リアルとデジタルの垣根を超えるBeyond 5G 大阪・関西万博で体感できる2030年代の未来とは リアルとデジタルの垣根を超えるBeyond 5G 大阪・関西万博で体感できる2030年代の未来とは

次世代の情報通信インフラ「Beyond 5G」の実現に向けた動きが加速している。
2025年の大阪・関西万博では総務省が「Beyond 5G ready ショーケース」を主催し、
映像・体験・展示の3つのゾーンを通して、先行的な取り組みを知ることができるという。
Beyond 5Gは私たちの未来をどのように変えていくのか。
官民一体となった戦略の全貌、そしてショーケースの内容について深堀りしていきたい。

あらゆる産業や社会活動を支える次世代のデジタルインフラ

Beyond 5Gとは、一言で言えば「未来の情報通信インフラ」だ。5Gを掲げているため移動通信に限ったものと誤解されがちだが、無線、有線、陸・海・空、果ては宇宙までを含んだ包括的なネットワークを意味する。

さまざまな分野で活用されるAIやデータセンターなどを連携させて、多様なユーザーと場所を問わずにつなぐことが可能な、低遅延・高信頼・低消費電力な次世代の情報通信基盤であり、これらの技術によってリアルとデジタルをシームレスにまたいだ高度な通信インフラが整い、2030年代にはAI社会を支えるデジタルインフラとして、あらゆる産業・社会活動を支えることが予想される。

想定されるユースケースは製造、金融、物流、小売、エネルギー、建設、農業、メディア、教育、医療、行政など実に幅広い。例えば製造ではIoTやロボット導入による工場の無人化、農業では無人トラクターの自動走行、医療では高解像度の映像と遅延のない通信を活かした遠隔手術などが考えられる。社会に普及した暁にはパラダイムシフトが起きるに違いない。

2030年代のデジタルインフラ像

それだけに、Beyond 5Gに関する日本政府の動きは早かった。総務省は2020年1月から「Beyond 5G推進戦略懇談会」を開始。同年6月には基本方針を定めた「Beyond 5G推進戦略」を策定し、2024年8月には「Beyond 5G推進戦略2.0」へとアップデートした。AIの爆発的普及による環境変化を踏まえ、「2030年代のAI社会を支えるデジタルインフラ像」を実現するための戦略を推し進めている。

本戦略では社会実装やグローバル展開を強く意識した。総務省は2023年3月、NICT(国立研究開発法人情報通信研究機構)に恒久的基金を設置し、「Beyond 5G基金事業」をスタート。事業に採択された民間企業やアカデミアが戦略的プロジェクトを磨き上げ、完成したサービスやプロダクトを日本の「戦略商品」とする構えだ。これによりBeyond 5Gの早期かつ円滑な導入を図るとともに、国際競争力の強化と経済安全保障の確保を両立。まさに官民一体の国策として着々と取り組みが進行している。

トッププレーヤーが集うBeyond 5G基金事業

Beyond 5G基金事業は、日本が強みを発揮する技術分野を中心にオールジャパンの体制で臨んでいる。その内訳は日本企業のトッププレーヤーが集った「社会実装・海外展開志向型戦略的プログラム」、アカデミアと企業が共創する「要素技術・シーズ創出型プログラム」、電波の有効利用に資する技術の研究開発を支援する「電波有効利用研究開発プログラム」の3つである。

中でも注力しているのが、国のビジョンともリンクする「社会実装・海外展開志向型戦略的プログラム」だ。本プログラムでは「オール光ネットワーク(APN:All-Photonics Network)関連技術」「非地上系ネットワーク(NTN:Non-Terrestrial Network)関連技術」「セキュアな仮想化・統合ネットワーク関連技術」の3分野を重点対象に定めている。

APNは端末からネットワークまでをすべて光信号でつなぐ技術で、Beyond 5Gの根幹を成す超低消費電力、高速大容量、低遅延伝送を実現するものとして期待されている。

NTNはHAPSと呼ばれる成層圏を飛行する無人飛行機、低軌道衛星(LEO)、静止軌道衛星(GEO)を多層的に組み合わせた通信ネットワークだ。地上系ネットワークが整備されていない地域もカバーできるメリットがある。

仮想化・統合ネットワークでは次世代エッジクラウドコンピューティング基盤の研究開発が進められている。

そのほかのプログラムも充実している。電波有効利用研究開発プログラムでは、海中・水中IoTにおける無線通信技術等の研究開発が進められている。当該研究課題ではIoT環境を海中・水中に拡張する取り組みで、2023年度には久米島近海において、船上からのAUV(自律型無人探査機)遠隔操作に成功した。

Beyond 5Gの魅力や可能性を伝える「Beyond 5G ready ショーケース」

こうした成果をもとに、総務省では大阪・関西万博会場内にて「Beyond 5G ready ショーケース」を開催する。ZONE1〜ZONE3までの3ゾーン構成で、Beyond 5Gの魅力や可能性を余すことなく伝えていく。

「Beyond 5G ready ショーケース」の
会場イメージ

ZONE1は「プロローグシアター」。180度スクリーンを用いた没入感のある映像演出により、これまでの通信の歴史からBeyond 5Gが普及した未来への変遷を生活者の視点で紹介する。

ZONE2の「未来都市エリア+技術体験ブース」は、Beyond 5Gが実現した未来の社会や生活をさまざまな技術で疑似体験できるのがポイント。未来都市エリアでは独自の「Beyond 5G ID」を連携することで、現実社会がサイバー空間とつながるショータイムを体験できる。技術体験ブースには「リモートムーンオペレーション」「HAPSリカバリー」「オーシャンクリーニング」「バーチャルピッチングルーム」「クロスコネクトシティ」の5つを設けた。

ZONE3ではBeyond 5G基金事業等で開発中の技術や今後の展望を、パネル展示や映像、実機を用いて紹介。最新技術の動向とともに、日本が総力を挙げて取り組むBeyond 5G推進戦略の一端を確認することができる。

本ショーケースの山場と言えるZONE2から、いくつか注目の技術体験ブースについて触れておきたい。リモートムーンオペレーションでは地球から月面基地にいるロボットをリアルタイムで遠隔操作し、月面作業を行なう。VRゴーグルを用いて没入型体験ができるのが特徴だ。

リモートムーンオペレーション
体験ブースのイメージ

HAPSリカバリーは災害によって通信が途絶した地域に、HAPSを操縦して通信の復旧を行なう臨場感型体験ブース。大画面を見ながら“空飛ぶ基地局”とも言われるHAPSを操り、上空から通信をカバーする未来を体感する。

HAPSリカバリー
体験ブースのイメージ

オーシャンクリーニングでは地上から海中ロボットを遠隔操作し、海洋環境維持の体験ができるようにした。先に触れた海中・水中IoTにおける無線通信技術の研究を発展させたイメージで、海中の光無線通信が海洋保全にもたらすインパクトを実感できる。

オーシャンクリーニング
体験ブースのイメージ

Beyond 5G ready ショーケースは2025年5月26日(月)~6月3日(火)までの9日間、EXPOメッセ「WASSE」《North》で開催される。また、Web上でも本会場と共通のストーリー、コンテンツを簡易体験できる「バーチャル催事」を展開。こちらは5月26日(月)~10月13日(月)までの期間を予定している。

これだけの内容を入場無料(※)で体験できる機会は貴重だ。Beyond 5Gは技術面に限らず、ビジネス面でも大きな成長が見込める領域だけに、ぜひ会場に足を運んで“次のビジネスのヒント”を見つけてほしい。※大阪・関西万博の入場にはチケットが必要です。