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“グレーター東京駅”から見える世界都市の未来図 地上と地下の両面から拡張するまちづくり 八重洲・日本橋・京橋が一体化した都市基盤に “グレーター東京駅”から見える世界都市の未来図 地上と地下の両面から拡張するまちづくり 八重洲・日本橋・京橋が一体化した都市基盤に

2026.02.27

東京駅周辺は今、大きな転換点に立っている。丸の内を起点に進んできた再開発が八重洲側へと広がり、都市は「点」から「面」へと拡張しつつある。その中心にあるのが、東京建物をはじめとするディベロッパーが中心となり仕掛けるYNK(八重洲・日本橋・京橋)エリアの再編だ。やがては地下通路が張り巡らされ、ビジネス、歴史、アート、食が交差する地上と融合するという。“グレーター東京駅”などと言われることもある東京駅近郊の再開発の中で、YNKエリア再編がもたらす効果について、東京建物の担当者に聞いた。

東京駅の東側で進む“まちをつなぐ”再開発
地下街もより大規模に発展

東京駅は年間数千万人が行き交う国内最大級の交通結節点であり、日本の玄関口でもある。線路を挟んで西側にある大手町、丸の内、有楽町(日比谷)は「大丸有」エリアとしてブランドが確立されて久しいが、東側一帯の八重洲・日本橋・京橋――いわゆるYNKエリアは地区ごとに開発が進み、必ずしも一体化した都市体験として設計されてきたわけではない。

そのYNKエリアが今、大規模な再開発プロジェクトが進む、日本の都市戦略を象徴する舞台となっている。個別ビルの高度化ではなく、街区を横断した「面の再編」を目指すものだ。

八重洲は国際ビジネス拠点としての機能、日本橋は歴史と金融の知的集積、京橋はアートやクリエイティブの発信拠点。これらを横断的に接続し、回遊性を高めることで、単なるオフィス街ではない“訪れたいまち”へと進化させる。東京建物 コーポレートコミュニケーション部 広報室長 里見 優氏は「八重洲、日本橋、京橋にはそれぞれ強みがある。点で終わらせるのではなく、面としてどうつなぐかが重要だ」と語る。

YNKエリアの詳細。八重洲は全国的に知られる地名だが、実際は南北に長い八重洲一丁目と八重洲二丁目の2ブロックしかない(出所:東京建物)

その思想は「ここにしかない体験」を都市規模で創出することにある。八重洲で創業して今年で130年を迎える日本で最も歴史のあるディベロッパーが、自社保有する複数の開発プロジェクトを戦略的に結合し、“面として価値を生む都市”を具現化しようとしている。

水都、ウォーカブルなどをキーワードに
地上と地下をシームレスに結ぶ

具体的には、「TOFROM YAESU(トフロム ヤエス)」「京橋三丁目東地区第一種市街地再開発事業」「八重洲一丁目北地区第一種市街地再開発事業」の3プロジェクトが進行している。

TOFROM YAESUは東京駅八重洲中央口前に建つ大規模複合施設で、八重洲地下街を経由して東京駅と直結。低層の「TOFROM YAESU THE FRONT」、高層の「TOFROM YAESU TOWER」から成り、オフィス、劇場・カンファレンス施設、バスターミナル、商業施設、住宅などを整備した。本事業が最も早く、2026年の竣工となっている。

TOFROM YAESU TOWERの低層部。多様な個性が集積するまち並みを「八重洲らしさ」と捉え、平面的に広がっていた個性を立体的にも積み上げることをイメージした箱を重ね合わせた「箱積み」のデザインを採用した(出所:東京建物)

京橋三丁目プロジェクトでは東京駅と京橋駅までを結び地下歩行者ネットワークを拡充する。さらに注目すべきは、新設される高層タワーが東京高速道路(KK線)を遊歩道に再生する「Tokyo Sky Corridor」とつながる点だ。このタワーが接点となり、銀座方面からの連続的な賑わいが生まれる。本事業は、2030年度の竣工を目指す。

京橋三丁目プロジェクトの新設タワーはTokyo Sky Corridorと接続。途切れがちだった銀座からの流れを呼び込む(出所:東京建物)

八重洲一丁目北地区の再開発は、同社が呉服橋プロジェクトと呼ぶものだ。首都高地下化を契機とし、日本橋川の水辺空間を整備。南北方向にウォーカブルな歩行者空間を設け、東京駅から徒歩で気軽に川沿いの景観が楽しめるようになる。

呉服橋プロジェクトでは、東京駅からすぐの場所に川沿いの空間が整備される(出所:東京建物)

東京建物 都市開発事業第一部 事業推進1グループ 課長代理 林 宏樹氏は「そもそも都心には水辺の憩い空間が少ない。それが東京駅周辺に誕生することは非常にインパクトが大きいのではないか」と期待を寄せる。そのうえで日本橋駅、大手町駅、東京駅、京橋駅間の広域地下歩行者ネットワークを実現。新設の高層タワーには短期から長期滞在まで多様なニーズに対応する外資系のホテルインレジデンスのほか、高度金融人材サポート施設を設置し、南街区が2029年度、北街区が2032年度の竣工を予定している。

このように、同エリアの再開発は、地上と地下の接点を積極的に活用する点が一つの特徴になっている。東京駅周辺は日本有数の地下ネットワークを持つが、これまでは移動空間としての役割が主だった。「地上と地下を分けて考えるのではなく、一つの都市レイヤーとして考えることが、これからのまちづくりの鍵を握る」。東京建物 まちづくり推進部 都市政策室長 植木 健氏はこう指摘する。

同社ではこれまで、大手町タワーや京橋の東京スクエアガーデンで地上と地下のシームレスな連なりを演出してきた。ともすれば味気のない“地下通路”に華やかさを加えることで、活発な人の流れを生み出してきた自負がある。里見氏は「大手町タワーや東京スクエアガーデンでは、地下でも自然光が入る設計や人工の森、マルシェの開催などを通じて単なる乗り換え通路ではなく、いかにウエルビーイングな空間にしていくかを意識した」と振り返る。この視点を活かし、今後は地下空間を単なる通路ではなく、地上の広場や歩行者空間と一体化させていく。

経済圏はさらに広がり真の“東京の顔”へ
グレーター東京駅が持つポテンシャル

その延長線上に位置するのが、“グレーター東京駅”だ。グレーターというのは、中核となる都市からさらに広域に広げた都市圏を指す言葉で、国内では品川・高輪ゲートウェイを核とする広域品川圏(Greater Shinagawa)や、名古屋市を中心に愛知・岐阜・三重の3県にわたる半径100km圏内(グレーター・ナゴヤ)などがある。同様に、大丸有とYNKを含め東京駅を中心とした半径数百メートルの地域は、電力、情報通信など街のインフラを含めて、街区を超えて都市機能が連動する一種の都市圏として捉えられる。

将来的には羽田空港アクセス線によって東京駅と羽田空港が直結することもあり、グローバル化が進む世界都市間競争においても東京駅周辺を経済、文化、ライフスタイルの交差点として再構築する必要がある。グレーター東京駅は、その象徴とも言えるだろう。

グレーター東京駅は茅場町までつながる予定(出所:東京建物)

開発が落ち着く2030年代には、1km超の地下通路を通じて東京駅周辺の10駅が結ばれる。東京建物ではYNKエリアを軸にウォーカブルなまちづくりの実証や、路地が密集する八重洲の飲食街に若者を呼び込むイベントなどを開催してきた。また、同社のYNKブランドサイトを通じて積極的な魅力発信にも努めている。「東京駅から日本橋駅や京橋駅が地下でつながれば、さらなる活性化が見込める」と里見氏は力を込める。

グレーター東京駅が実現した暁には大丸有とYNKの融合だけではなく、少し足を伸ばせば人形町や築地など個性豊かなまちが徒歩圏内になる。銀座方面からスムーズに人が流れるようになることで、「休日は足を運ばない」と見られてきたこのエリアが文字通り“東京の顔”になることも想像に難くない。YNKから始まるこの挑戦は、日本の都市モデルの新たな原型となる可能性を秘めている。

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