

まちづくりや再開発、出店計画の成否を分けるのが「人流の正確な把握」だ。近年、自治体や企業のマーケティング戦略において活用が進んでいるのが、交通系ICカードSuicaの利用データを基にした統計レポート『駅カルテ』である。同サービスを提供する東日本旅客鉄道(JR東日本)の石田氏と大橋氏に、その強みや活用事例について聞いた。
Suicaデータの有用性は、鉄道の領域だけにとどまらない。地域で運行するバスや割引券など、地域独自のサービスと、Suicaの各種サービスが1枚で利用可能な「地域連携ICカード」のデータを利用することで、鉄道とバス、二次交通の流れを把握することも可能となる。つまり観光地へのアクセス改善や地域全体の回遊性向上にも生かせるのだ。
実際、Suicaデータは東京都が推進する「令和6年度 東京データプラットフォーム ケーススタディ事業」でも採用され、奥多摩エリアの観光促進事業でも活用されているという。
またビジネスにおいては、不動産企業による通勤・通学圏の分析や広告戦略の最適化など、都市開発やマーケティングの領域にも広がりを見せているとのこと。
そんな『駅カルテ』は、活用される場が続々と広がっているという。例えば自治体の議会では、データの根拠を求められることがあるが、推計を伴うと数値の根拠から説明しなければならない。その点、Suicaデータなら実数であるためそうした裏付けが必要なく、活用しやすいと好評なのだ。さらに意外なところでは、最近は大学や学校の教員からも「授業や研究でデータを使いたい」という要望が寄せられているという。「学生にもデータが身近で理解しやすいのでしょう。私たちも『駅カルテ』の想定外の反響に驚いています」と、石田氏。
人口対策、観光施策、スマートシティ構想など、データにもとづいたまちづくり戦略が求められる時代。ますます『駅カルテ』への期待は高まっていきそうだ。石田氏は「良い分析は、良い仮説から生まれます。そしてまさに、仮説を検証する際に正確なデータは強力な武器になります。信頼できるデータがあれば、仮説が外れたとしても効果的な次の一手を考えられるからです」と、同サービス活用の意義を強調する。
『駅カルテ』は、現在もサービスの改良を続けている。汎用レポートの提供に加え、自治体や企業の個別課題に応じたカスタム分析を強化。これまでのPDF形式に加えExcel版の提供も開始し、データ加工や分析の利便性を向上させた。
「今後は月次データだけでなく、特定のイベント開催日など期間を限定したデータ提供のニーズにも対応していく予定です。また、移動データに購買データを統合する等、お客さまのニーズに合わせてより多角的な分析ができるよう機能のパワーアップも検討していきます」と石田氏は展望を語る。
改札口別のデータ提供も始まり、より詳細な分析が可能になった『駅カルテ』。今春リリース予定の訪日外国人向け「Welcome Suica Mobile」の利用データの活用に向け準備を進めており、外国人観光客を対象とした施策やプロモーションへの活用が期待される。「単なるデータ提供ツールにとどまらず、自治体や企業と連携して課題解決を支援できる存在になることを目指したい」と大橋氏。同サービスのさらなる進化に注目が集まる。
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