既存の防犯カメラだけでは
より高度な映像の活用は難しい
“「わが家」を世界一幸せな場所にする”というグローバルビジョンのもと、住宅にかかわる様々な事業を展開している積水ハウス。同社において、デジタル技術を活用した施工現場の変革を担うのが施工イノベーション推進部だ。現場の働き方改革による「世界一幸せな施工現場の実現」を主なミッションとしている。
「施工力は積水ハウスグループのコアコンピタンスの1つであり、持続的成長に向けた推進力です。目指すのは『品質・安全の維持・向上』と『業務の効率化、労働時間削減』の両立であり、そのために不可欠なのが現場のDXだと位置付けています」と同社の松谷 裕治氏は説明する。
背景には住宅業界を取り巻く環境の変化がある。ニーズの多様化、建物仕様の複雑化といった流れの一方で、現場は慢性的な労働力不足に直面している。戸建住宅の建築現場では現場監督が複数の現場を巡回しながら業務にあたっている。そのため、いかにして現場の「今」を把握するか、工事関係者や顧客とのコミュニケーションを円滑に行うかが常に課題だったという。
その課題を解決し、施工DXを推進するための方法として同社が選択したのが、クラウドカメラを導入することだった。
「以前から現場に定点カメラは設置していましたが、主に防犯目的でした」と松谷氏。一方、今後は現場監督の業務効率化や労働時間の削減、また現場の品質・安全の維持・向上の目的でも定点カメラを積極的に活用していきたいと同社は考えた。そのためには、既存の定点カメラには備わっていない高精細な画質や、映像データのクラウド保存、API連携による将来的な拡張性などが不可欠だったという。
クラウドカメラ約1200台を導入
導入と活用を本社が強力に後押しする
このような狙いのもと、積水ハウスが注目したのがセーフィーの屋外向けクラウドカメラ「Safie GO」である。撮影した映像はクラウド上に保管されるため、いつでも・どこにいても確認できる。HDクラスの高精細な画質と直感的な操作が可能なUI/UX、豊富なAPI連携なども強みだ。
「リアルタイムに現場の状況を確認・共有するほかにも、過去の特定の時間帯の映像を確認したいというニーズが存在します。例えばお客様からお問い合わせがあった際、速やかに映像を確認して作業状況を把握したり、お客様への工事進捗報告のために映像を簡単に出力したりできる点は、非常に役立つと感じました」と同社の髙橋 純平氏は採用理由を話す。
また、カメラ用統合管理ツール「Safie Manager」を使えば、映像の閲覧権限を各支店別に柔軟に管理できる。適切な権限管理のもと、現場に出入りする協力会社とも情報を共有できると考えたという。
こうして同社は、セーフィーのクラウドカメラを採用。全支店を対象に大規模導入(既存防犯カメラの置き換え)を推進し、2025年11月時点の活用台数は約1200台に及んでいる。
「屋外向けカメラ Safie GOシリーズのラインアップのうち、
Safie GO 180、Safie GO 360、Safie GO PTZの3種類からニーズに合うものを各支店に選んでもらい、順次導入を推進しています」と髙橋氏は説明する。
導入を推進するため、施工イノベーション推進部が全国の支店向けにセーフィー社クラウドカメラの社内導入に関するオンライン説明会を開催。クラウドカメラを納品した支店に対しては、ユーザーアカウント作成や閲覧権限設定の初回フォローのほか、
「Safie Viewer」の操作説明会を実施している。
また、現場監督が施工管理業務を行うための社内基幹システムとSafie ViewerをAPI連携で接続し、基幹システムからSafie Viewerの画面を直接確認できるシステムを構築。さらに、内装工程で導入している360度カメラで撮影された写真と、屋外設置のSafie GOの映像を一覧で表示するオリジナルのダッシュボードを開発・導入した。現場監督が自身の担当物件の屋内外の現場映像・写真に簡単にアクセスできる仕組みを整え、全社での施工DXを推進している。
積水ハウスが独自に作成したダッシュボード
導入済みの360度カメラと、セーフィーのクラウドカメラの映像を一覧で確認できるダッシュボード。独自開発のこの仕組みを使うことで、建物の内観と外観を簡単に切り替えて確認できる
現場間の移動を減らし、労働時間を
月20時間/人、削減した支店も
これらの取り組みが奏功し、積水ハウスにおけるクラウドカメラの導入・運用は急速に広がっている。
中でも最大の成功モデルといえるのが千葉支店だ。全国最大規模の管轄エリアを持ち、長時間移動が現場監督の業務をひっ迫していた同支店では、以前から効率的な現場巡回に対する強いニーズが存在していた。クラウドカメラの導入効果について、千葉支店の加瀬 智教氏は次のように語る。
「毎月、工事中の約60現場すべてにSafie GOを設置しています。どこにいても現場状況を確認できるので、お客様から急なお問い合わせをいただいたときも、すぐ映像を確認して工事状況や対応策をお伝えできるようになりました」
現場間を効率的に巡回することで、千葉支店では特に業務負荷が大きかった時期と比較して、現場監督1人あたりの労働時間を平均月20時間削減した。
「Safie Viewerでは、複数現場のカメラ映像を一覧で確認できます。これにより、台風や荒天時に複数現場の状況を俯瞰的に確認して、早急な対応が必要な現場を発見し、先回りして対応策を講じることが可能になりました」と加瀬氏は続ける。現場監督一人ひとりの生産性向上と、組織の管理高度化の双方にセーフィーのクラウドカメラが貢献している。
このような成果が評価され、千葉支店は社内表彰制度で「現場DX賞」を受賞。事例が社内で共有されることで、他支店でもセーフィーのクラウドカメラの導入・活用が進んでいる。中には、Safie Viewerのメディアクリップ機能を活用して、上棟の様子を簡単にタイムラプス動画として出力し、顧客への報告に活用している支店もあるという。顧客満足度の一層の向上にも寄与しているようだ。
今後は蓄積した映像データを活用した映像解析技術の開発・導入に着手していく計画だ。「映像からタイムリーな対応が必要と想定されるシーンを検知、現場監督や工事関係者に通知されれば、施工品質や現場安全性のさらなる向上、ひいてはお客様満足度向上につなげることができるかもしれません。ほかにも、様々な業務の変革に映像を役立てたいと考えています」と松谷氏は期待を込める。
セーフィーおよびパートナー企業のサポートのもと、クラウドカメラを軸にした施工DXを大きく加速している積水ハウス。今後も、同社の取り組みに引き続き注目したい。