日本企業が直面する人材不足、その原因と解決策は? 戦略人事とAIテクノロジーによって「持続可能な成長サイクル」を実現する―「Work Switch Conference2024」レポート日本企業が直面する人材不足、その原因と解決策は? 戦略人事とAIテクノロジーによって「持続可能な成長サイクル」を実現する―「Work Switch Conference2024」レポート

2024年12月、パーソルワークスイッチコンサルティングは、デジタル時代のHRとAIドリブンによる経営戦略やはたらき方を考える「Work Switch Conference2024」を開催した。同社は総合人材サービス大手のパーソルグループで2023年に誕生したコンサルティング企業である。当日のセッションでは有力ベンダーのキーパーソンらを迎え、人的資本経営や戦略人事、それを支える生成AIをはじめとしたテクノロジー活用のポイントなどが話し合われた。その模様をダイジェストで紹介しよう。

【人的資本経営とAI】
ジョブ型からスキルベースへ、日本型雇用の見直しの気運が高まる

最初に行われたのは「テクノロジーを活用した人的資本経営の可能性」をテーマとするセッションだ。

労働力人口の減少が急速に進む日本で、人的資本経営は特に重要なテーマである。人の能力を最大限に引き出し、同時にウェルビーイングも実現する。それにより、企業成長やEX(従業員体験)向上を目指す考え方だ。

株式会社Works Human Intelligence 最高戦略責任者(CSMO)※登壇時。現在は最高顧客責任者(CCO)髙橋 総一郎氏
株式会社Works Human Intelligence
最高戦略責任者(CSMO)※登壇時。現在は最高顧客責任者(CCO)
髙橋 総一郎

「国内の経営者の方々にお話を伺うと、企業課題のほぼ半分を占めるのが“人”に関する課題です。総量としての人手というよりは、必要なスキルを持つ人材の不足に危機感が高まっており、いかに人材のミスマッチを解消するかが大きなアジェンダになっています」と語るのは、統合型人事システム「COMPANY」を提供するWorks Human Intelligenceの髙橋 総一郎氏だ。

解決策を考える上では、米国の新しい潮流が参考になるという。ジョブ型雇用から、スキルベース型へのシフトが進んでいるのだ。ジョブ型は、まず仕事(ジョブ)という「箱」があり、それを満たすスキルを持つ人をアサインする考え方。スキルベース型は反対で、個々人が持つスキルに対して業務を配分するアプローチだ。「これは日本が昔から行ってきたことであり、巡り巡って日本型雇用が優位性を持つ時代が来たともいえると思います」と髙橋氏は説明する。

また、米国の潮流でもう1つ注目すべきなのがAIエージェントの活用である(図1)。AIとデータを活用して業務処理を自動化し、人のスキル不足を補う。定型的な作業はAIエージェントが代行し、担当者はイレギュラーケースの判断のみ行うといったことが可能になる。

図1 AIエージェントの登場

図1 AIエージェントの登場

主にタスクの実行を担う生成AIと異なり、AIエージェントはユーザーの指示を基に、ほかのシステムに指示を出す「タスクの指揮者」といえる

パーソルワークスイッチコンサルティング株式会社 執行役員 兼 コンサルティング事業部 事業部長 竹下 百里氏
パーソルワークスイッチコンサルティング株式会社
執行役員 兼
コンサルティング事業部 事業部長
竹下 百里

「AIエージェントの活用に当たって大事なのは、人はより戦略的業務に注力するという視点です。AIを『人事部のサポーター』と捉えて、共に成長することが求められています」とパーソルワークスイッチコンサルティングの竹下 百里氏は語る。

スムーズなAI活用に向けては、システムとデータを統合することがカギになる。特にデータは、人事部門が把握している社員の所属情報、スキルセットなどのほか、社員個々人の志向性や描くキャリアパスなど、個人のデータをいかに集めるかがポイントだ。「スキルベースもAIエージェントも、人事システムは統合型が向いています」と髙橋氏も人事情報統合の重要性を強調する。

パーソルグループはこれを実現するための仕組みの構築も進めている。採用、労務、タレントマネジメントなどのシステムを統合し、人材のスキルセットを可視化・アセスメントする(図2)。「戦略人事の高度化はもちろん、社員のキャリアアップもサポートしたいと考えています」と竹下氏は述べた。

図2 HRテクノロジーの融合イメージ

図2 HRテクノロジーの融合イメージ

基幹システムの人事データと、周辺システムのデータや外部データとの連携を図り、人的資本を可視化・分析できるようにする。戦略人事による人材及び企業の成長とウェルビーイングの向上が可能になる

【生成AI活用とWell-being】
従業員体験をジャーニーで捉え、生成AIを活用してWell-beingを向上する

あまねキャリア株式会社 代表取締役CEO 沢渡 あまね氏
あまねキャリア株式会社
代表取締役CEO
沢渡 あまね

次に行われたのが「生成AI活用を通じたEXとWell-being(ウェルビーイング)向上の実証成果」をテーマとするセッションだ。

企業のHR戦略を進める上では、人的資本経営・Well-beingへの注力が必要である。パーソルワークスイッチコンサルティングでは、企業は最新トレンドである生成AIへの投資を増加しているが、これを「人への投資」と捉える事はできないか、そして生成AIを導入することがEXやWell-being向上に繋がるのではないかと仮説を立て、実証実験を行った。

これについて組織変革を支援する、あまねキャリアが提唱しているのが「EXジャーニーマップ」だ。同社は、法政大学 法政大学大学院政策創造研究科 石山 恒貴教授、ビジネスリサーチラボ代表 伊達 洋駆氏との共同研究に基づき、採用前から退職後までのEXの全体像を13のプロセスに体系化。職場の実態と照らし合わせることで、自社のEXの現状と課題を把握できるようにしている。

「共創を阻害しているものは何か、EXを向上するにはどうするかを考え、改善することで、Well-beingを高めることが可能です」と同社の沢渡 あまね氏は紹介する。

Well-beingやEXを向上するためにはテクノロジー活用も不可欠だ。講演では、生成AIの力を“味方に付ける”ためのポイントが紹介された。具体的には「問い」「答え」「物差し」「恥じらい」の4つが重要だという。

「生成AIに『問い』をすることで考えが深まり、『答え』を基に仕事を効率化することができます。使い込んでいくうちに、今後のキャリアや自分が「次に」やるべきことへの気付きが得られますが、それが成長のための『物差し』になるでしょう。また、人に聞くのは恥ずかしいことも生成AIになら気軽に聞けます。『恥じらい』を捨てて生成AIと向き合うことも人の成長を促します」と沢渡氏は説明する。

パーソルワークスイッチコンサルティングでは、自ら「新しいはたらき方」のショーケースとなり、世の中へ有益なノウハウを顧客に還元することを目指している。この領域では、生成AIの活用がWell-beingに与える効果を検証するプロジェクトを実施。現在30%のChatGPT利用率を70%に向上させて、全社員がChatGPTを活用できる状態を目指すという。効果検証には、独自開発の調査指標「Work Switch Score(ワークスイッチスコア)」を用いることで、施策前後のWell-beingの状態を可視化する(図3)。

図3 生成AIの活用がWell-beingにどのような影響を与えるか、実証実験を実施

図3 生成AIの活用がWell-beingにどのような影響を与えるか、実証実験を実施

独自開発の指標「Work Switch Score」を用いて効果を測定する

パーソルワークスイッチコンサルティング株式会社 コンサルティング事業部 コンサルティング第2統括部 DXコンサルティング1部 部長 大嶋 利生氏
パーソルワークスイッチコンサルティング株式会社
コンサルティング事業部
コンサルティング第2統括部
DXコンサルティング1部
部長
大嶋 利生
パーソルワークスイッチコンサルティング株式会社 コンサルティング事業部 コンサルティング第2統括部 DXコンサルティング1部 岡 香菜子氏
パーソルワークスイッチコンサルティング株式会社
コンサルティング事業部
コンサルティング第2統括部
DXコンサルティング1部
岡 香菜子

「期待を上回る成果が得られました。生成AIを活用した社員は、使わなかった社員に比べて、Well-beingのスコアが明らかに高かったのです」とパーソルワークスイッチコンサルティングの大嶋 利生氏は話す。特に成長実感とはたらく体験のスコアは大きく向上。また別のアンケート結果では、作業効率の向上、新スキルの獲得を感じている人は9割以上、楽しさを実感している人も8割近くに上ったという。

プロジェクト参加者の一人である岡 香菜子氏は次のように感想を述べる。「私は2024年に入社したばかりで不安もありましたが、周囲のサポートと情報発信で『生成AIを使ってみよう』という気持ちになりました。トレーニングやイベントに参加する中で、業務の中で1日1回は生成AIを活用するようになっていきました」。

パーソルワークスイッチコンサルティングが作成した「生成AIジャーニーマップ」では、知る・体験する・学ぶ・活用定着するという4段階に体験フェーズを分けている。「成功の鍵はイベントなどで人を巻き込み一体感づくりをすること」と岡氏は語った(図4)。

図4 パーソルワークスイッチコンサルティングが作成した生成AI活用ジャーニーマップ

図4 パーソルワークスイッチコンサルティングが作成した生成AI活用ジャーニーマップ

「知る」「体験する」「学ぶ」「活用・定着する」の4つのフェーズで、ユーザーの体験を基に活用効果を計測した

3カ月間の生成AI活用施策の実施によって、週間利用率が30%から70%へと向上し、組織全体で生成AIを活用できている状態になった。このことから、EX・Well-beingの向上に寄与できたと判断したという(図5)。

図5 生成AI活用の施策の効果(まとめ)

図5 生成AI活用の施策の効果(まとめ)

人を巻き込み、共に成長する。この共創の姿勢が組織の生成AI活用推進では非常に重要だ。個人のEX・Well-beingを向上するために、「業務を効率化して『すっきり』する。さらに新しい物差しを見つけて『わくわく』する。すっきりとわくわくの両方を、生成AI活用で実現してもらいたいですね」と沢渡氏は強調する。

【経営とデータドリブン】
経費精算から経営意思決定まで、データ活用の高度化も重要

株式会社コンカー デジタルエコシステム部 リーダー, パートナービジネスマネージャー 川端 大喜氏
株式会社コンカー
デジタルエコシステム部
リーダー, パートナービジネスマネージャー
川端 大喜
Anaplanジャパン株式会社 リージョナルバイスプレジデント 岡部 憲彦氏
Anaplanジャパン株式会社
リージョナルバイスプレジデント
岡部 憲彦

カンファレンスの最後にはパネルセッションが行われた。経費管理クラウドのグローバルベンダー、コンカーの川端 大喜氏と、意思決定を最適化するためのシナリオプランニング・分析プラットフォームを提供するAnaplanジャパンの岡部 憲彦氏を招き、「データで導く投資と経営戦略の好循環」について4人の登壇者が意見を交わした。

まず川端、岡部両氏が指摘したのが、企業・組織におけるデータ活用の後れである。

例えば、企業の立替経費におけるキャッシュレス決済率は非常に低い。「Concur Professional」を利用している企業でさえ、中央値は11%であり、一般の普及率39.3%と比較すると高い普及率とは言えない*。「キャッシュレス決裁は、支払い処理のデジタル化/データ化の基盤になるものであり、この後れがデータ活用の後れの遠因にもなっています」と川端氏は言う。

経営意思決定の領域でも後れが見られる。Anaplanが用いたFP&A Trendsの最新調査によると、3割の企業が将来予測の確定に10日以上を要していた。また、計画方法がドライバーベースで完全に自動化されている企業はわずか9%だという。「意思決定の高度化が進展していない企業の大きな原因は2つ。1点目は、データがサイロ化しており、データの品質も低いこと。2点目は、取り組みの目的が効率化だけにとどまり、効果の大きい高度化・最適化まで考えられていないことです」と岡部氏は言う。

コンカー、Anaplanのサービスを利用することで、このような状況を脱却できる。パーソルグループは、両社のサービスを基盤として、経営の好循環サイクルの実現を目指している(図6)。既に複合的なデータを使ったシミュレーションや予測による計画策定に取り組んでいるという。

図6 データ活用が生み出す成長サイクル

図6 データ活用が生み出す成長サイクル

データを活用し、まず効率化・適正化を進め、投資余力を高める。それを人的投資に充て、さらなるデータ活用を進めることで事業の成長につながり、収益力も向上する

パーソルワークスイッチコンサルティング株式会社 コンサルティング事業部 コンサルティング第1統括部 戦略DXコンサルティング部 部長 藪田 修平氏
パーソルワークスイッチコンサルティング株式会社
コンサルティング事業部
コンサルティング第1統括部
戦略DXコンサルティング部
部長
藪田 修平
パーソルワークスイッチコンサルティング株式会社 コンサルティング事業部 コンサルティング第1統括部 経理DXコンサルティング2部 部長 鈴木 規文氏
パーソルワークスイッチコンサルティング株式会社
コンサルティング事業部
コンサルティング第1統括部
経理DXコンサルティング2部
部長
鈴木 規文

「これまでの取り組みから、データ活用のポイントが見えてきました」とパーソルワークスイッチコンサルティングの藪田 修平氏は言う。経営・部門・現場が一体となって取り組むことや、As-Isを正しく理解した上でTo-Beを設計すること、いきなり大きな成功を狙わず、小さな成功体験を積み重ねることなどがその例だという。

さらに、データドリブン経営の実現にはベンダーとユーザー企業双方の視点が欠かせない。「外部視点も生かしデータ基盤を整備してデータ品質を高め、内部視点のポイントを押さえたデータ活用を進めることが、成果を上げる秘訣だと考えています」とパーソルワークスイッチコンサルティングの鈴木 規文氏は述べ、セッションを総括した。

現在の日本企業が直面する課題は多岐にわたる。ただ、人とデジタルのポテンシャルをどう引き出すかが、その多くの解決に向けた基軸になることは間違いないだろう。Work Switch Conference2024でのディスカッションは、多くの企業に有益な示唆をもたらしたはずだ。

2024年コンカー調べ(Concur Professionalを利用している各企業のキャッシュレスで経費精算をした明細から算出)

■株式会社コンカーについて

世界最大の出張・経費管理クラウド SAP Concur の日本法人で、2010年10月に設立されました。『Concur Expense(経費精算・経費管理)』・『Concur Travel(出張管理)』・『Concur Invoice(請求書管理)』を中心に企業の間接費管理の高度化と従業員の働き方改革を支援するクラウドサービス群を提供しています。

コンカーの詳細については www.concur.co.jp をご覧ください。

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