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大阪教育大学・スプリックス 
特別座談会

教科「情報」の学びの深化に向けて――
教育現場の情報教育と教員養成のこれから

特別協力:スプリックス

西日本最大の教員養成大学である大阪教育大学は、「令和の日本型学校教育」を担う教員養成の在り方を変革するけん引役として、文部科学省から「教員養成フラッグシップ大学」の一つに選ばれている。総合教育企業のスプリックスは、個別指導塾の運営や教材開発などを通じて、付加価値の高い教育サービスを提供している。日本の教育に深く関わる両者が、情報教育と教員養成をテーマに座談会を実施し、次世代を見据えた教育改革における課題とその可能性について、多角的な視点から議論した。座談会の会場は、大阪教育大学天王寺キャンパスの産官学連携拠点「みらい教育共創館」。進行は、大阪教育大学客員教授で日経BP技術プロダクツユニット長補佐の中野淳が務めた。
※所属・肩書は座談会を開催した2024年11月29日時点

出席者(敬称略):

大阪教育大学 副理事・副学長 片桐 昌直
大阪教育大学 理数情報教育系 准教授
次世代教育部門 ICT教育コース担当/
みらいICT先導センター副センター長
尾崎 拓郎
スプリックス公教育事業部長 島貫 良多
進行
大阪教育大学 客員教授
日経BP 日経BOOKSユニット長補佐
中野 淳
集合写真 集合写真 集合写真 集合写真

写真左から、片桐昌直氏、尾崎拓郎氏、島貫良多氏、中野淳

中野 2022年度から高等学校で新しい情報教育がスタートしました。全ての高校で「情報 Ⅰ」が必履修科目、「情報Ⅱ」は選択科目になりました。2025年からは大学入学共通テスト(共通テスト)に「情報 Ⅰ」が加わります。国立大学は共通テストで「情報 Ⅰ」の受験を必須にしている大学がほとんどで、高校の学びにも影響を及ぼします。教科「情報」をめぐる学びの可能性、さらに課題とその解決策について議論を深めていきたいと思います。

片桐 昌直 大阪教育大学
副理事・副学長
片桐 昌直

片桐 大阪教育大学は、教員養成フラッグシップ大学として「令和の日本型学校教育」を担い、先導的な教員養成を推進しています。教科「情報」と、教育DX(デジタルトランスフォーメーション)やICT(情報通信技術)の活用は密接につながっています。

 本学は小学校から中学校、高等学校まで全ての教員を養成しており、学校教員養成課程に「次世代教育専攻ICT教育コース」を新設して、実践的なICT活用教育に取り組んでいます。

 教育委員会からはICT活用ができる教員の育成が求められます。共通テストに「情報 Ⅰ」が加わったことは契機になりましたが、教科にかかわらず教員がICT活用の基礎的な素養を持つことが必要です。GIGAスクール構想を受けて、各教科の授業や探求学習でICT活用が進んでいます。教員養成大学として、情報リテラシーを社会基盤と位置付けて教員を養成する体制を整えていきます。

尾崎 拓郎 大阪教育大学
理数情報教育系 准教授
次世代教育部門 ICT教育コース担当/
みらいICT先導センター副センター長
尾崎 拓郎

尾崎 情報教育はつい最近始まったように思われがちですが、教科「情報」が高等学校に導入されたのは2003年度にまで遡り、20年以上の歴史があります。

 高等学校の教科「情報」は、当初はパソコンやOfficeソフトの活用といった内容が多かったのですが、学習指導要領の改訂を経て、社会と情報の関わりといった、より本質的な内容に焦点を当てる教科になりました。以前は「社会と情報」「情報の科学」の2科目からの選択必履修でしたが、現行の学習指導要領において、必履修科目の「情報 Ⅰ」となり、「情報社会の問題解決」「コミュニケーションと情報デザイン」「コンピュータとプログラミング」「情報通信ネットワークとデータの活用」という4つの章を学びます。情報科の教員は、これら4章を教えることが求められているとも言えます。この必履修科目の「情報」を学んだ高校生は、その範囲内における情報リテラシーの習得が保証されることを意味し、大きな学びの転換になるのではないかと感じています。

島貫 当社も開発に携わったコンテンツを提供している、小学生向けプログラミング教室「QUREOプログラミング教室」は全国3000以上に広がっています。小学校でのプログラミング教育の必修化や共通テストでの「情報 Ⅰ」追加など、世の中の流れを受けて将来のために子供にプログラミングを学ばせて、情報リテラシーを持たせたいという親御さんの要望を強く感じます。子供の情報教育における保護者の視点も重要だと思っているところです。

教科「情報」を教える教員の負担を減らすことが重要

中野 世の中のニーズに合わせて、教科「情報」の内容も変わっています。これからのデジタル社会を生きる高校生が情報リテラシーを身につけることで、社会のさまざまな場面で活躍し、安全・安心に暮らしていけるようになります。一方で、情報 Ⅰの学習内容は非常に広範囲で、教員や生徒の負担も大きいと感じます。現在の教科「情報」の学びが抱える課題についてお聞かせください。

片桐 指摘された通り、教科「情報」は学ぶことが非常に多く、広く薄い学びになってしまうことは否めません。他の教科や学校生活の中でより深い学びに結びつけていけるように、全ての教員が情報教育の重要性を意識する必要があります。教員養成大学として、そのような教員を育成していくことは課題の一つだと認識しています。

尾崎 情報の教員は、年間約70時間弱の授業時間で、200ページ近い情報 Ⅰの教科書の内容を教え切れるのかという不安を感じています。他の教科と連携して、情報の時間だけではカバーしきれない部分も学べるような仕掛けが必要でしょう。

 例えば特別支援学校での学びが、普通校の情報 Ⅰと同じでよいのかという課題もあります。

 ほかにもプログラミングでどのような教材を取り扱えばよいか、プログラミング言語は何を使用するのが良いのかといった不安を持つ教員もいます。これまで情報教育に携わってきた教員にしてみれば当たり前の議論かもしれませんが、教材のレベルが教える内容と合っているのかという点も課題でしょう。

 高校によっては、教科「情報」を担当する専任教員が1人しかいない学校も多いので、教員同士が情報共有できるようなネットワークをもっと構築していかなくてはいけません。

島貫 良多 スプリックス
公教育事業部長
島貫 良多

島貫 学校現場全体が人手不足という課題を抱えています。情報 Ⅰが必履修になる前から情報を教えていた教員もいる一方で、人材不足でもともと数学や社会、理科の教員が教えている学校もあり、教員にしわ寄せがいっているように感じます。

 全国の高校で情報を教えている教員を対象に調査をしたところ、86.7%の教員が「情報教育の実践に不安がある」と回答しました。「生徒の理解度が共通テストのレベルに追いついているのか分からない」という回答も53.6%ありました。共通テストに向けて、具体的な対策ができていないという教員も約3割いて、生徒が自学自習できるアプリやソフトウエア導入を望む声も6割近くに達しています。

 ほかにも工業高校や商業高校、農業高校のような普通科以外の学校では、情報で学ぶテーマは異なります。杓子定規に一律のデータを基に教えるのではなく、それぞれの学校や生徒に合わせた教材やデータを提供することで、教員の負担を減らす支援ができると感じています。

共通テストの「情報」導入で学生の知識やスキルが向上する

中野 淳 大阪教育大学
客員教授
日経BP日経BOOKSユニット長補佐
中野 淳

中野 こうした課題の解決に向けて、どのような取り組みを進めているか紹介してもらえますか。

片桐 教科「情報」は多分に社会からの要請で生まれた科目です。大学だけで情報教育や教員養成を進めるのは難しく、学校現場と大学、教育産業や一般の企業などとの産官学連携を進めて、社会的なニーズや状況に沿って教員養成を行う必要があります。

 この座談会を行っている「みらい教育共創館」は、最先端のICT機器とフレキシブルな室内環境を整備した産官学連携による共創拠点です。10階建ての建物の6階から10階には、大阪市総合教育センターが入居しています。こうした場も活用しながら、教員養成の改革を進めます。

尾崎 本学は単科の教員養成大学で、大半の学生が教員になることを目標にしています。次世代教育専攻ICT教育コースは、テクノロジーについて学ぶのが目的ではなく、情報科学の技術や知識を身につけて教員として教育現場の課題に取り組んでいくことを目指しています。学生のうちから学外と意見交換をしたり、商品開発に携わったりしてもらえるような経験をしてもらいたいと考えており、みらい教育共創館はそのための場として活用していきます。

島貫 かつては学校教育と、私たちのような教育産業との間で壁のようなものがありましたが、これからの社会を担う子供たちに教えていくために、お互いに連携していく必要があると思います。当社は塾運営をしており、様々な教育コンテンツを自社で開発しています。学校の教員と同様に子供たちの成長を見ているので、ICT活用の視点から教員と話ができるのは強みです。

 情報 Ⅰに関しては、教員の授業準備や授業そのものの負担を一気に軽減させるオールインワン教材「SPRIX情報 Ⅰパッケージ」や、共通テスト対策となる「情報 Ⅰ模試」を提供しています。生徒の学びはもちろん、教員の負担軽減にも寄与します。

中野 情報教育を進める上で、大学全体でのカリキュラムマネジメントも重要になります。

片桐 入学してくる学生が情報の基礎知識がどの程度あるかによって、大学でのカリキュラムが変わります。共通科目だけでなく専門教育にも影響が出てくるので、大学として学生に対してどうサポートしていくか考えていかなくてはいけません。

尾崎 国立大学協会(国大協)が、国立大学入試で「情報」を必須としたのは大きな意味がありました。これまで学生ごとにコンピューターのスキルや情報に関する知識理解に差がありましたが、今後はある程度は平準化されると期待しています。今後の次世代教育専攻ICT教育コースのカリキュラムを考えていく上でも重要です。共通テストで情報が科目として設定されたことで、情報教育は底上げされるでしょう。

島貫 私たちは、CSR(社会貢献)活動として、小学校、中学校、高校の指導案、実践例をダウンロードできる教員向け情報共有プラットフォーム「授業準備ネット」を運営しています。教員同士で情報の共有が進むことが教育の質向上につながり、コンテンツが増えてプラットフォームが活性化していくことが成功の鍵です。

 教材やデータを提供するだけでなく、日本の情報教育をより良くしていくために協力していきたいと思います。

中野 産官学が連携して情報教育を支援するネットワークを広げて、教員が1人で悩みを抱え込んで苦労しなくてもよくなる連携の場を作っていきたいと感じました。今日は、大変有意義な議論ができました。どうもありがとうございました。

株式会社スプリックス

TEL:03-6416-5342
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