同社の惣菜盛付ロボットDelibot(デリボット)シリーズは、本体の近くにセットした番重(食品の収納・運搬に使われる容器)から食材をハンドでつかみ、ベルトコンベアを流れてくる容器に盛り付ける。2021年に開発をスタートさせ、早くも翌2022年に初号機をリリースしたが、完成までの道のりは苦難の連続だったという。
特に腐心したのが、形も粘度も異なる惣菜を“指定量”で正確につかませることだった。ポテトサラダのように柔らかく崩れやすいものから、唐揚げのように固形で不揃いなものまで、食材の特性は千差万別。これを1台のロボットで対応させることは想像以上に難しい。そこで複数の専用ハンドと、「ひと掻きで何グラムになるか」を惣菜ごとに予測するアルゴリズムの開発に挑戦することにした。
「試作品を使って収集した膨大なデータをAIに学習させ、惣菜の外見から統計的に推測して動きを制御するシステムを構築しましたが、当初はなかなか定量を盛ることができませんでした。そこで、持ち上げた食材の重さをリアルタイムで計測し、不足分をつかみ直したり、容器に移す前にこびりつきを振るい落とす動作を加えたりと何度も改良することで、ようやく人間並みの精度を実現できたのです」と沢登氏は振り返る。
さらに注目したいのは、現場に即した改良も施した点だ。惣菜製造ラインでは多品種少量生産が一般的で、品目の切り替えが頻繁に発生する。そこで同社は、ハンドをマグネット式で着脱可能にし、段取り替え
※をわずか数秒で完了できる仕組みを導入。これにより、同じロボットが異なる製造ラインで柔軟に活躍できるようになったという。
- ※
- 生産ラインで製造品を切り替える際に、機械の部品・装置の交換や設定変更などを行う準備作業のこと
「操作性も徹底的に簡便化しました。具体的には、操作パネルの画面に表示される惣菜の写真にタッチするだけで稼働させられるようにし、特別なトレーニングを受けることなく誰でも簡単に扱えるロボットシステムにしました」(沢登氏)
1人分の作業スペースに設置可能なコンパクトさもDelibotの特徴で、事前のシミュレーションで最良の動作経路を調整することもできる。肝心の作業速度も250食/時間と、初号機の段階で人間に遜色のない能力を発揮。製造ラインを省人化したい複数のスーパーや食品会社に導入された。
この取り組みの集大成として、CRは2025年秋にDelibot S1を発売予定だ。この新モデルではスーパーなどで販売されるメジャーな惣菜の大半を盛り付けられるようになり、作業速度は旧モデルの1.6倍の400食/時間と、熟練作業者の能力にほぼ匹敵するスピードを実現。さらに重量を270kgまで55%軽量化し、キャスターを搭載することで、製造ライン間の移動やレイアウト変更が容易になった。これにより、人手不足の現場で、必要な場所にロボットを素早く配置し、人の代わりにライン作業を担える柔軟性が大きく向上したわけだ。