開する際のハードルになりがちだ。最先端リサーチパークを選ぶことで、その懸念を払しょくできるだろう。
※2 総務省「住民基本台帳に基づく人口、人口動態及び世帯数(令和7年1月1日現在)
補助、税制面でも県を挙げてサポート
ほかにも茨城県は、成長産業の拠点展開を考える企業に向けた各種支援制度を用意している。具体的には、県内への本社機能の移転や生産拠点の整備を考える企業に対し、設備投資費などを補助する。また、2025年度からは全国トップクラスとなる上限100億円の補助制度も新たに創設した。これにより、グローバル企業のフラッグシップ拠点の誘致に一層力を入れる構えだ。
「税制面でも、不動産取得税や法人事業税にかかる課税免除、市町村ごとの固定資産税免除といった特例を設けています。また、東京都・大手町に企業誘致の営業窓口も設置しています。常駐スタッフが事業用地の説明、各種優遇制度の案内から進出後のフォローアップまで対応しますので、まずは気軽にご相談いただければと思います」と大窪氏は紹介する。
加えて、つくば市は政府からスーパーシティ国家戦略特区域に指定されている。多彩な先端技術を社会実装した、大学・国研連携型スーパーシティの実現を目指している同市では、AIやビッグデータなどのテクノロジーを暮らしに溶け込ませるための取り組みが進められている。このような先進的な環境で研究開発を進められるのも、魅力となるはずだ。
既に複数の企業・組織が最先端リサーチパークおよびその周辺に拠点を進出している。半導体製造向けクリーンルームの空調設備を開発する企業はその1社だ。周辺の大学や研究機関との連携を強化しながら、先端技術の開発を進める。また、東京大学発の宇宙ベンチャー企業が、同じくつくばに拠点を置くJAXA(宇宙航空研究開発機構)との共同技術開発の効率化・高度化を企図して進出している。同様の事例が増えるほど、それが一層の用地の魅力になっていくことは間違いない。
競争力の源泉となる研究開発力の強化に向けて、事業用地に対するニーズは今後も高まっていくだろう。茨城県の企業誘致、研究開発支援の取り組みは本気だ。今後、日本が国際競争力を取り戻し、持続可能な社会を切り開くパイオニアとなるために、同県に寄せられる期待は大きい。
多彩な魅力を備えた最先端リサーチパークは、研究開発拠点の立ち上げを検討する企業・組織にとって有力な選択肢になるものといえる。
展示会への出展、ウェビナー開催も予定
2025年12月17日(水)~19日(金)、茨城県は東京ビッグサイトで開催される「SEMICON Japan(セミコン・ジャパン)」に出展する。半導体をはじめ、エレクトロニクスの製造サプライチェーンの国際展示会で、最先端リサーチパークに関するパネルの展示や動画放映などを行う予定だ。また、セミコン・ジャパン出展の連動企画として、最先端リサーチパークのウェビナー企画を開催する。先端産業に関する講師の講演のほか、茨城県からの案内も含まれる。関心を持つ企業はぜひ参加してみることをお勧めする。

<ウェビナー概要>
「半導体の未来を創る拠点 ― 茨城から始まる次世代イノベーション」
日時:2026年1月22日(木)14:00
講師:グロスバーグ合同会社 代表 大山 聡氏
申込・登録はこちらまたはQRコードから(参加費無料)





